黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

ねえ聴こえますか…万博の年の狂騒の息吹が

クラウン GW-5184

嘘でもいいから リズム・リズム・リズム

発売: 1970年10月

ジャケット

A1 嘘でもいいから (奥村チヨ) 🅵

A2 X+Y=LOVE (ちあきなおみ) 🅰→21/6/23

A3 夏のあらし (西郷輝彦) 🅱

A4 チュクチュク (ジミー・オズモンド) 🅰→21/6/23

A5 手紙 (由紀さおり) 🅸

A6 三日月に乗って (中山千夏) 🅰→21/6/23

A7 私生活 (辺見マリ) 🅻

B1 お嫁に行きたい (森山加代子) 🅳

B2 昨日のおんな (いしだあゆみ) 🅻

B3 そっとおやすみ (布施明) 🅰→21/6/23

B4 素晴しい旅行 (ザ・タイガース) 🅲

B5 希望 (岸洋子) 🅽

B6 愛のきずな (安部律子) 🅺

B7 花びらの涙 (岡崎友紀) 🅱

 

演奏: 川原パーカッション・ブラザース/フローラル・ポップス’70

編曲: 馬飼野俊一

定価: 1,500円

 

サンタさんが恵んでくれたというわけではないけれど、ここから先は本当に欲しかったというか、見つかったことが嬉しい盤が続きます…ギリギリで次回の復活回しになってしまった盤の中にも「奇跡の1枚」が入っていたし、もう暫くは「黄昏みゅうぢっく」が続くことになりそうです。やはり、底無し沼ですよね、歌無歌謡は。

初期に紹介した2枚組「昭和おんなブルース/魅惑のヒット歌謡32集」に4曲抜粋されていた川原パーカッション・ブラザースのアルバムが遂に巡ってきました。パーカッション奏者として引く手数多の大活躍、コロムビアから出たエロ系インスト・アルバムでの主役級の活躍で知られている川原正美氏と、その弟である直実氏からなるユニット。バックを固めるのは、つい最近クラウンからリリースされたコンピ「エレベーター・ミュージック」でも多数フィーチャーされている名義であるフローラル・ポップス。このコンピ、洋楽中心ではありますがもうちょっと踏み込んで、歌無歌謡のディープコンピが今後出る可能性も示唆するなかなかの力作。田中明子さんの演奏が多く入っているのも魅力的ですし。

話をこのアルバムに戻すと、さすがにテイチクの「クレイジー・パーカッション」に比べると通常運行というか、リズミカルな感触を活かしてはいるけどそこまで狂っていない。従来の歌無歌謡の場末感覚も保ちつつ、斬新な方向性もちょっぴり見え隠れ。ラウンジ感覚もありつつ、基本的にはポップ。件の2枚組に取り上げられた「三日月にのって」「そっとおやすみ」の爽快な解釈が目立ちますが、それ以上に「素晴しい旅行」があっと驚く出来。いきなりのファズ・ギターでサイケな感覚を浮かび上がらせながら、他のヴァージョンに比べるとジャズ・ロック濃い仕上がりになっていて、この流れでは異色。「手紙」「希望」のようにおとなしめの演奏も凹みの場所になっていないし、所々で聴けるフルートの音もキュートで良い。基本的に職人芸なので安心して付き合える1枚。