黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

宮路オサムさんの誕生日は8月30日

東芝EMI TP-50008~9 

今宵踊らん ツインデラックス・ベスト28

発売: 1974年

ジャケット

A1 うそ (中条きよし)Ⓐ 🅺

A2 ふれあい (中村雅俊)Ⓑ 🅷

A3 夜空 (五木ひろし)Ⓒ 🅷

A4 うすなさけ (中条きよし)Ⓒ 🅵

A5 小さな恋の物語 (アグネス・チャン)Ⓒ 🅵

A6 追憶 (沢田研二)Ⓒ 🅶

A7 学園天国 (フィンガー5)Ⓒ 🅵

B1 想い出のセレナーデ (天地真理)Ⓒ 🅲

B2 花とみつばち (郷ひろみ)Ⓒ 🅴

B3 くちなしの花 (渡哲也)Ⓐ 🅼

B4 傷だらけのローラ (西城秀樹)Ⓑ 🅴

B5 冬の旅 (森進一)Ⓐ 🅶

B6 恋のダイヤル6700 (フィンガー5)Ⓒ 🅷

B7 ちっぽけな感傷 (山口百恵)Ⓒ 🅴

C1 なみだの操 (殿さまキングス) 🅼

C2 夫婦鏡 (殿さまキングス) 🅹

C3 私は泣いています (りりィ)Ⓑ 🅷

C4 さらば友よ (森進一)Ⓑ 🅷

C5 ミドリ色の屋根 (ルネ)Ⓑ 🅲

C6 積木の部屋 (布施明)Ⓒ 🅳

C7 愛の十字架 (西城秀樹)Ⓒ 🅷

D1 あなた (小坂明子)Ⓑ 🅻

D2 二人でお酒を (梓みちよ)Ⓐ 🅷

D3 灰色の瞳 (加藤登紀子長谷川きよし)Ⓑ 🅴

D4 別れの鐘の音 (五木ひろし)Ⓑ 🅶

D5 襟裳岬 (森進一)Ⓑ 🅿︎

D6 ひと夏の経験 (山口百恵)Ⓒ 🅷

D7 神田川 (かぐや姫)Ⓒ 🅻

 

演奏: 奥田宗宏とブルースカイ・ダンス・オーケストラ

編曲: 斉藤恒夫Ⓐ、高野志津雄Ⓑ、山本有信Ⓒ

定価: 3,600円

 

これを書いている朝、「うそ…」と言葉を失わせる悲しい知らせが入ってしまい、途方に暮れている…「黄昏みゅうぢっく」の対象期間と活動期間が被ってないので、ここを私見表明の場にできないのが惜しいのだけど。『今宵踊らん』が90年代まで続いていたら、きっと「瞳がほほえむから」あたりも、流暢なダンスミュージックにアレンジされていたのでしょうか。ただおしゃれなだけの「ジャズアレンジ」ヴァージョンなんかより、チークダンス仕様でまったりロマンスする方がずっといいのに。

上田知華さん、8ヶ月遅くなってしまいましたが、安らかにお眠り下さい。

 

気を取り直して、『今宵踊らん』シリーズ、これで6組目の登場になりましたが、実はもうちょっとあって…持ってない作品となるとその10倍は遥かに越えますが。やはり積極的に語りづらいってのはありますね。ザ・ナック「マイ・シャローナ」が収録されている79年盤、持ってはいるのだけど1枚目が欠品だし、83年盤は大瀧詠一作品が3曲も入っているので薬指が動くのだけど。ジャンク品コーナー以外から救済するとなると勇気がいるのですわ。ただ、時代の無邪気なかけらを拾うのにはうってつけの作品と思うし、今踊りたい同志を集めてこれを流すとどうなるのかに興味がある。さらに、アレンジに関しても。「瞳がほほえむから」はおろか、「夜に駆ける」や「香水」がブルースカイ・スタイルにアレンジされる様子を妄想したいから。異端を狙う吹奏楽部のみなさん、どうでしょうか?高校野球応援スタイルもいいけれど。レッツ・社交ダンス・アゲン!ですよ。

この74年ヒット集は実にわかりやすい内容で、それこそ歌無歌謡盤の常連曲ばかりがずらり。ほとんど全ての曲が5ヴァージョン目以上の登場。故に、アレンジの独創性に関して他の盤と天秤に乗せやすい。所謂「飛び道具」がない分、語る気が失せはするけれど、音楽が流れ始めると耳が踊るのだ。1曲目の「うそ」、テンポは29となっていて、今風に言い換えればBPM116に当たるわけだけど、流暢なルンバのリズムで原曲のビート感が半分になっている。普通に原曲通り演っても良さそうだけど、Bメロが慌しくなりそうでダンス向きじゃなくなる危険性がある。それを避けたのが計算の結果ってことか。「ふれあい」はほぼ同じテンポ・リズムで原曲通り演奏していて、この対照的な2曲が同一線上に並ぶ面白さを体感。「夜空」「追憶」は原曲より遥かにイケイケなアレンジになっている一方、花とみつばち「傷だらけのローラ」はまったりしている。後者もビート感半分なのだが、2コーラス目のAメロだけ原曲通りにしていて効果的だ。「学園天国」「ちっぽけな感傷」のようにオリジナルにほぼ忠実なものもあり、後者なんかめちゃ突っ走っている。ジミー竹内がドラムを叩いているのではなかろうか?あと恋のダイヤル6700の「わーお!」のところに変な効果音を入れているのが異色。あの『はれんち!なんせんす』を手掛けた斉藤恒夫氏が、珍しくここでアレンジに呼ばれているのだが、この曲はいつもの山本有信氏編曲だ。

2枚目に行くと、他の歌無盤でヤバいアレンジを施された曲が多発して、面白い比較対象になるのだけど、「なみだの操」などスリリングな一瞬もあり要注意だ。水谷公生&トライブヴァージョンを聴きすぎた「夫婦鏡」も、長閑かつスインギーで新鮮。「私は泣いています」はプリンスの「レッツ・ゴー・クレイジー」並のテンポでめちゃ速すぎ。タンゴ化した「積木の部屋」「愛の十字架」の並びもなかなかアナーキーだ。「あなた」はチーク向きだなとまったり構えていると、最後の方で突き放されそう…激しいドラムも入ってくるし。B面中盤の3曲はスローなワルツで流れを統一しているが、ここで襟裳岬が来るか…これで大団円にすればいいのに、最後の神田川がまたタンゴ。妙な幕切れだ。「ひまわり娘」も演って欲しかったところ…

翌年、空前のディスコ・ブームが訪れ、日本における社交ダンスの雲行きが大きく転換を迎えることになるわけで、この2枚組はある意味「挽歌」と化したような気がする。