黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

ひとり酒場でカルミック・ドリーム

クラウン  GW-5265

女のみち・ひとり酒場で 京琴・艶歌をうたう

発売: 1973年8月

ジャケット

A1 港町ブルース (森進一) 🆆

A2 ひとり酒場で (森進一) 🅱

A3 女のブルース (藤圭子) 🅹

A4 星影のワルツ (千昌夫) 🅶

A5 長崎慕情 (渚ゆう子) 🅹

A6 博多の女 (北島三郎)☆

A7 池袋の夜 (青江三奈) 🅳

B1 長崎ブルース (青江三奈)

B2 女のみち (宮史郎とぴんからトリオ) 🅿︎

B3 京都の夜 (青田健二) 🅱

B4 下町育ち (笹みどり)☆ 🅱

B5 柳ヶ瀬ブルース (美川憲一)

B6 花と蝶 (森進一) 🅼

B7 命預けます (藤圭子) 🅽

 

演奏: 山内喜美子/クラウン・オーケストラ

編曲: 福山峯夫、福田正 (☆)

定価: 1,800円

 

フルートは自分も演奏するので、萎縮しながら聴いてしまうけれど、琴となればそうはいきません。癒されるのみです。というわけで、今月は予期せず山内さん多め月間になってしまいました。

山内さんとクラウンはあまり結びつくイメージがないなと思ってましたが、67年に早々と『京琴による艶歌歌謡ヒット集』を残していて、94年の『琴・ザ・ビートルズ』に至るまで散発的に幾つかの録音があったと思われます。その正当な後継者として、宮西希さんに望みを託したのかな(汗)。彼女の「なごり雪」は最高ですよ。

そんな散発的な録音の1枚。クラウンのルーティン・サウンドのカラーとちょっと違う福山峯夫仕事として聴くと結構面白い。ヒットした時期に捉われず、演歌スタンダードを手堅く演っているけれど、この京琴の調べに脳をくすぐられるのだ。トップの港町ブルース、オーセンティックなヴァージョンにない響きだなぁと聴いていると、イントロ5小節目がちょっとおかしなことに…リアルタイムヴァージョンじゃない故、滑った感じもしょうがないが、右側に固定したドラムなど、70年代ならではの音が同居しているのも不思議な感触だ。さらに「ひとり酒場で」にいくと、初っ端からなんとメロトロンが!メロトロンと京琴が同時に鳴っているなんて、これは極上の桃源郷。ニュービートのセッションで使ったのが放置されていて、そのまま使ってみたのだろうか。 「星影のワルツ」にもメロトロン登場。指の舞いが伝わってきそうなダイレクトな響きに、山内さんの色気を感じる。その後ろから見守るメロトロンが異次元の感触だ…これは66年の録音技術で聴いてみたかったところ。テイチクの「うーうー」ヴァージョンが強力すぎる「長崎慕情」も、メロトロン登場で異なるカラーが出ているし、「女のみち」はトリオ/ワーナー盤のエクスペリメンタル色が薄れて軽くはなっているが、これにもメロトロン入り。以上の2ヴァージョンで山内さんの魅力に参ってしまった人をも、決して飽きさせないはず(自分だ…汗)。かと思えば、前述した67年のアルバムから引っ張ってこられたクラウン自社曲も2つ入っている。録音技術的に67年色が出てしまっているが、全体の流れから浮いている感じはなくて、6歳若い彼女の演奏も違和感なくはまっている。むしろ、68年以降のクラウンの音を聴き過ぎた耳には、ガチすぎて新鮮すぎるほどだ(汗)。「下町育ち」にはサイケ感さえ感じられるし。「池袋の夜」「柳ヶ瀬ブルース」のハワイアンサウンド(山下洋治か?)も新鮮な味付けで、後者にはメロトロンも入っているし、萌え萌え大爆発(汗)。

今年に入ってからジャンクコーナーで救済した盤なのに、状態も良かったし、これは美味しい買い物でした。もっとこんな調子で掘れりゃいいんだけどね…