黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

井上博さん (シューベルツ)の誕生日は7月27日

テイチク SL-1287

歌のない歌謡曲 “ベスト・ヒット12” 恋の奴隷

発売: 1969年10月

ジャケット

A1 恋の奴隷 (奥村チヨ) 🅺

A2 星空のひとよ (鶴岡雅義と東京ロマンチカ) 🅲

A3 或る日突然 (トワ・エ・モワ) 🅾→3/26

A4 港町シャンソン (ザ・キャラクターズ) 🅷

A5 恋のなごり (小川知子) 🅸

A6 粋なうわさ (ヒデとロザンナ) 🅻

B1 雲にのりたい (黛ジュン) 🅶→3/26

B2 青空にとび出せ (ピンキーとキラーズ) 🅲

B3 愛して愛して (伊東ゆかり) 🅷→3/26

B4 禁じられた恋 (森山良子) 🆂

B5 大空の彼方 (加山雄三) 🅴→3/26

B6 さすらい人の子守唄 (はしだのりひことシューベルツ) 🅾

 

演奏: 有馬徹とノーチェ・クバーナ

編曲: 小泉宏、今泉俊昭

定価: 1,500円

 

昨日予告した2曲も含む、3月26日取り上げた『コンピューターが選んだヒット歌謡ベスト24』に抜粋された4曲を聴いてぶったまげ、それらの原典となったこの盤の出現を切望したら、その数ヶ月後あっさり我が手に。切望はしてみるものですが、ウォンツリストとか無闇にこしらえるのも考えものですね。異常に値が張る現象に直結しそうだから。

「君のノーチェ&クッバーナのその~のせいだよ」なんて呑気に歌ってたこともありますが、ノーチェ・クバーナという看板に第一印象を固定しちゃいけないんですよ。名門ラテン・バンドという表の看板に加え、最初の「歌謡フリー火曜日」で取り上げた2枚組に入っていた「メタル・グルー」の、正にぬるぬる維持中(?)なサウンドの印象が強くて、ストロングなサウンドが溢れ出てくるイメージを抱きづらかったわけです。と言えども、あの山倉たかしを輩出したバンドでもあるから、なめちゃいけません。67年の『二人の銀座』は、まだまだスタンダードなラテン基調のサウンドから抜け出ていない印象もあったので、先の4曲にはぶっ飛ばされたとしか言えないのです。追い討ちをかけるように、これの1曲目「恋の奴隷」がぶっとい衝撃を与えてくれた。

16日前に取り上げた筒美京平ヴァージョンが、「さらばシベリア鉄道」を予感させるような北国への旅路路線でアルバムのラストを飾っていたのに続けてこれを流したら、同じ楽曲であるのが信じがたい。ホーン・セクションが自由自在に入り乱れる、正にジャズ・ファンクの極致で、試されてるとしか思えない境地に一直線。ジャケットの思わせぶりさまで含めて、奥村チヨ盤が健全に思えてしまう危険なワールドだ。一転して、ソフトなボサノヴァ・タッチの中始まる「星空のひとよ」では、増田馨のフルートが色っぽく迫る。アヴァンギャルドな間奏は正に異星とチャネリングしている如し。山倉氏さえ、ここまでは思いつかなかったのではないか。「或る日突然」はオリジナルのエレガントさを、ストリングスまで加えてより増幅。「粋なうわさ」バスクラリネットや複数のフルートを動員し、筒美ヴァージョンに負けず劣らずの快作に仕上がった。しかし、こんな冒険的なA面でさえ、まだ序の口。B面で完全にやられる。

奇数曲は『コンピューター~』に流用されたが、やっぱ「雲にのりたい」の破壊力は凄まじく、両面トップでここまでの仕打ちを受けた鈴木邦彦先生の胸中は如何なるものだったのだろうか。「青空に飛び出せ」は半端ない加速ぶりで相当のハードコア化。しかし、最も過激なのは「禁じられた恋」だ。基本的アレンジは完璧にオリジナルに沿っているが、それを踏まえてのサウンドの組み立て方は相当クレイジークラリネットを軸にしたブラス・アンサンブル、ベース・ラインを忠実に奏でるバスクラに度肝を抜かれ、主旋律を奏でるフリーキーな音は一体なんなのだろう…ソプラノサックスを速回ししたように聞こえるし、なんか電子音的な響きをまとっている。そして律儀にキハーダも鳴る。クラウンの大正琴ヴァージョンに匹敵する、この曲のいけない側面を見せられたような気がする。全員一丸となった暖かい演奏の「さすらい人の子守唄」で幕。

