黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

紅白歌無TOP40・第29幕

いよいよベスト10前最終コーナーですが、聴き比べする立場として気持的にはこの曲こそ1位なのです。全ヴァージョンつぶさに聴いて、この部分はこう演っているとか詳細に表にしてまとめたい位。でも空間が限られているので、あっさりいきたいと思います。いや、いかないか…

 

11位

夜明けのスキャット

歌: 由紀さおり

作曲: いずみたく

作詞: 山上路夫

編曲: 渋谷毅

69年3月10日発売/オリコン最高位1位 (8週)

 

🅰いとう敏郎と’68オールスターズ (編曲: 福山峯夫) 21/5/3、8/2

イントロのギターをオルガンに置き換えてるのがいい。ラヴァーボーイの「イッツ・オーヴァー」かと思ってしまった(汗)。若干テンポを上げ気味なのにムーディな響き。ただ、Bメロ後半とAメロ繰り返しでコードを簡素化しているのがマイナスなのだ…ここはこの曲の歌無盤がはまりがちな罠なので、じっくり追及していきたい。他は、ピアノのアクセントとか、肩の力を抜いたアドリブとかもあって、非常にいいテイク。

🅱秋山実とニューサウンド・グループ (編曲: 竹村次郎) 21/6/2

アコギの優しい響きを強調。ミノルフォン色の濃い音なので、浜恵子の歌声を幻聴してしまう。Bメロのアコーディオンのスペーシーな響きもいいし。ただ、Bメロ後半とAメロ繰り返しのコード簡素化の罠にこれもはまっている。配布された楽譜がこうなってたのだろうか?最後もマイナー終りだし。

『12弦ギターの甘いささやき 夜明けのスキャット

🅲テイチク・ニュー・サウンズ・オーケストラ (編曲: 山倉たかし) 21/6/9

山倉アレンジなので、当然「こんなにこんなに愛してる」を幻聴(ベースの入り方まで!)するが、アシッドなエコー効果でその罠を微妙に避けている。一瞬こけかけるBメロ後半にちょっとひねりを加えているところがこのヴァージョンのいいところ。マイナー終わりもマイナスになってないが、その後もう一押しするとこが普通ではない。

🅳ゴールデン・ポップス・オーケストラ (編曲: 森岡賢一郎) 21/7/9

これもなんか山倉色が濃厚に漂う、というか続けて聴いてしまうとしょうがない。Bメロ後半もAメロ繰り返しもきっちりやっているが、2番の歌う部分を飛ばしているのでじっくり付き合えないのが惜しい。エンディングもひねりあり。「渡鬼」的?

🅴吉岡錦正、吉岡錦英/クラウン・オーケストラ (編曲: 福山峯夫) 21/7/14

テイストは🅰に近いが、やはり主旋律が大正琴故妙なワールド。ただ、所々優しさを感じる響きになっているところがさすがこの曲。Bメロ後半とAメロ繰り返しはやはり惜しい。2番、ドラムが暴れ始めて余計妙な感じになっている。実はこの中で最もロック色が濃いヴァージョンではないだろうか?

🅵ユニオン・シンギング・オーケストラ (編曲: ?) 21/8/1

ベースからいきなり曲に入る。淡いクラシカル・エレガンスといった感じで、Aメロの奏で方にちょっと工夫が加わっている。それでもBメロ後半とマイナー終りだけ惜しい。

🅶木村好夫、宮沢昭/レインボー・オーケストラ (編曲: 大柿隆) 21/9/25

オーケストレーションに独自のアクセントを加えているところが、さすがいずみたくファミリーの忠実な仕事。幻想的なサウンドに好夫ギターが冴えまくる。ベースが唸りまくっているのも異色。ただ、やっぱBメロ後半が惜しいことになっている。マイナー終りは好夫ギターの力でそこまで残念になっていない。

🅷クイーン・ノート (編曲: ミッチー・シモン) 21/11/13

これもイントロのギターのフレーズにひねりを加え、期待感を煽る。幻想的なオルガンサウンドで超ダウナーな世界へ。Bメロ後半とAメロ繰り返しも安心して聴けるが、随所に入る渦巻サウンドはやはり幻覚作用を促す。最後、マイナー終わりかと思ったら念を押してちゃんとメジャーで終わってるし、力作だ。

🅸黛はじめとスイング・オーケストラ (編曲: 川上義彦) 21/11/27

これは速い。ギターも幻覚的響きになっているし、そこにゴージャスなブラスが入ってくると、ほぼ「今宵踊らん」の世界だ。なので、Bメロ後半とAメロ繰り返しが改変されていても違和感がない。1コーラス終了後、まさかのグルーヴィ展開に。ただ、「ラリラリ東京」と同じような寛治フィルが入っているので、どうしてもサイケイメージがよぎる。きっちりメジャー終り。

