黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

紅白歌無ベスト10・第6位 (その1)

さて、ここから先はなんと1曲を除いて全てに共通項が…この段階で予想された数多の名曲が脱落と発覚するわけです…

 

6位 (タイ)

禁じられた恋

歌: 森山良子

作曲: 三木たかし

作詞: 山上路夫

編曲: 高見弘

69年3月25日発売/オリコン最高位1位(8週)

 

🅰山下三夫/阿部源三郎 (ギター)、テイチク・ニューサウンズ・オーケストラ (編曲: 山倉たかし) 21/4/2

「こんなにこんなに愛してる」直系のサウンド、とはいえこの曲にぴったり合致してるとは思えず、ただ絹のようなストリングスはやはり絶品の山倉印。

🅱ゴールデン・ポップス・オーケストラ (編曲: 森岡賢一郎) 21/7/9

原曲の良さを生かしつつさらに奥に踏み込んだサウンド。しかし、このキハーダの音…せこい…最後にしつこく一発かますも逆効果。

🅲吉岡錦正、吉岡錦英 (大正琴)/クラウン・オーケストラ (編曲: 福山峯夫) 21/7/14

慣れると癖になりそうな異様なノリ。大正琴のメロディーこなしに譲歩したダウナーなテンポ感、そしてキハーダをクラッシュシンバルで代用。間奏のギターの音も妙だ。

港町ブルース 大正琴は歌う』

🅳いとう敏郎と’68オールスターズ (編曲: 福山峯夫) 21/8/2

同じ福山峯夫編曲ながら🅲に比べると明朗なお嬢さん感が強く出過ぎ。安心して聴けるサウンド。こちらもクラッシュシンバルを執拗に強調。

🅴カンノ・トオル (スチール弦ギター)とフォークギター・グループ (編曲: 福島正二) 21/8/7

ちゃんとフォークの曲として解釈しているところが逆に異端を感じさせる。アコギを恐らく5本は使用、あとはフルート、ハーモニカとBメロの妙なパーカッションのみ。異例の4分越え。

🅵木村好夫 (ギター)、宮沢昭 (フルート)/レインボー・オーケストラ (編曲: 大柿隆) 21/9/25

ジャングルサウンドを放棄したかなり軽めの解釈。フルートと好夫ギターが爽やかにリード。キハーダは律儀に使用している。

🅶コロムビア・オーケストラ (編曲: 河村利夫 or 山路進一) 21/11/7

ジャングル感が強いが、ストリングスで美麗なる感触を生み出している。Bメロが一転して相当軽い。エンディングはキュートにまとめ、それでもキハーダ一発。

🅷木村好夫とザ・ビアーズ・ウィズ・ストリングス (編曲: 無記名) 22/1/9

こちらはマイナーレーベル向けの好夫サウンド。キハーダの代わりにギターでキューンとやっているところがなかなかの可愛さで、Bメロはグルーヴィに飛ばす。

🅸藤田都志 (第一琴)/久保茂、上参郷輝美枝 (第二琴)/山内喜美子 (京琴)/杵屋定之丞、杵屋定二 (三味線)/テイチク・レコーディング・オーケストラ (編曲: 山田栄一) 22/1/18

重厚に積み上げた純和風サウンドリズムセクションの響きは山倉ヴァージョンと変わらないが、ここまで味付けが変わるとは。最後にダメ押しのキハーダ一発。

🅹Joseph Meyer & Midnight Sun Pops (編曲: Y. Maki) 22/3/16

イントロのフルートのオブリがなんともキュートな感触。低い音まじりでなかなかの純情ぶり。キハーダに加え、リムショットと思しき音がベースラインの代役を務めたり、Bメロが弾んでいたりでなかなかのユニーク・ヴァージョン。

🅺カンノ・トオル (ギター)/テイチク・ニュー・サウンズ・オーケストラ (編曲: 福島正二) 22/3/26

🅴とメイン演奏者、アレンジャーが同じながら、しっかり棲み分けているのが見事。モヤがかかったようなサウンドに山倉印の影が。

🅻吉岡錦正、吉岡錦英 (大正琴)/テイチク・レコーディング・オーケストラ (編曲: 福島正二) 22/3/28

福島正二3つ目、テイチク5つ目!ここまで自社内競争させるとは。クラウンの吉岡父子ヴァージョンに比べると遥かに軽く、お洒落感さえあるが、音の押し込まれ加減がいかにもテイチク。エンディングフレーズまで大正琴で演っている。

🅼ザ・フォークセレナーダス・プラス・ストリングス (編曲: 近藤進) 22/3/30

オリジナルの配給元ビクターらしく慎重に。フォークのイメージを打ち出しつつも手堅い歌無歌謡のノリ。キハーダなしで、控えめにギターのコードが入る。

🅽ゴールデン・サウンズ (編曲: 荒木圭男) 22/4/17

この流れで聴くと大抵ゴールデン・サウンズが一番普通に聴こえる。鉄琴で奏でられるメロディーが一部こけているのが惜しい。Bメロの軽さも一種独特。

🅾ジョージ高野とパーフェクト・サウンド・グループ (編曲: 福山峯夫) 22/5/17

ミノルフォンにも福山峯夫アレンジが。シタール的なギターの響き、オクターブお構いなしのジョージのメロディーこなしなど、結構いっちゃってる演奏だ。

🅿︎ユニオン・ニュー・ポップス・オーケストラ (編曲: 池田孝) 22/11/4

リズムアレンジ的にはオリジナルを大幅に逸脱。華麗なブラスサウンドの影に隠れて、重要な要素を幾分剥ぎ取っているのが惜しい。キハーダ部分など小節丸ごと端折られているし。残念な印象のイントロを最後にもう一回繰り返さなくてもいいのに。

🆀稲垣次郎 (テナー・サックス、フルート)/木村好夫 (ギター)/コロムビア・ストリングス (編曲: 河村利夫) 22/11/12

3つ目の好夫ヴァージョン。ストリングスを華麗に配しつつ、比較的保守寄りの仕上がり。ピアノが地味にがんばっている。🅶との共通項は希薄なので、あちらは山路アレンジだろう。

🆁テディ池谷クインテット (編曲: テディ池谷) 22/11/26

ピアノを中心にラウンジムードながら、オリジナルの雰囲気も忠実に再現。かなり危険な逢い引きの様子を連想させる。

🆂有馬徹とノーチェ・クバーナ (編曲: 小泉宏 or 今泉俊昭) 22/11/27

オリジナルに近いと思わせといて、実は最も過激な印象のヴァージョン。淡々としたリズムアレンジに、クラリネット中心のブラスが異様なオーラを振りかけ、リードをとる謎のサックス(?)、まさかの電子音的響きがゆらゆら。山倉たかしを生んだ名門の意地が炸裂。ジャズファンクの名演が連発されるアルバムの中で聴くと、余計異様に聴こえる。

 

以上、19ヴァージョン(19枚収録)

おまけ: ポニー録音となっているが、ヴァージョン🅵と完全に同じテイク。この辺の原盤事情はどうなってるのだろうか…