バンドメンバーのクレジットもあり、重要人物である池田孝・ジョーヤ増渕両名が離脱したのを除くと、『二人の銀座』の時点とほぼ同じである。『コンピューター~』の4曲に添えられた個別クレジットから推測すると、過激なアレンジを施したのがピアノの小泉宏、ストリングスを加えての比較的手堅いアレンジを手掛けたのがトランペットの今泉俊昭という分担が成されているはずだ。この路線のノーチェのアルバム、まだあるのだろうか気になる…

小田啓義さん (ブルー・コメッツ)の誕生日は12月23日

コロムビア JPS-5190

華麗なるピアノ・ヒット14 雲にのりたい/天使のスキャット

発売: 1969年10月

ジャケット

A1 雲にのりたい (黛ジュン) 🅺

A2 禁じられた恋 (森山良子) 🆁

A3 白いサンゴ礁 (ズー・ニー・ヴー) 🅸

A4 さすらい人の子守唄 (はしだのりひことシューベルツ) 🅽

A5 或る日突然 (トワ・エ・モワ) 🆄

A6 港町シャンソン (ザ・キャラクターズ) 🅶

A7 愛して愛して (伊東ゆかり) 🅻

B1 天使のスキャット (由紀さおり) 🅵

B2 フランシーヌの場合 (新谷のり子) 🅻

B3 涙の糸 (ジャッキー吉川とブルー・コメッツ) 🅴

B4 粋なうわさ (ヒデとロザンナ) 🅺

B5 涙のびんづめ (伊東きよ子)

B6 七色のしあわせ (ピンキーとキラーズ) 🅽

B7 涙の中を歩いてる (いしだあゆみ) 🅼

 

演奏: テディ池谷クインテット

編曲: テディ池谷

定価: 1,500円

 

「愛して愛して」「雲にのりたい」は、やたら歌無歌謡アルバムのタイトルに採用されがちな曲だ。今振り返ってみれば、比較的地味でアーティストの代表曲とは言い難い曲だし、後者が長山洋子にカバーされてからも36年経っているし…大衆的物差しからすれば、お客さんを引き寄せやすい効果があったんでしょうとしか推測できない。前者は今日取り上げる盤で12ヴァージョン目、後者も11ヴァージョン目である。この頃がやはり、歌無歌謡史上最も激しい激突が起こった時期と言えそうだ。

クラウンの『あなたと夜とミュージック』シリーズでお馴染みテディ池谷氏がコロムビアに残した、同一路線ながら多少洗練度を高めた1枚。筒美京平氏の『ヒット・ピアノ・タッチ』に真っ正面から挑んだ、ガチながらも癒しの要素を感じさせるアルバム。ラテン・サウンドを基調に、ホテルの最上階のラウンジのムードを充満させる音作りに、大ヒット曲のメロディーがすっぽりはまる。これは車の中で聴いちゃいけない音楽だ。SSS方式の恩恵を受け、ピアノのサウンドは完璧にステレオ対応、臨場感が抜群。息吹きまで伝わってきそう。「禁じられた恋」もこじんまりまとまっているなと思いきや、キハーダはちゃんと使っているし、「白いサンゴ礁もラウンジに冴える巨大な水槽の図が思い浮かぶ演奏だ。「或る日突然」に至っては、これで21ヴァージョン目…各レコード会社に2ヴァージョン以上、確実に存在した計算になる。筒美ヴァージョン以上に突っ走っている「粋なうわさ」は意外。どの曲も高貴さを漂わせながら、ちゃんと歌謡の強靭な基本に誘ってくれる好解釈だ。こんな演奏を、昨今の若手ガチ勢は果たして聴かせてくれるんでしょうか…それはそれで、間違った類の聴衆しか獲得しかねないけれど(瀧汗)。

