黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

紅白歌無TOP40・第8幕

超メガヒット「恋の季節」は初年度に2ヴァージョンしか入手できず、その頃の盤の人気の高さに吃驚しましたが、何とか8ヴァージョンまで伸びました。こちらはなかなかの健闘。

 

31位(タイ)

七色のしあわせ

歌: ピンキーとキラーズ

作曲/編曲: いずみたく

作詞: 岩谷時子

69年4月20日発売/オリコン最高位4位

 

↑なんとオリジナルがない!代わりに、キング盤筒美京平ヴァージョンを。これのオリジナル盤はめちゃ高騰してます。フルート誰だ?衛藤幸雄氏かな。 

 

🅰いとう敏郎と’68オールスターズ (編曲: 福山峯夫) 21/5/3 

筒美盤に続くと一気に場末感の底に落とされるけど、グルーヴ感皆無というわけではない。安心できるんですよねこのノリが。

🅱テイチク・ニュー・サウンズ・オーケストラ (編曲: 山倉たかし) 21/6/9

深いエコーのに沈んでいく山倉サウンド。サックスがグルーヴィさを高める役割を果たしている。クレジットないけど、恐らく松浦ヤスノブ氏。そう言えば娘さんは元気かなぁ。

🅲吉岡錦正、吉岡錦英/クラウン・オーケストラ (編曲: 福山峯夫) 21/7/14

🅰と同じ譜面を使ってそうだが、こちらはさらに場末感が強く、大正琴のせいで異次元感が爆発。所々炸裂するドラムフィルがなぜか失笑を誘う程。ありたしんたろうの中の人かな?

🅳ユニオン・シンギング・オーケストラ (編曲: ?) 21/8/1

一瞬山倉サウンドかと思わせるエレガントな展開。分厚いストリングスにフルートが華麗に舞いまくり。ピンキー並に背が高いけど髪は長めで黒髪の女の子のイメージ。2番のBメロで楽しそうに駆け始める場面もいい。 花房てるみ「愛されたくて」のサウンドによく似ている。

🅴黛はじめとスイング・オーケストラ (編曲: 川上義彦) 21/11/27

ゴージャスなブラスアンサンブルに乗せてアルトサックスが咆哮。Bメロの最後で舞い上がるところなど実にわがまま乙女っぽい。

『七色のしあわせ 魅惑のアルト・サックス・ムード』

🅵横内章次/ブルー・ドリーマース (編曲: 横内章次) 22/1/7

ゴージャス度は控えめに、薄い音ながら密度が濃くさりげなく身を揺らしてくれる。オルガンの音色もチージーではなく、控えめなかっこよさ。目立たないフルートもいい。 

🅶バッキー白片とアロハ・ハワイアンズ (編曲: バッキー白片) 22/3/26

一気に南国の夜に引き込むバッキーの真髄。イントロだけだと曲が判断しづらい。最後に明るく決めてしまうところも憎めない。

🅷アート・ポップス・オーケストラ (編曲: 柳田六合雄) 22/4/5

名門ファイブ・サンズの録音をクレジットを変えて引用。怪しいアルバムだけど、これもビジネスだったのだろう。さすがに67年以前の色が濃いグルーヴ感だ。

🅸尾田悟/ザ・サウンズ・エース (編曲: 池田孝) 22/4/24

これも場末感とグルーヴ感が両立しているが、Bメロでノリが淡白になるのがちょい惜しい。右側で頑張りすぎているギターは好夫っぽいが、ジャズ色が強く現出する部分もあるので違う人かも。

🅹ジョージ高野とパーフェクト・サウンド・グループ (編曲: 福山峯夫) 22/5/17

ミノルフォンだけど福山峯夫アレンジ、いやいとう盤のノリがミノルフォンに近かったので意外でもない。このヴァージョンはAメロ4小節目を筆頭に、ベースが迷い気味なのがちょっと減点。 

🅺ユニオン・シンギング・オーケストラ (編曲: 池田孝) 22/11/10

🅸のアレンジがベースになっているが、こちらはブラスアンサンブルを全面に出してより洗練された感覚。Bメロにもそこまでだれた感じはない。ホーンが敷き詰められた効果が確かにある。

🅻筒美京平とクール・サウンズ (編曲: 筒美京平) 22/11/11

上に貼ったキングヴァージョンに比べると実験的感覚が出ている。Aメロを2回繰り返してBメロに行くところに筒美意識が。フルートやヴァイブも、他のヴァージョンでの使われ方とカラーが違うし、チューニングが揃ってないように聞こえるのもかえって幻想的。このヴァージョンもサブスクにあります。 

🅼レオン・ポップス (編曲: 石川皓也) 22/11/21

自社ながらせこい始まり方だなと思っていたら、エレガントなストリングスに包まれる。Bメロで『ゴーゴー・タンゴ』ヴァージョンであることにやっと気付かせてくれる。せこいフルートだが、音色がとてもいい。 

🅽テディ池谷クインテット (編曲: テディ池谷) 22/11/26

R.E.M.の「スタンド」かと思わせるイントロから、今回最速テンポのラテングルーヴへと引き込んでゆく。ピアノを完全に左右に分けて2重録音するスタイルが斬新。

 

以上、14ヴァージョン(14枚収録)。どれもいいけど🅳が意表を突いていて優勝だな。