黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

歌謡フリー火曜日その55: きっと君は来ない…

RCA RVL-6506

森ミドリと楽しいクリスマス

発売: 1976年

ジャケット

A1 ジングル・ベル 🅱

A2 もろびとこぞりて 🅱

A3 初めてのクリスマス 🅱

A4 ママがサンタにキスをした 🅱

A5 ウィンター・ワンダーランド 🅱

A6 ふたりだけのクリスマス

B1 ホワイト・クリスマス

B2 サンタが街にやって来る 🅱

サンタ・クロースがやって来る 🅱

B3 きよしこの夜 🅱

B4 赤鼻のトナカイ 🅱

B5 ブルー・クリスマス 🅱

B6 アデステ・フィデレス 🅱

 

演奏: 森ミドリとレモン・ポップス

編曲: 利根常昭

定価: 1,800円

 

3年前に取り上げるつもりだったが叶わなかったアルバムが、絶好の機会に復活です。そう、明日は楽しいクリスマス…七面鳥食って飲んで騒ぎ、こんなアルバムを気ままに流す機会の到来なのです。この所公共の場所にいると、ハイプしか伝わってこない季節…特に音楽が流れる場所では。マライア・キャリーワム!のいつもの曲に増して、ここ30年辺りの間に作られたハイプ向けクリスマスJ-popの数々ときたら。どれも同じことしか歌ってないし、本来の意味はどこに行っちゃってるんでしょうね。かと言って、そんな曲達へのアンチテーゼとしてアル・ヤンコビックの「地上最後のクリスマス」をお勧めもできないわけです。嫌味は仕方ないとしても、そこに「核」を持ち込んじゃいけないし。ただ、2年前までの数年間はむしろ排除されたと思われたジョンとヨーコの「ハッピー・クリスマス」を聴く機会が増えたことを、喜んでいいのでしょうかね。同じ意味で、ここでも取り上げられている「初めてのクリスマス」を、特に英語の歌詞がついているヴァージョンで聴くことも辛くなってしまったし。本当の意味の平和とは、世界に調和がもたらされること。あんたらだけで気持ちよくなってなさいってことじゃないんですよ。24年前を唯一の例外として(汗)、自分には常にそんな思いしかありません。

そんなわけで、手元にあるクリスマス・アルバムの中でも愛着が湧くのは、歌のないインストものが中心になってしまうのですよ。そんなアルバムの中の2枚に、宗内の母体が文章を寄せさせていただいたばかりですが(こちらでチェック)。貴方のクリスマスのお供に、今からでも是非。3年前紹介した「ダンシング・クリスマス」でもフィーチャーされていましたが、電子オルガンの音色ほど「団欒」という言葉を的確に表現するものは思い当たりません。20世紀後半の米国の一般家庭にはなぜか爆発的に普及し、それを取り囲んでみんなで歌うというクリスマスの光景は普通になっていましたが(やはりキリスト教社会ゆえ、教会のオルガンを簡素化したと言えるものが浸透するのは当然の成り行きかも)、それを「輸入」しようとする風潮は確かにあったのかも。といえども、ピアノに比べても敷居は確かに高かったし。未だに「お嬢様」的なイメージはついて回ります。そんな、社会が明るかった頃の残像を、せめてこういうアルバムを流すことで今に持ち込めればいいのですが。もちろん、トイ・マジック・オーケストラのアルバムみたいに、手軽に持ち寄れる楽器でこの辺の楽曲を演奏するのも楽しいんですけどね。

「ダンシング・クリスマス」から10年以上経過していることもあり、演奏やアレンジが格別に洗練化されていて、雰囲気作りには最適。70年代らしさを体現するサウンドが格別です。「ふたりだけのクリスマス」イーグルスの曲ではなく、唯一の書き下ろし。ライナーにはオリジナルの歌詞も付けられており、ここで歌が聴けないのは残念とはいえ、隠された才能の片鱗を見せてくれます。ところでまさに今日この日、ミドリお姉さんのコンサートがあるというではないですか!行けないのが残念でありますが(涙)。今も活発に音の魅力を伝えてくれる伝道師。