さて明日は、いよいよ冒頭で述べた2曲に過激な解釈を加えたあのアルバムが遂に登場します…乞うご期待。

松尾ジーナさんの誕生日は4月25日

クラウン GW-7025Q

フレンズ ドラム・ドラム・ドラム

発売: 1972年3月

ジャケット

A1 ともだち (南沙織) 🅺

A2 フレンズ (平山三紀) 🅳

A3 別れの朝 (ペドロ&カプリシャス) 🅾

A4 愛の架け橋 (ヒデとロザンナ) 🅲

A5 幸福への招待 (堺正章) 🅴

A6 ハチのムサシは死んだのさ (平田隆夫とセルスターズ) 🅹

A7 かもめ町みなと町 (五木ひろし) 🅺

B1 雨のエアポート (欧陽菲菲) 🅽

B2 雪あかりの町 (小柳ルミ子) 🅻

B3 ちいさな恋 (天地真理) 🅽

B4 さすらいの天使 (いしだあゆみ) 🅺

B5 終着駅 (奥村チヨ) 🅻

B6 気ままなジーナ (松尾ジーナ)

B7 愛する人はひとり (尾崎紀世彦) 🅺

 

演奏: ありたしんたろうとニュービート

編曲: 福山峯夫

定価: 2,000円

 

これは相当前から持っていたけれど、うっかりしていて昨年提供用のデータベースに入れ忘れていたものである(汗)。派手な1枚故、印象に残りやすいはずなのだけど、何せいろんな歌無盤を聴いてるだけに、記憶がややこしくなることもあって。まぁ同じものを2枚買うよりはいいでしょう、ここでスルーする程度なら(瀧汗)。

72年は各社4チャンネルレコード発売に力を注ぎ始め、歌無歌謡界でも顕著に実験が行われた。カッティングと再生に特殊なプロセスを要するCD-4方式は未だに敷居高いとは言え(価格も2,500円まで跳ね上がるケースが多い)、特殊エンコード方式を使うとはいえ、通常のステレオと同様のマスター制作が可能なSQとかRM方式のレコードは、それなりに今でも楽しめる。熱心なマニアのように4chデコーダーまで用意しなくとも、質の良いステレオで再生した音源をそのままヘッドフォンで聴くだけでも、昨今流行りの「空間オーディオ」に通じる立体的な響きがなんとなく味わえるし、演奏の質がいいとメリットも伝わりやすい。でもやっぱり、4つのスピーカーが置かれた喫茶店で聞くのが一番お似合いだろうか。

クラウンでも通常より500円高い7000番台で、何枚か4チャンネルレコードがリリースされたが、中でもありたしんたろうの盤は、そのダイナミズムが執拗に強調され聴き応え充分。72年の大ヒット曲が集結して、いつものような爆走ドラムで飾り立てられるこのアルバムも、従来の場末グルーヴから一歩前進し、4チャンネルで畳み掛ける大胆なサウンドが満載。のっけから「ともだち」「フレンズ」の連発とは気が利きすぎ!各種パーカッションをちりばめながら、いつも以上に激しく弾けている。「別れの朝」は普通に始まったと思わせておいて、いきなり爆裂、疾走するラテンロック化。ラスト近くのデリケートなドラムソロが、貴方のステレオシステムの忍耐力を試す。「愛の架け橋」はグラス・ルーツと「太陽にほえろ!」を結ぶミッシング・リンクのようだし、まったりした口笛盤を聴いた後だと「幸福への招待」も刺激的すぎる。「ハチのムサシは死んだのさ」は、なぜか「真赤に燃えてる」の部分が針飛びしたようにすっぽり抜け落ちており、写譜した際にエラーでもあったのだろうか。この手のチョンボが時々あるのも、慌ただしい歌無歌謡界ゆえに責められません。筒美作品8曲から、カルトな「気ままなジーナ」に至るまで、ダイナミズムの限界に挑む爽快な演奏が聴ける。ドラムの次に目立つ楽器が電気ハープシコード(?)というのもそそる1枚。ただ、「優れた再生音の追求を目的に開発された超薄型レコード」の効果はあったんでしょうかね。重量盤が重宝される今聴くと、一部パーカッションの音に押しつぶされた印象が感じられてしょうがないんですけど。経年もあるから仕方ないのですけどね。

鳥塚しげきさんの誕生日は3月23日

東芝 TP-7199

ブルー・シャトウ

発売: 1967年

ジャケット

A1 ブルー・シャトウ (ジャッキー吉川とブルー・コメッツ) 🅳

A2 恋のハレルヤ (黛ジュン)

A3 センチメンタル・シティ (ジャッキー吉川とブルー・コメッツ)

