黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

紅白歌無ベスト10・第8位 (その2)

8位もう1曲。意外に思えますがこれが実に重要曲。

 

8位(タイ)

京のにわか雨

歌: 小柳ルミ子

作曲: 平尾昌晃

作詞: なかにし礼

編曲: 森岡賢一郎

72年8月10日発売/オリコン最高位1位(5週)

 

🅰ツゥイン・ギターズ/ワーナー・ビートニックス (編曲: 原田良一) 21/4/25 

イントロから繊細なギターサウンドが引っ張っていく。例のツゥイン・ギターズらしさは希薄で、自社財産を慎重に扱っているという感じ。

🅱栗林稔 (ハモンド・オルガン)/ワーナー・ビートニックス (編曲: 竜崎孝路) 21/4/30

意表をつくサンタナテイストのラテンロック。他社盤で聴かれる栗林稔印のピアノサウンドも取り入れて賑やかな仕上がり。「ドゥ・イット・アゲイン」に似ているが、同曲より発売が早い!プラスティックオルガンまで聴こえてきそう。

🅲ジャパン・シンフォニー・オーケストラ (編曲: 無記名) 21/5/22

Z級マイナーレーベルのサウンド。シンフォニーと謳ってる割にせこいな、と思わせといて、しっかりストリングスも入ってるし、素性が読みづらい。

🅳ヒット・サウンド・オーケストラ (編曲: 馬飼野俊一) 21/6/13、8/14

原曲の良さを程よく活かしている手堅い仕上がり。好夫タッチとはちょっと違うテクニカルなギターがリードしていく。地味に暴れるピアノも聴き逃せない。

🅴市原明彦 (ドラムス)/ワーナー・ビートニックス (編曲: 原田良一) 21/7/1、21/10/18、21/12/4

ワーナー・ビートニックス3つ目のヴァージョン。これも基本的には従順でありつつ、所々に炸裂するドラムを強調。実は主役はキーボードではないか。

🅵ミラクル・サウンズ・オーケストラ (編曲: 福井利雄) 21/7/7

やっと京琴がイントロに登場。ただ山内さんの音という感じがしない。基本的にオリジナルに忠実なノリ。2コーラスのエフェクトギターが妙味。

🅶秋本薫(テナー・サックス) オールスターズ (編曲: 川上義彦) 21/8/18

ポリドールにしてはせこいサウンド。ドラムの音量が小さいせいか。これもあまり工夫がないな。歌い出しだけオクターブ低いというのは効果的な聴かせ方。

🅷奥田宗宏とブルースカイ・ダンス・オーケストラ (編曲: 岩井直溥) 21/9/11

「今宵踊らん」にしては異例の、原曲に忠実なノリ。イントロをセコくしているのに、同シリーズでは異例の3分越え。例によってブラスアレンジは派手。「心に」のところの3連リズムをしつこく強調してるのが聴きもの。

🅸まぶち・ゆうじろう’68オールスターズ (編曲: 福山峯夫) 21/10/2、22/11/5

クラウンらしい場末ノリ。全然走ってない。これはクラウンのアルバムの中で聴くとたまらなく魅力的なんだけどな。サックスの聴かせ方は秋本薫盤と共通している。

🅹三笠輝彦 (テナー・サックス)/ブリリアント・ポップス77 (編曲: 小谷充) 21/11/25

ワーナー4ヴァージョン目!いくら自社でも推しすぎ!京琴や琴もしっかり入れて、山内さん大活躍。まぶち盤に比べてめちゃ走っているし、自社らしいがんばりぶりだ。

🅺はとりこうじとサウンド・エクスプロージョン (編曲: 藤田はじめ) 21/11/29

炸裂ジャズファンク!空間を切り裂くドラム、黙々と自己主張するワウギター。Bメロで本領を発揮するサックス、そして一貫して意表を突きまくるアレンジ。全ヴァージョン中、これの圧勝は決定だろう。

『ベスト&ベスト 京のにわか雨』

🅻かなり良悟/ダイアモンズ (編曲: 荒木圭男) 21/12/15

結構テンポを上げているけど普通の出来。京琴に音色を近づけているイントロのギターがちょっと耳をとらえる。

🅼ブルーナイト・オールスターズ (編曲: 土持城夫) 21/3/14

これもちょっと違うという感じもあるけど、確実に山内さんを呼んできてる。イントロ最後のシタール的な琴がモロだ。Bメロがオーボエというのもユニーク。

🅽原田寛治 (ドラムス)とオールスターズ (編曲: 前田憲男) 21/4/10

テンポアップしながらビート感を半分にしたアレンジが爽快。例によって、ドラムがめちゃ前面に出たミックス。1コーラス終わった後爆裂ドラムソロ!

🅾山内喜美子 (琴)/キャニオン・オーケストラ (編曲: 小杉仁三) 21/4/19

遂に真打ち登場!イントロを通常の琴で奏でているのに意地を感じる。基本的には忠実なノリながら、余裕でメロをこなす女帝の姿が目に浮かぶ。

🅿︎稲垣次郎 (サックス、フルート)、木村好夫 (ギター)/コロムビア・ニュー・ビート (編曲: 荒川康男) 21/5/1

エレキシタール(印度ギター)が炸裂し、サイケワールドに一直線。これもサンタナ感があるが、栗林盤ほどモロではなく、リヴァーブを深くかまして余計幻惑的世界を醸し出している。

🆀ゴールデン・サウンズ (編曲: 荒木圭男) 21/5/2

🅻と基本的に同じアレンジながら、こちらは確実に山内さんを呼んできている。京琴と他の楽器を絶妙に聴かせ分けるメロディアレンジの演出が見事。意外とドラムが張り切っている。

🆁キャニオン・ポップ・サウンズ (編曲: 馬飼野康二) 21/5/19

恐らく『ダブル・ドラム』が初出のはずの、左右で違うドラムが炸裂するヴァージョン。「ブラック・イズ・ブラック」を意識し、大胆にコードを変えて再構築。特にBメロ後半が凄い。🅳と聴き比べると、兄弟でここまでカラーが変わるのかと驚愕せずにいられない

以上、18ヴァージョン(21枚収録)

おまけ。この人は外せません。

参考。3分半あたりからプラスティックオルガン。