🅹荒尾正伸/オールスターズ・レオン (編曲: 小谷充) 21/12/18

実はこのヴァージョンこそ最強なのだ。イントロのギターにせよ、オリジナルの響きを意図的に逸脱しているし、始まって4小節目という、通常変えがちでない部分のコードを変えたりしているのがかえって独自性に火をつけている(Bメロ後半とAメロ繰り返しは変えていない)。2コーラスの女性スキャットも、顔が見えないながら素晴らしい。エンディングに至るまで油断させず。実は古巣リベンジでもある。

🅺横内章次/ブルー・ドリーマース (編曲: 横内章次) 22/1/7

横内サウンドも自社ネタ故に妥協した部分を隠せない。とはいえ、チージーなオルガンに主旋律を譲り、鍵ハモとフルートでファンシーな味付け。Bメロ後半にも独自のひねりが窺える。2コーラスではいきなりベースが妙な方向を向き始める。最後までギターリフが続くのも意地だ。

🅻稲垣次郎コロムビア・オーケストラ (編曲: ?) 22/2/14

さすが山田書院としか言えない牛歩ヴァージョン。3分42秒もあるというだけでその牛歩ぶりが解る。ムーディな響きの中に落ちていきそう。例によってBメロ後半とAメロ繰り返しでこけているが、Bメロ前半の段階で既にこける兆候を見せているし、Aメロ繰り返しのこけ方も他とちょっと違う。マイナー終りにかぶさっているピアノフレーズが憎めないけれど。

🅼松浦ヤスノブ/ユニオン・コンサート・オーケストラ (編曲: 山倉たかし) 22/3/26

山倉アレンジながら🅲と全くタッチが違う。イントロのギターはなかなかエッジが強い音で、遠くから徐々に忍び寄ってくる。見事なばかりのストリングスアレンジを背に、咆哮しまくるサックスは永遠に夜明けを見せてくれなさそうだ。ためにためたエンディングをさらに幻想的に盛り立てる山倉マジック。

🅽アート・ポップス・オーケストラ (編曲: 川口真) 22/4/5

謎の寄せ集め盤で初めて世に出た川口真アレンジ盤だが、さすがに格が違う。様々な楽器を積み重ねてのカラフルアレンジで、ありがちな罠にもはまっていない。2番に登場する男性コーラスにはメロトロンを予感させる響きも。このヴァージョンが筒美京平や横内章次、クイン・ノート等と一括りにされて統一名義で世に出た経緯はあまりに謎すぎ。しかも(レーベルは違うが)東芝だし。

🅾尾田悟/ザ・サウンズ・エース (編曲: 池田孝) 22/4/24

大映レコードながら、配給の関係で濃厚にテイチク色が出ていて、やはり「こんなにこんなに愛してる」的カラーが。フルート合奏には美幌波子「わたしの海よ」のカラーも。2番で転調するのは珍しく、そこから明らかな好夫ギターも出てくる。最後、再び転調してフェイドアウトというのも異色。

🅿︎ユニオン・シンギング・オーケストラ (編曲: 池田孝) 22/11/10

アレンジャーも配給も一緒なので当然🅾とテイストが似ているけれど、こちらの方が歯切れが良く、明朗なサウンド。やはり2度転調してフェイドアウトするし、ギターも好夫(ユニオンだからエディか)だろう。ピアノの導入で高貴さを出しているのが最大の違いか。

🆀筒美京平とクール・サウンズ (編曲: 筒美京平) 22/11/11

やはり筒美京平、考えることが違う。イントロは「雨のバラード」に近くなっているし、女性コーラスの響き、ベースの跳ね方もユニーク。しっかり、メガヒットの可能性を咀嚼した結果だろう。ちょっとチューニングがあってない感じもするが…2番以降の展開は並の歌無歌謡じゃあり得ないし、大胆な再構築術だ。Aメロ繰り返しの罠にはまりはしてるけど、意図的なものだろう。

🆁カンノ・トオルとブルー・クインテット/テイチク・レコーディング・オーケストラ (編曲: 福島正二) 23/6/12

オルガンに置き換えたイントロリフに鐘が乗って、大胆なサウンド構築が支えての堅実なギタープレイ。ドラムのフィルにほんのり涼川色がある。幻想色を強めたサウンド演出に酔っていると、アルバムでこれに続く「伊勢佐木町ブルース」で奈落のどん底へ…プロデューサーとしては悪魔だ…

 

以上、18ヴァージョン (19枚収録)。

さて、ベスト10ですが、ご察しの通り。昨年度と1曲も入れ替わっていません。しかし、順位にかなり大胆な変動があります。今年新たに仲間入りしたヴァージョンを振り返りつつ、改めてその変動を追い、2023年度最終回にさせていただきます。明日ですよ!