A4 太陽の翼 (ザ・スパイダース) 🅱

A5 小さな倖せ (ザ・ワイルド・ワンズ)

A6 何処へ (ジャッキー吉川とブルー・コメッツ)

B1 夕陽が泣いている (ザ・スパイダース) 🅳

B2 野バラ咲く路 (市川染五郎) 

B3 青い渚 (ジャッキー吉川とブルー・コメッツ)

B4 熱い砂 (ザ・ヴァン・ドッグス)

B5 夕焼けの砂浜 (トニーズ)

B6 想い出の渚 (ザ・ワイルド・ワンズ) 🅵

 

演奏: ザ・ヤング・ビーツ

編曲: 無記名

定価: 1,500円

 

ほぼGS曲縛りのインスト盤としては、最も早いリリースではないかと思われる1枚。この名義のリリースは謎が多くて、少なくとも6枚東芝にアルバムがあるのが確認されているが、アレンジャーが複数関わっていて(筒美京平まで!)、素性が読みづらい音。この盤にはアレンジャーの記載がなく、解説文も皆無だが、同じ名義でビクターのグローブ・レーベルがついた盤が通販のボックス・セットに入れられた例もあり、そこでは小谷充が演奏にも関わり(「ギター」というクレジットが怪しいが)、多少派手にはなっているものの、ほぼ同じ質感のサウンドが聴かれる。選曲もこの盤の続きという感じのGS特集になっているし。いずれにせよ音楽的にはGS色濃厚で、スウィング・ウエストあたりのインスト盤と殆ど変わらない。ただ演奏が職人的というだけで、もう立派なGSのレコードにしちゃっていいでしょう。どうやらギターは神谷正行氏の模様。冒頭の「ブルー・シャトウ」から飛ばしに飛ばすし、瞬時ゴーゴー喫茶の雰囲気が蔓延。「太陽の翼」あたりで顕著になるけど、ベースが不安定なのだけが弱点で、どの曲も突っ走った演奏。B面にいくつかあるフォーク色の濃い曲にも躍動感が加わり、海の家で爆音で流れるとめちゃキマりそうだ。特に「熱い砂」は選曲も含めてアガる。「何処へ」鄙びた感じがいいアクセントとなっているし。「想い出の渚」にはさりげなく「ドント・ウォリー・ベイビー」色が入り、いい幕引きだ。全体的に転調をアクセントにしたアレンジは、やはり小谷充氏だろうか。

ここまでサックスがはりきっているのに、意外に場末感がないのも不思議で、やはりGS時代の曲にはマジックがある。何より、この全体の音像そのものが魅力的。ニー・ショップスとかファイブ・サンズとか、この手の和製ポップスの曙的なインスト盤の放つオーラは意外となめられないですよ。ただ、崇めすぎて買えない値段になることは避けたいものです。躍動感のないジャケットはいかにもGS喧騒前夜という感じだが。

今日は石田ゆりさんの誕生日なので

大映 G-4007

New Hits In Winter 女は恋に生きてゆく

発売: 1971年1月

ジャケット

A1 女は恋に生きてゆく (藤圭子) 🅳

A2 男と女の数え唄 (日吉ミミ) 🅳

A3 美しいものたちよ (ベッツイ&クリス)

A4 悲しみのアリア (石田ゆり)

A5 昭和おんなブルース (青江三奈) 🅴

A6 貴方をひとりじめ (和田アキ子) 🅳

A7 愛のいたずら (内山田洋とクール・ファイブ) 🅲

B1 別れたあとで (ちあきなおみ) 🅳

B2 信じてほしい (野村将希) 🅱

B3 愛があるなら年の差なんて (にしきのあきら) 🅲

B4 好きよ愛して (渥美マリ)

B5 さすらい (伊東ゆかり) 🅲

B6 花喰う蟲のサンバ (森山加代子) 🅱

B7 銀座の女 (森進一) 🅵

 

演奏: 吾妻ひさし/ザ・サウンズ・エース

編曲: 須磨あかし

定価: 1,500円

 

コロムビアに配給先を移しての大映レコード「四季シリーズ」は律儀に4枚発売して完結したが、いずれも頻繁に出会えるものではなく、レーベルカラー故に地味に人気を得ているという感じだろうか。第一弾「Autumn」編は電化サックス/フルートを多用したサウンドの独自性で輝きを放っていたが、それに続く第2作がこれ。ちなみに前作では大映レコードのロゴの横でコロムビアのマークが自己主張していたが、今作ではなくなっている。テイチク時代のイメージを拭い去りたかったゆえだろうか。

