黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

いい肉にポルタメントは格好のソース

コロムビア HS-10005-J

ニュー・ヒット14/スチール・ギター

発売: 1969年9月

ジャケット

A1 おんな (森進一) 🅺

A2 さすらい人の子守唄 (はしだのりひことシューベルツ) 🆀

A3 恋の奴隷 (奥村チヨ) 🅼

A4 或る日突然 (トワ・エ・モワ) 🆇

A5 港町シャンソン (ザ・キャラクターズ) 🅹

A6 愛して愛して (伊東ゆかり) 🅽

A7 長崎は今日も雨だった (内山田洋とクール・ファイブ) 🅿︎

B1 雲にのりたい (黛ジュン) 🅼

B2 今日からあなたと (いしだあゆみ) 🅷

B3 港町ブルース (森進一) 🆄

B4 禁じられた恋 (森山良子) 🆅

B5 ミヨちゃん (ザ・ドリフターズ) 🅱

B6 わかれ雨 (内山田洋とクール・ファイブ)

B7 白いサンゴ礁 (ズー・ニー・ヴー) 🅺

 

演奏: ヒット・キット・アイランダー

編曲: 無記名

定価: 1,500円

 

訃報の影響で「今宵踊らん」を繰り上げたため、今回の復活月間の締めは「コロムビア・ヤング・シリーズ」2連発となりました。そう、HS品番のアルバムには、そんな名の括りが用意されてたのですよ。あくまでも「ヤング」を対象に銘打ったこのシリーズから、当時の若者は何を受け取ったのでしょうか…激動の社会からの逃げ道、そしてロマンスの御供…色々と妄想は広がるけれど、本質的には今のヤングピーポーがスマホを通して受け取っているものと、何ら変わらないのかも。ギターを持って西口広場で拳を振り上げる人達は、世間から見ればマイノリティだったのかもしれません。手垢にまみれたこの手のレコードが引きずるものは、幸せだった時代の幻に過ぎないのかも。そんな中のこの1枚のジャケットに残された文章には、1969年の日本のレコードの消費量が米国に次いで2位に達したことが記されています。嗚呼。そんな時代に生きていながら、小遣いの意味さえ知らない世代だった自分を悔みたいです。ただただ、ここに収められた曲のいくつかに幼い頃の記憶を見出すのみ。

このシリーズが始まる前から、ハワイアン系歌無歌謡のレコードをコロムビアに残しまくっていたヒット・キット・アイランダーズですが、実際の中の人は「オッパチさん」とのこと。確かに達者なスチールのプレイが堪能できますが、そこまでガチハワイアンスタイルに拘らず、場末色が濃い演奏が中心。あまり派手にキメないところが売りだったのでしょうか。意外とカラフルな展開をする場面もあり、特に「港町シャンソンではオカリナを導入。2コーラスでは4小節ずつ一息で吹き切るというがんばりよう。スムーズな指遣いをしてもどこか危なっかしいところが、萌えポイントなんですよね。しかもちゃんと南国ムードにはまっているし。例によって競合ヴァージョンが多い69年ヒット集ですが、どの曲にも独自の個性を刻印していて、瞬時ビアガーデンにつれて行ってくれる。「白いサンゴ礁のまったりした感じは全く違和感がないし、最高の幕引き。