黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

紅白歌無ベスト10・第8位 (その1)

8位は2曲が並んでいますが、まさかの拓郎2連発。そしてのっけから強力ヴァージョン!

 

 

8位(タイ)

襟裳岬

歌: 森進一

作曲: 吉田拓郎

作詞: 岡本おさみ

編曲: 馬飼野康二

74年1月15日発売/オリコン最高位6位

 

🅰ザ・サウンズ・エース/ジェイク・コンセプション (テナー・サックス) (編曲: 池多孝春) 21/4/9、22/3/24

いきなり真打ち登場!イントロ7小節目で炸裂するメロトロンコーラスに眩暈!軽めにこなされるサックスのファンキネスとのアンバランスで、一気に異次元に連れて行かれる。あと、地味に2コーラスAメロ最後のオルガンのちょいフェイクが憎めない。竜崎盤「ひとりっ子甘えっ子」と並ぶ、我が歌無歌謡哲学を固定させた名ヴァージョンだ。果たしてあと17ヴァージョンまともに聴けるのか?

『ヒット速報』(75年3月盤)

🅱ゴールデン・ポップス (編曲: 山屋清) 21/4/22

山屋清アレンジなのに…(アルバムの他の曲ではメロトロンが炸裂している) ギター、フルートを中心にさっぱり風味で終わっている。まぁ、おまけだろう(🅹参照)

🅲村岡実 (尺八)、山内喜美子 (琴、京琴)/ミラクル・サウンズ・オーケストラ (編曲: 福井利雄) 21/5/20

イントロから大胆な和風テイスト(でもよく聴くとフルートとマンドリン)、しかし尺八がリードし始めると実に無国籍でマジカル。ミラクルサウンズらしい奥行きある音作り。

🅳豊岡豊とスイング・フェイス (編曲: 鈴木宏昌) 21/5/31

名門バンドも原曲をそれほど崩していない。ゴージャスなブラスアレンジが当時の歌番組の雰囲気を再現している。コルゲンらしいジャジー感覚がエレピの演奏に現出。

🅴吉岡錦正・吉岡錦英とオーケストラ (編曲: 佐香裕之) 21/6/4

イントロのキーが高くてちょい違和感。大正琴を聴かせるにはちょうどよかったんだろうけど。60年代録音のような攻め感覚がなくあっさり風味。

🅵グランド・シンフォニー・オーケストラ (編曲: 無記名?) 21/8/5

こちらも大正琴をフィーチャー。マイナーレーベルにしては気合が入ったストリングスアレンジだ。ただ、🅴と比較すると大正琴の響きがせこいし、サビで1オクターブ落ちるのにしらけ、🅴の処置は正しかったとしか言えない。

🅶ホット・エキスプレス (編曲: 斎藤恒夫) 21/8/12、12/31

普通に始まり普通に進む。こういう演奏だと強烈にメロトロン欠乏症が…(汗)。

🅷ニュー・サン・ポップス・オーケストラ feat. T. Jeorge (編曲: T. Hanaoka) 21/8/29

イントロがサックスで演奏されているのが異例。高野ジョージ氏の気合の見せ所を感じる。珍しく転調して3コーラス目まで演奏。ただ、国文社のヴァージョンとして聴くと面白くないな。

🅸サウンド・オブ・ドゥリーマース (編曲: 小谷充) 21/10/8

フォークのコンピに収録されているので(でもビクター自社だし)、原曲に忠実なアレンジの割にドラムが強調されていてユニーク。ハーモニカの音がリコーダーを幻聴させる。メロトロンズと同じ年&レーベルの小谷氏仕事(だからどうした)

🅹ジョー&ホットベビーズ (スキャット)/ゴールデン・ポップス (編曲: 山屋清) 21/10/11

🅱とオケは同じ(恐らくこちらが先だろう)だが、唸りまくるスキャットマンをフィーチャーしての異色ヴァージョン。原曲の味故に、アルバムの他の曲ほどの変態感覚は感じない。女性コーラスも原曲に近く、地味に支える。

🅺吉岡錦正 (大正琴)/ブルー・サウンズ・オーケストラ (編曲: 池多孝春) 21/11/10

3つ目の大正琴ヴァージョン。メロトロン盤とアレンジャーが同じながら、微妙に芸風を変えてきているし、イントロはヴァイオリンが演奏。こちらはサビで1オクターブ落とさずに済むぎりぎりまで、キー変更を抑えている。

🅻クリスタル・サウンズ (編曲: 土持城夫) 21/11/15、22/2/2

クリスタルらしいあっさり風味で、ヤマもなく進行。ここまで軽音楽に徹してくれた方がむしろ潔い。アルバムの片面に10曲収録していた頃とは思えないフルコーラス演奏。

🅼TBSニュー・サウンド・オーケストラ (編曲: 無記名) 21/12/17

よく聴くと🅵とトラックが同じ(イントロ3小節目のコードがIであるのが特徴的)だが、主旋律がサックスに置き換えられている(まぁこっちが先だろう。故にあちらの息苦しさも納得)。サックスの咽び泣き方がいかにも森進一、という感じ。

🅽田中清司 (ドラムス)/オーケストラ名義未記載 (編曲: 無記名) 22/1/14

唯一、原曲を大幅に逸脱したアレンジを聴かせるヴァージョン。モーグをフィーチャーしてファニーなサウンド、ちょっぴりレゲエの影響も。ただ、これを一番面白いアレンジだと簡単に言いづらいんだよね。

🅾見砂直照とスーパースター’75 (編曲: 金井陽一) 22/2/3

またも名バンドリーダーがありふれた解釈の罠にはまっている…面白くなさそうに弾いているピアニスト(よく聴くと2人いる)の姿が思い浮かぶ。

🅿︎奥田宗宏とブルースカイ・ダンス・オーケストラ (編曲: 高野志津雄) 22/4/29

「今宵踊らん」らしいムーディなワルツの解釈。これはダンス音楽として、素直に接するしかないでしょう。

🆀ボビー佐野 (アルト・サックス)/オーケストラ名未記載 (編曲: 池多孝春) 22/5/11

イントロがヴァイオリンということは🅺のアレンジを使い回しということだな。手堅くサックスが咽び泣くヴァージョン。メロトロンはいずこ…

🆁まぶち・ゆうじろう’74オールスターズ (編曲: 小杉仁三) 22/11/2

王道中の王道、と思いきやイントロのメロディーをちょっといじってたりして、油断を許さない。最後はこれでよろしい。

 

以上、18ヴァージョン(21枚収録) 厳密に言えば、メロトロンヴァージョンは紹介していない盤2枚(+カセット1本)を所持しているので、こちらを単独8位にすべきでした(汗)

おまけ: これは相当後になってからの録音のはず。