クラウン GW-3011~12
ビッグ・ヒット歌謡ベスト36 恋のアメリカン・フットボール/もう一度
発売: 1974年6月
A1 もう一度 (小坂明子)Ⓐ 🅲
A2 ひと夏の経験 (山口百恵)Ⓑ 🅲
A3 薔薇の鎖 (西城秀樹)Ⓓ 🅳
A4 さらば友よ (森進一)Ⓔ 🅳→11/28
A5 バラのかげり (南沙織)Ⓖ 🅲→11/28
A6 虹の架け橋 (浅田美代子)Ⓐ 🅱
A7 夫婦鏡 (殿さまキングス)Ⓑ 🅵
A8 恋は邪魔もの (沢田研二)Ⓔ 🅴
A9 突然の愛 (あべ静江)Ⓓ 🅲→11/28
B1 恋のアメリカン・フットボール (フィンガー5)Ⓑ 🅱
B2 白い部屋 (麻丘めぐみ)Ⓔ 🅰→11/28
B3 黄色いリボン (桜田淳子)Ⓐ 🅱
B4 星に願いを (アグネス・チャン)Ⓗ 🅴
B5 恋人たちの港 (天地真理)Ⓔ 🅳
B6 別れの鐘の音 (五木ひろし)Ⓓ 🅴
B7 なみだの操 (殿さまキングス)Ⓕ 🅺
B8 学園天国 (フィンガー5)Ⓒ 🅳→12/24
B9 ひとり囃子 (小柳ルミ子)Ⓐ 🅱
C1 ふたりの急行列車 (チェリッシュ)Ⓔ 🅱→11/28
C2 うそ (中条きよし)Ⓑ 🅷
C3 わたしは旅人 (ペドロ&カプリシャス)Ⓐ
C4 闇夜の国から (井上陽水)Ⓖ 🅱→11/28
C5 若草の季節 (森昌子)Ⓓ 🅱
C6 激しい恋 (西城秀樹)Ⓔ 🅲→11/28
C7 姫鏡台 (ガロ)Ⓒ 🅳→12/24
C8 透きとおった哀しみ (あべ静江)Ⓔ 🅰→11/28
D1 妹 (かぐや姫)Ⓔ 🅰→11/28
D2 紅い花 (五木ひろし)Ⓑ 🅱
D3 逃避行 (麻生よう子)Ⓔ 🅰→11/28
D5 シンデレラは6月生まれ (あいざき進也)Ⓑ
D6 告白 (野口五郎)Ⓔ 🅰→11/28
D7 しあわせの予感 (小椋ひろ子)Ⓐ
D8 花のようにひそやかに (小柳ルミ子)Ⓒ 🅲→12/24
D9 あなた (小坂明子)Ⓓ 🅵→11/28
演奏: 山下洋治と’74オールスターズⒶ
まぶち・ゆうじろう’68オールスターズⒷⒸ
江草啓介と’74オールスターズⒹ
いとう敏郎と’68オールスターズⒺⒻ
ありたしんたろうとニュービートⒼⒽ
編曲: 井上忠也Ⓐ、さいとう・とおるⒷⒼ、福山峯夫ⒸⒻ、新井英治Ⓓ、小杉仁三Ⓔ、青木望Ⓗ
定価: 3,000円
3000番台初期のクラウンの2枚組は、一気にライト層を狙ったというか、女の子向けのファッション雑誌のカタログページから持ってきたようなジャケ写で攻めてきてましたが、石油ショック後のイメージ刷新を図ったのでしょうか。これの選曲を全体的に見ても、森進一と殿キンを除くとそんな感じで、若返りの色を強めている。しかし、流れ出る音は今まで通り安定のクラウンサウンドだ。当然、トライデントの卓導入などで、2、3年前からは程遠い音になってはいるけれど。このブランディングこそが決め手だったんでしょうね。一部、前月発売の『妹・ふたりの急行列車』から引き継がれた曲もあるが、それでも全体の半分以下。いきいきと新曲が市場に送り込まれまくり、そんな活気を反映した選曲になっている。塩化ビニールの確保が思うようにいかないなんて、流行り歌の世界とは無縁の現象だったんでしょう。テレビがありましたからね。今はサブスクがその位置に立っているようなものですから。
いつもの顔ぶれによる安定の展開で、クリスタル・サウンズのような「次に何が出てくるか読めない」わくわくさは期待できないけれど、当時の歌謡界をクラウンの視点でどう鳥瞰したかが伝わってくるサウンド。トップとラストが小坂明子曲というのが、当時の彼女に対する期待度を物語っている。ドラマティックなピアノヴァージョンの「あなた」は前作からの引き継ぎだけど、「もう一度」の方はロマンティックなオーケストレーションにスチールが華麗に乗る。しかし、サビに行くと「裸のビーナス」(いとう版)などでおなじみのオペラティックな怪唱が独自の色を加える。タイトルフレーズだけ、言葉を歌っているのがまた不思議。ダニエル・リカーリ的な味を出しているのだろうけど、そのガチさがかえって滑稽に聴こえるのだ。「ひと夏の経験」は初々しい喪失感をサウンド面の軽量化で、見事に再現している。そこにテナー・サックスが乗ると、なんかいけないところを覗き見しているような感覚に襲われるのだ。特に2回目の「経験するのよ」でオクターブ下げて出てくるところなど、もろそれ。「薔薇の鎖」はフレッシュなピアノのタッチが、不思議とロック色を醸し出す。と思えば「夫婦鏡」は完全場末ワールドで、女性コーラスも飲み屋のねーちゃん的響き。ここからコペルニクス的に変換してしまう水谷公生&トライブヴァージョンに、次のリリースですげ替えられてしまうのは痛快だ。「恋は邪魔もの」は軽い演奏だなと思ってたら、不意打ちでシンセが登場。ちょっと前なら暴れていたかもしれないベースは、めちゃおとなしいプレイだ。B面中盤のアイドル曲連発は流石にファンシーさ足りない感があるが、「星に願いを」の「バンド・オン・ザ・ラン」的なシンセには意表を突かれた。ありたしんたろうのプレイは控えめではあるが。全体的にがんばりが伝わってくるのが江草啓介氏の演奏で、他の名義の曲のピアノでも活躍していると思われる。
ウイングスといえば「しあわせの予感」…いや、こちらは自社推し組の小椋ひろ子の曲の方。さすがに歌を抜いてしまうと印象に残りづらい。この頃の女性新人アイドルの曲って、歌無歌謡でも聴いてみたい曲がいくらでもあるから、それらを探すより実践してみたい、という気持ちに火が付くのですが。もちろん、フレッシュなプレイヤーを探してきてね。「白い羽根」とか「薔薇物語」とか「小人のひとり旅」とか…(敢えて歌手名は記しません)