元が洋楽のため、「歌謡フリー火曜日」で語ったアルバムから2ヴァージョンが援護射撃しました。
15位
別れの朝
歌: ペドロ&カプリシャス
作詞・作曲: Joachim Fuchsberger、Udo Jurgens
訳詞: なかにし礼
編曲: 前田憲男
71年10月25日発売/オリコン最高位1位 (4週)
オリジナル: ウド・ユルゲンス (「夕映えのふたり」)
71年11月10日日本盤シングル発売/オリコン最高位17位
🅰MCAサウンド・オーケストラ (編曲: 土持城夫) 21/4/10、22/1/10
MCAのコンソールアルバム2作にまたがって収録されているため、第1作の段階で強固なサウンドポリシーが築かれていて、そのスタンスを第2作でも保っていることを証明した1曲。オリジナルの良さを生かしながら、若干ノリがよくなっている。左側にいるディストーションギターの気まぐれさがなかなか効果的。ライバル、セルスターズ仕事でブイブイ言わせた土持氏の熱い眼差しが窺える。
🅱チコ菊池とイージー・ライダーズ (編曲: 舩木謙一) 21/6/13
イントロからダイナミックなドラムで爆走。密度の濃いサウンドはMCAのアルバムから受け継がれたものだろう。ベースも爆裂。意識的にギターを排除したところも効果的。「雨」を聴くまでは、『流行歌ヒット年鑑』で最大の衝撃を感じたヴァージョンだった…イージー・ライダーズのフルアルバムはもはや4000円越え当たり前なので、安く買えがちなこの2枚組は救い。
🅲西村ユリ (編曲: 西村ユリ・クニ河内) 21/8/10
天才少女のリリシズムが炸裂。控えめに支えつつ派手さを時折見せる寺川・石川リズムセクションに乗せて、淡々と鍵盤を弄る。恐らくダビングはしてないはず。狂気の極み「心の扉をあけよう」と好対照なお嬢様イズムは、ジャケットのイメージそのもの。
🅳三笠輝彦/ブリリアント・ポップス77 (編曲: 穂口雄右) 21/8/22
オーソドックスなアレンジながら、サックスの咆哮でちょっと下世話な方向に導いている。ギターを敢えて派手な方向に持っていってないところとか、隙間を埋めるオルガンなど、穂口さんならではの意表のつき方が伺えるし、地味ながら完成度の高いオーケストレーション。
🅴奥田宗宏とブルースカイ・ダンス・オーケストラ (編曲: 岩井直溥) 21/9/11
チーク向きになっていると思いきや、スインギーで乗れる。ベースも全然イケイケではない2つ打ちプレイで、いかにも全世代対応。これが「今宵踊らん」だ。
🅵マーキュリー・メモリアル・サウンズ・オーケストラ (編曲: ?) 21/10/19
珍演「ブラック、ドッグ」で悪名高い洋楽カバー盤よりの1曲。カプリシャス色がない、原曲通りBメロへの道のりが長い構成になっているが、マーキュリーのレーベルカラーのせいでしっかり「マイナー歌のない歌謡曲」になっているのだ。そのBメロでベースが全然自己主張せず、異常に低い音に走っているのがいかにも、地方ビッグバンドという感じ。しかも音量でかいし。エンディングも鄙びた駅前キャバレーの雰囲気だ。
🅶前川元/堀口博雄とエマンストリングス (編曲: 竜崎孝路) 21/11/22
マーキュリーと比べると同時期のローヤルは実に気合の入ったサウンド。下世話さも取り入れつつ、原曲の洗練されたタッチをしっかりキープしている。その割にアルバムの演奏者クレジットはいい加減になっているが…
🅷木村好夫とオーケストラ (編曲: ?) 21/11/26
フォークをテーマにしたアルバムにサービスのように入れられたヴァージョンだが、全然フォークっぽいニュアンスがない、洗練されたポップサウンド。誰の仕業か読めないところがいかにもRCAだが、響き的には最初の2つのビクターサウンドに共通するもの。サイドギターもディストーションをかけず、好夫節で統一しているのに意地を感じる。
