黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

歌謡フリー火曜日その49: もしオルガン弾きが君の彼女だったら

RCA JRS-7307

愛の休日/森ミドリとレモン・ポップス

発売: 1974年

ジャケット

A1 ウェディング・マーチ

~オー・マイ・ラヴ (ジョン・レノン) 🅱

A2 オールド・ファッションド・ラヴ・ソング (スリー・ドッグ・ナイト) 🅲

A3 ミセス・ヴァンデビルト (ポール・マッカートニー&ウイングス)

A4 ラヴ (ジョン・レノン) 🅵

A5 愛の休日 (ミッシェル・ポルナレフ) 🅱

A6 マイ・ラヴ (ポール・マッカートニー&ウイングス) 🅱

B1 エスタデイ・ワンス・モア (カーペンターズ) 🅴

B2 モン・パリ (ミッシェル・ルグラン)

B3 想い出のフォトグラフ (リンゴ・スター)

B4 夢みるジン・ナテー (ロバート・マグニン)

B5 シェルブールの雨傘 (ミッシェル・ルグラン) 🅱

B6 ラスト・タンゴ・イン・パリ (ガトー・バルビエリ)

 

演奏: 森ミドリとレモン・ポップス

編曲: 小林南

定価: 2,000円

 

森ミドリさんのアルバムは、クラウンからの愛唱歌集と、RCAからの主にアイドル歌謡に的を絞った2枚を既に取り上げているが、その2枚目の紹介の時、惜しくも語れずじまいと述べた3枚目を無事救済。自らもアイドルモードに身を投げての若々しい作品集から一転しての、エレガントなラブ・サウンド大会。何せ1曲目にウェディング・マーチをもってきているだけあって、ロマンティックな語らいのBGMにうってつけの内容なのだが、ビートルズ絡みの作品が多めというのがミソ。現役おかっぱ世代がリアルでロマンスに目覚め、その恋心に火を付けるのにうってつけ。導き役としてのミドリお姉さんの優しさが、このジャケットに溢れ出ている。派手に自己主張するのではなく、あくまでもサウンドの一部としてのビクトロン。アレンジを担当したのは、前作「アルプスの少女」で派手目の曲を一手に引き受けていた小林南氏(ヤマハ系の仕事が多い人だったが、エレクトーンじゃないオルガンレコードにも駆り出されていたとは)だが、ここでは別人のように滑らかなオーケストレーションに徹している。

どうしてもプリンスのあの曲の影がちらついてしまうイントロから「オー・マイ・ラヴ」に導かれると、分厚く入ってくるストリングスがエコーに包まれ、メロトロンを幻聴(!)。そこに手堅くビクトロンが入ってくる。美しいピアノの演奏はミドリさんではないだろう。賑やかに盛り上げる「オールド・ファッションド・ラヴ・ソング」に続いては、まさかの「ミセス・ヴァンデビルト」。これは選曲自体が快挙。軽めのタッチでポップにこなすけど、乙女っぽさはあまり感じられない。「ラヴ」は派手目のビートも入って緩急取り混ぜてのアレンジだが、ダブルエンディングを取り入れているのが斬新。これは国文社「ラブ・サウンド」に入っているメロトロンヴァージョンの勝ちだな。

B面にはジョージとリンゴの共作「想い出のフォトグラフ」もあって、ポップに盛り上げているが、ビートルズ関係以外の曲は手堅いラブ・サウンドの域から出ていない。まぁそれでいいのだけど、前2作の個性全開サウンドに慣れた身にはちょい物足りないな。