黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

今日は岩城茂美さん(クール・ファイブ)の誕生日なので

コロムビア ALS-4521 

愛は傷つきやすく/ふりむいてみても

発売: 1970年7月

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ジャケット

A1 愛は傷つきやすく (ヒデとロザンナ) 🅴

A2 四つのお願い (ちあきなおみ) 🅴

A3 愛するゆえに懺悔して (ピーター) 🅲

A4 誘惑のバイヨン (平野レミ)

A5 ネオン街ブルース (真木七奈) 🅱

A6 思いがけない別れ (小川知子) 🅳

A7 愛の旅路を (内山田洋とクール・ファイブ) 🅳

B1 経験 (辺見マリ) 🅴

B2 ふりむいてみても (森山加代子) 🅴

B3 別れの誓い (鶴岡雅義と東京ロマンチカ) 🅱

B4 今日でお別れ (菅原洋一) 🅵

B5 港のためいき (ハニー・ナイツ)

B6 ちっちゃな恋人 (ジミー・オズモンド) 🅳

B7 二人で来た道 (黒木憲)

 

演奏: 木村好夫とザ・ビイアーズ/コロムビア・オーケストラ

編曲: 甲斐靖文

定価: 1,500円

 

マイク・ネスミス死去ニュースの衝撃に隠れすぎて、いつしか我が守備範囲をすり抜けていた大作曲家・鈴木淳さんの訃報。歌無歌謡ブログとしては、迅速にお悔やみの意を表することができず、新年早々情けない思いが…クール・ファイブのサックス奏者の誕生日位しか主だったネタがないこの日にスケジューリングしていたこのアルバムには、「四つのお願い」「思いがけない別れ」「二人で来た道」と、3曲も彼の作品が含まれています。この場を借りて、その偉大なる功績を讃えつつ、哀悼の意を表させていただきます。

恒例の、サイド毎に一つの流れを形成するコロムビアの歌無歌謡シリーズ。安定の好夫ギターをフィーチャーして、耳に優しい仕上がり。自社曲を主軸に据えてはいるものの、そこまで慎重な扱いを見せず、普段通りの軽量化だ。「愛は傷つきやすく」なんかも、他社盤ではもっと大胆な解釈をしているものがあるので、そっちが恋しくなってしまうのだけど、メロディのこなし方はやはり安定感がある。「四つのお願い」は軽くなったのが功を奏し、ラブリーな面が強調されている。フルートが沢山出てくるとやっぱ、甘くなりますね。ピーターの曲をエレガントにこなした後は、レミさんの貴重な歌手デビュー曲「誘惑のバイヨン」。こんなのまで演ってたとは。ここでもフルートが大活躍してますが、ナイスなクッキングサウンドですな(笑)。「ネオン街ブルース」は柴田晴代盤に続く2回目の登場ですが、これが最後ではありません。「思いがけない別れ」はやはり大当たりの出来。かなり軽くなってはいるけれど、ここでもまたフルートが蝶のように舞いまくる。繰り返しのAメロの後半は、他のヴァージョンと一味違うコード付けを行っており新鮮だ(宗内の母体的にはドニー・アイリスの”Love Is Like A Rock”を歌いたくなってしまう)。3コーラス目で突如転調するのもいいし。この曲の歌無歌謡盤にほんと、外れはありません。今日の主役であるはずのクール・ファイブの藤本メロディーは、軽くなった分ちょっと残念だが、好夫ギターの真髄的フレージングはむしろ冴えまくっている。

B面もこの調子で淡々と進んでいく。「今日でお別れ」は速く演りすぎて寧ろ古風なイメージが助長されているし、最後から2曲目に「ちっちゃな恋人」を持ってきたのは効果的演出だ。最後は地味ではあるけれど「二人で来た道」でセンチに盛り上げる。好夫ギターを取り囲むフルートの妖精たち、というイメージが全体を貫くラブリーなアルバム。珍しく御大の写真もさりげなく載せられています(彼自身の姿がジャケットに出てくるのは、むしろ後年になってから)。