🅸マーキュリー・スタジオ・オーケストラ (編曲: ?) 22/1/25
🅵とは別ヴァージョンとなっていて、こちらはカプリシャスに準じたアレンジ。せこいところはよく似ているけれど、ギターに気まぐれ色が出ていたり、ピアノが自己主張したりしていて、むしろこっちの方が洋楽色が濃いのではないか。ベースが控えめな音量だが、こちらの方はより行き先を見失ったプレイになっている。なんかおかしいと思った原因は、Bメロのストリングスなんだな。追い討ちをかけるようにエンディングのトランペットも。シャープとフラットをはっきりさせてよ…
🅹前田憲男とそのグループ (編曲: 前田憲男) 22/3/20
いきなり相当アヴァンギャルドなオープニング…そして、クラリネットをフィーチャーしてのスインギーな演奏へ。ディストーションギターもアコーディオンに置き換え。ヴァイブも間奏で炸裂している。そして終盤、一瞬大爆走モードへ。オリジナルアレンジャーがここまで気前よく破壊している例は、恐らく他にないだろう。
🅺北村英治/ビクター・オーケストラ (編曲: 近藤進) 22/4/22
こちらもガチジャズで迫るかと思いきや、通常のアレンジで演っているが、さすが職人のプレイだけあって物凄く説得力が高い。さわやかな女性コーラスと共に耳をとらえる、異様なエフェクトギターは何者なのだ…モーグかと思ったじゃないか…
🅻山内喜美子 (編曲: ?) 22/4/23
イントロなしでいきなり琴が語り始める。テンポも若干落としており、これこそが「癒し系」ヴァージョンの極み。サウンド全体も抑え気味。テイチクであれば、間奏でアドリブしたり、より実験的な演奏に走ってたかもしれないが、この淡々さはセッション終盤という色を匂わせている。ラスト、間違って1小節早く弾き始めたところが絞られていないのにお茶目さを感じてしまう…本人、確認する余裕もないほど忙しかったんでしょうな…
🅼木村好夫/コロムビア・ニュー・ビート (編曲: 河村利夫 or 土持城夫) 22/5/1
例のヤバい『’72ヒット曲要覧』に於いては緊張感が緩まるひととき。リズムセクションのシャープな響きは荒川仕事を継承するものだが、ベースのフレーズなんかはかなり抑えている。好夫ギターも通常の好夫節という感じで始まり、2番を過ぎると結構本領発揮に走る。
🅽こだまたかし/ワーナー・ビートニックス (編曲: 原田良一) 22/11/16
思えばワーナーは自社しかも自レーベルだし、力が入るのも当然(何故か市原ヴァージョンをまだ手に入れてない…)。おとなし目に始まった口笛がBメロで超高周波攻撃に転じ、Aメロ繰り返しでレズリー処理されて幻想的世界に誘う。そこで終わるわけですよビートニックスだから…
🅾ありたしんたろうとニュービート (編曲: 福山峯夫) 22/11/25
普通のイントロで始まりながら、歌い出しで加速してロックンロールに転じる。キーボードを中心に派手なサウンドになっているが、堅実なリズムセクションでドラムのパターンを微妙に変えている。最後の長いドラムソロがオーディオシステムの性能を試す。
🅿︎ツゥイン・ギターズ/ワーナー・ビートニックス (編曲: 原田良一) 23/6/23
こちらも口笛盤のオケをベースにギターに置き換えたヴァージョンになっていて、通常のギターとマイルド気味のディストーションの絡みがアンバランスな響き。ツゥイン・ギターズ向きにするなら、もっと大胆なアレンジを期待してしまうのに…
以上、16ヴァージョン (17枚収録)。いいヴァージョンが多いのだけど、意表を突くという点では🅹と🅾の一騎討ちですな。