黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

こんな夜に染みわたるブルースの真髄

コロムビア ALS-4372

ギター ムード歌謡をうたう

発売: 1968年12月

ジャケット

A1 思案橋ブルース (高橋勝とコロ・ラティーノ) 🅶

A2 コモエスタ赤坂 (ロス・インディオス) 🅴

A3 霧にむせぶ夜 (黒木憲) 🅹

A4 あなたのブルース (矢吹健) 🅶

A5 夜の贈りもの (高橋勝とコロ・ラティーノ)

A6 盛り場ブルース (森進一) 🅷

B1 命かれても (森進一) 🅷

B2 くちづけが怖い (久美かおり) 🅱

B3 花と蝶 (森進一) 🅽

B4 あやまち (J.シャングリラ) 

B5 花化粧 (和田弘とマヒナ・スターズ)

B6 ポート・ヨコハマ (アンディ鈴木とザ・フェニックス)

 

演奏: 木村好夫/コロムビア・オーケストラ

編曲: 甲斐靖文

定価: 1,500円

 

昨日のアルバムと数字の並びが変わっただけですが、ムードが一変。久々に登場する木村好夫先生のムード歌謡アルバムです。それ以上のものでもなく以下のものでない、それだけで安心できるというか、もはや癒し系。強烈な個性が刻印されてるとも言い難いし、これらの曲を忠実にこなすだけで充分なんですよね。瞬時、寒い夜に心に灯火を灯す。といえども、主に自社曲を中心に渋めの選曲もあって、なかなか侮れません。ここに投げ入れられた「紅一点」がタイガース映画のヒロイン、久美かおりの曲と言うのもなんと言う因果…時代の覇者の脇役転じて、トレンディ女子の妬みの的にされてしまった彼女を守りたいおじさんの図とかが想像できますが、森進一の曲に挟まれても違和感ないのがいかにもと言うか、当時の歌謡界の保守性故なのかもしれません。藤本卓也の毒牙が光る「あなたのブルース」も、決して地獄へと導かず、一般的社交ムードに包まれた盛り場の雰囲気に留めているし。後年、タブレット純監修によるムードコーラス・コンピのタイトル曲に抜擢され知られることになった「夜の贈りもの」や、同コンピにB面が選曲されている「あやまち」などの通好みの選曲も見逃せないし。一昨日のエントリで木山吉子ちゃんが語っていた通り、「霧にむせぶ夜」あたりは一般家庭でもお父さんが口ずさむ程浸透していたけれど、そういうものなんですよ流行歌って。時の経過が人間の加齢と共に引きずられているだけで。それでも、人の情緒に訴えるムード歌謡というものが廃れる世界線なんて、とても想像できません。サブスクでも存分に聴けますよ、好夫ギターは。