黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

紅白歌無TOP40・第28幕

前作の勢いに乗って意外なほど多くのヴァージョンを稼ぎました。リアルタイムでの印象が全くなかったのに…(汗)

 

12位

さすらい人の子守唄

歌: はしだのりひことシューベルツ

作曲: 端田宣彦

作詞: 北山修

編曲: 青木望

69年6月1日発売/オリコン最高位17位

 

🅰山下三夫/阿部源三郎、テイチク・ニューサウンズ・オーケストラ (編曲: 山倉たかし) 21/4/2

「万物こんなにこんなに愛してるの法則」に則っての山倉アレンジの妙味が楽しめる。チージーなオルガンもしっかりハマってノスタルジック。

🅱いとう敏郎と’68オールスターズ (編曲: 福山峯夫) 21/8/2

フォーク色を脱しての場末サウンドながらビート感を強調。そろそろニュービートが始動するという予感を漂わせたのかも。

🅲バロック・メイツ+スィンガーズ・スリー (編曲: 小川寛興) 21/10/3

「メロディ・フェア」が始まりそうなイントロから高貴なバロックワールドに誘う。2番に行くかと思わせたところでいきなりプログレ色が…このヴァージョンにはシンガーズ・スリーは登場しない。

🅳クイーン・ノート (編曲: ミッチー・シモン) 21/11/13

自社らしい忠実なイントロからオルガンによる分厚い音の壁に誘う。恐らく横内章次がギターを弾いているのでは。ブルー・ドリーマーズとクイン・ノートの間には、結構相互作用があったはず。間奏でシューベルトの子守唄が出てくるのは、ニヤリとさせるサービスだが、おまけに「風」まで最後に入れてきた。

🅴横内章次 (ギター)/ブルー・ドリーマース (編曲: 横内章次) 22/1/7

案の定、こちらにもクイン・ノート色の濃いオルガンが…ただ、アレンジ的には🅳と明確にカラーが違うのだ。東芝の懐の深さというのは、こういう所にある。

🅵藤田都志/久保茂、上参郷輝美枝/山内喜美子/杵屋定之丞、杵屋定二/テイチク・レコーディング・オーケストラ (編曲: 山田栄一) 22/1/8、22/3/26

この和風サウンドが来るとやっと「異次元」のイメージに達するのだ…幻想の世界色が濃いながら、そこまでの劇的違和感はなく、穏やかなサイケデリアを感じられる。三味線のフレージングだけは確かに妙な感じがするが…

🅶木村好夫とザ・ビィアーズ、堀口博雄/トミー・モート・ストリングス・オーケストラ (編曲: 小谷充) 22/2/18

意図的に開放弦を鳴らしてのプレイを入れたイントロに大胆な色を感じ、重厚なストリングスを従えて好夫ギターが踊り始める。オリジナルの雰囲気と比べると、やはり相当冒険色が漂うアレンジだ。特に2番からの転調がヤバすぎ。

🅷広瀬三喜男 (編曲: 林一) 22/3/21

意識的に「風」のテイストに近づけたイントロ、ハーモニカも素朴な音色で盛り上げる同好会色濃いヴァージョン。

🅸吉岡錦正、吉岡錦英/テイチク・レコーディング・オーケストラ (編曲: 福島正二) 22/3/28

イントロをピアノで演って、ちょっと高貴な色を出したと思ったら、例の如く大正琴であっち側の世界へ。懸命なプレイが素朴な曲調から浮き上がった印象で、やはりサイケっぽい響きも。

🅹ザ・フォークセレナーダス・プラス・ストリングス (編曲: 近藤進) 22/3/30

こちらは🅷以上に同好会色が濃く、ギターの素朴な音だけでなんとか組み立てたイメージ。やはりハーモニカが色付けとして使われている。このサウンドで「こんなにこんなに愛してる」を聴いてみたいものだ(汗)。

🅺益田のぼるとパーフェクト・サウンド・グループ (編曲: 福山峯夫) 22/6/2

サックスも入る正統派歌無歌謡のサウンドを背に、ギターが素朴に歌う。チージーなオルガンの入れる茶々が他のヴァージョンにないテイスト。

🅻ユニオン・ニュー・ポップス・オーケストラ (編曲: 池田孝) 22/11/4

スローにムーディに始まって、どう展開するのかと思ったらそのまま、ムーディなスウィングに導かれる。一聴して「今宵踊らん」の世界かと思わせるが、色気なしのゴージャスさはやはり歌無歌謡の王道。

🅼グリニッチ・ストリングス (編曲: 石川皓也) 22/11/8

素朴に薄い音で始まり、次第にストリングスが被さっていってドラマティックに展開していく。この名義ならではの場末色薄い感触はしっかり健在。

🅽テディ池谷クインテット (編曲: テディ池谷) 22/11/26

通常のイントロから小粋なラウンジ系サウンドへ。庶民性が希薄なこの響きが意外に違和感を感じさせない。

🅾有馬徹とノーチェ・クバーナ (編曲: 小泉宏 or 今泉俊昭) 22/11/27

ヤバすぎるアルバム『恋の奴隷』のラストをフレンドリーに飾る、全楽器が個性を発揮してのヴァージョン。危険なグルーヴを最小限に抑えながら、高度なアンサンブルを堪能させてくれる。生温さがないのがノーチェの魅力なんだな。

🅿︎松浦ヤスノブ、テイチク・ニュー・サウンズ・オーケストラ (編曲: 山倉たかし) 23/11/13

6つ目のテイチクヴァージョン。涼川テイスト全開の山倉サウンドに乗せて舞いまくるヤスノブテナーに、意外にも文学少女色が滲み出ている。目まぐるしくフィーチャー楽器を変えての2番がマジカルすぎる展開。

『テナー・サックスによる 天使のスキャット

🆀ヒット・キット・アイランダース (編曲: ?) 23/11/29

フルートに導かれてのトロピカルサウンド。この音から何故か漂ってくるのは鮫が娘を食う光景…まぁ、解る人にはわかりますよね。

 

以上、17ヴァージョン (18枚収録)。参考までに↓。「恋にゆれて」からも繋げますよね(汗)。