黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

紅白歌無TOP40・第16幕

ジュリーから一気に八代亜紀へ。黄昏みゅうぢっくで唯一、単独歌無カバーアルバムを2作取り上げた国内アーティストでもあります(ちなみにビートルズは3作、カーペンターズも2作あり)。

 

24位

なみだ恋

歌: 八代亜紀

作曲: 鈴木淳

作詞: 悠木圭子

編曲: 小谷充

73年2月5日発売/オリコン最高位12位

 

🅰三笠輝彦/ブリリアント・ポップス77 (編曲: 原田良一) 21/4/1、22/6/3

カンタベリーサウンドかと思わせる甘美なフルートを中心に、お花畑的イメージが駆け巡るイントロで異次元の世界へ。トリオの『魅力のマーチ・小さな恋の物語 歌謡ヒット・ベスト40』の凄さを強烈に印象付けたヴァージョンの一つだが、これも早い話ビートニクスの最後っ屁だったのだ…これを前にすると、いかなるヴァージョンも説得力を失う。でも聴くんだよ!

🅱スターライト・オーケストラ (編曲: ?) 21/4/28、21/7/25

Z級レーベルらしい極端な場末ノリに引き込まれていくヴァージョン。極端にオクターブが低いギターで奏でられるメロディーが異色だ。

🅲村岡実、山内喜美子/ミラクル・サウンズ・オーケストラ (編曲: 福井利雄) 21/5/20

まったりとしたノリにミラクルらしい鍵ハモのイントロ。そこに強烈なエコーを伴い襲い掛かる尺八。まさに癒し系サウンド!最早夜の新宿にこんな影はない。

🅳木村好夫/テイチク・オーケストラ (編曲: 福島正二) 21/6/17

これは純正テイチク録音と思われ、アポロとのヴァージョン共有曲と異質のガチさを感じさせる。1000%好夫印満開のギター。これも癒し系だ。

🅴クリスタル・サウンズ (編曲: 矢野立美 or 伊藤祐春 or 土持城夫) 21/7/16

クリスタルだからってヤング対応になっているわけじゃない。所々に施されるコード変更など、場末感をさらに強調している感じだ。消去法で伊藤祐春アレンジと確定していいでしょうか?

🅵まぶち・ゆうじろう’68オールスターズ (編曲: 福山峯夫) 21/9/15、21/10/10、21/11/28、22/1/28

真のアダルト・オリエンテッドたるところを見せつけるまぶち咆哮。変なアクセントでコンガの「ムー」音が入るところがユニーク。

🅶吉岡錦正/ブルー・サウンズ・オーケストラ (編曲: 池多孝春) 22/11/10

イントロのサックスが1音多いだけで異色の感触だが、曲に入ると大正琴で落ち着いたムードに突入する。こういう曲だと妙さを感じず、素直に聴ける。

🅷Dovecot Sounds (編曲: 柳刀太) 22/1/11

ヨーカドーのカラオケレコード収録だけあって、歌わせることを前提にした音作り。バスドラなど響きがシャープで、78年録音らしい感触だ。今このオケでまともに歌える水商売乙女はいるのだろうか…

🅸松浦ヤスノブ (編曲: ?) 22/1/14

謎のヴァージョンだがユニオンの2枚組に収録されているもの。ビート色の強い盤とカップリングで売られると、74年の若者には余計「?」だろう。ピアノの手堅い演奏が目立つが、それでも水商売色が濃い。2番のBメロのギター、どうしたんだという感触。絶対好夫なのに…

🅹竜崎孝路 (編曲: 竜崎孝路) 22/4/26

竜崎氏の意地で組み上げたシンセオーケストレーションによる夜のサウンド。プリンス『1999』と同じ月に発売されておきながら、リンドラムの使い方が真逆なところに面白さがある。あの「ひとりっ子甘えっ子」から僅か9年、成熟しきった大人のシンセサウンドだ。

八代亜紀ヒット曲集 海猫』

🅺松浦ヤスノブ、山内喜美子/コロムビア・オーケストラ (編曲: 佐伯亮) 22/4/30

大幅にテンポダウンしつつ、危険な夜の色を大量に流し込んだサウンド。本来の演歌色を濃厚に感じさせながら、70年代中期以降への展望を強烈に伺わせる。京琴にもお茶目な響きがなく、おしろいの香りに引き込んでくれる。

🅻ブルーナイト・オールスターズ (編曲: 池多孝春) 22/5/3

イントロのサックスが1音多いのが池多氏アレンジの特色か。考えてみれば、ここでも4大楽団の激突が起こっていましたね。🅰がビートニックス名義でないので見落としてました…

🅼木村好夫/ビクター・オーケストラ (編曲: 木村好夫) 22/5/25

素直に3拍子ワルツに仕上げてるところが異色。何重にも分身しての好夫ギターの真髄が味わえる。他の楽器が出たり引っ込んだりであまり存在感がない。

🅽あかぎ哲也とオールスターズ (編曲: あかぎ哲也) 23/11/16

75年頃出た初の単独インストカバー盤が初出となる、場末色濃いヴァージョン。最もテイチクらしいと言えばそれまでだけど、オリジナルに若干「こんなにこんなに愛してる」からの影響をもたらしている部分が、このヴァージョンでは完全に端折られている。それが何かは、解る人にはすぐ解るはず…

 

以上、14ヴァージョン (19枚収録)。ちなみに上の答えは「鉄琴による5音」です…