前作ほどの実験性はないながら、暖かい音場を構築しぐいぐいと音の世界に引っ張っていくけど、決め手となる曲が見つけ辛い。ヴァージョンカウント的にも、多くて6番目だし。「大ヒットの次の曲」にあたるものがいくつかあるけれど、どうしても派手さに欠けるし、となるとやはりスリーパー的な曲に魅力を探すしかない。というわけで、石田ゆりさんが黄昏に初登場です。いしだあゆみの妹として注目を浴び、デビュー曲「悲しみのアリア」は27位とそれなりに健闘を見せたけれど、歌無歌謡界ではそこまでチヤホヤされなかった。こうして聴くと、やっぱ曲がいいよね…慎重なアレンジながらも、聴かせどころがしっかりあって、流石筒美京平だなと。全体的に地味な流れの中に置かれると、逆に際立つ。ユニークな選曲としては、大映の自社推し、渥美マリ「好きよ愛して」が。小悪魔的ムードがまさに本領発揮の一曲で、そんな個性をこの歌無ヴァージョンは殺していない。

激動の時代の隙間をさりげないサウンドで飾り立てる1枚だけど、なんか憎めないのだな。印象的には半分曲が被っているスイング・ビーバーズの『何があなたをそうさせた』とどっこいどっこいだけど。奇しくもそのアルバムを語ったのは、なかにし礼さんの命日のことでした…翌月の23日…

宇崎竜童さんの誕生日は2月23日

CBSソニー SOLT-69~70 

歌謡ワイド・ワイド・スぺシャル '75~'76ベスト歌謡ヒット

発売: 1975年11月

ジャケット

A1 私鉄沿線 (野口五郎)Ⓐ 🅳→2/24

A2 湖の決心 (山口百恵)Ⓐ 🅴→2/24

A3 花のように鳥のように (郷ひろみ)Ⓐ 🅲→22/4/14

A4 ひとり歩き (桜田淳子)Ⓑ 🅳→2/24

A5 白い部屋 (沢田研二)Ⓐ 🅲→2/24

A6 哀恋記 (五木ひろし)Ⓑ 🅲→2/24

A7 哀愁のレイン・レイン (チェリッシュ)Ⓐ 🅳→2/24

A8 愛のアルバム (天地真理)Ⓑ 🅲→2/24

A9 年下の男の子 (キャンディーズ)Ⓑ 🅲

A10 我が良き友よ (かまやつひろし)Ⓑ 🅱→21/5/10

B1 22才の別れ (風)Ⓑ 🅰→21/5/10

B2 昭和枯れすすき (さくらと一郎)Ⓐ 🅷→21/11/15

B3 夏ひらく青春 (山口百恵)Ⓑ 🅴

B4 十七の夏 (桜田淳子)Ⓑ 🅵

B5 この愛のときめき (西城秀樹)Ⓐ 🅳→2/24

B6 やすらぎ (黒沢年男)Ⓒ 🅲→8/20

B7 哀しみの終るとき (野口五郎)Ⓑ 🅳→22/4/14

B8 誘われてフラメンコ (郷ひろみ)Ⓒ 🅱→8/20

B9 心のこり (細川たかし)Ⓒ 🅵→21/11/3

B10 港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ (ダウン・タウン・ブギウギ・バンド) 🅳

C1 シクラメンのかほり (布施明)Ⓑ 🅲→21/5/10

C2 夢よもういちど (真木ひでと)Ⓑ 🅱

C3 夕立ちのあとで (野口五郎)Ⓐ 🅲→8/20

C4 ささやかな欲望 (山口百恵)Ⓐ 🅱→8/20

C5 天使のくちびる (桜田淳子)Ⓐ 🅲→8/20

C6 想い出まくら (小坂恭子)Ⓐ 🅲→8/20

C7 ロマンス (岩崎宏美)Ⓐ 🅳→8/20

C8 別れの接吻 (森進一)Ⓑ 🅱→8/20

C9 時の過ぎゆくままに (沢田研二)Ⓑ 🅲→8/20

C10 人恋しくて (南沙織)Ⓐ 🅳→8/20

D1 北へ帰ろう (徳久広司)Ⓐ 🅶

D2 ふたりの旅路 (五木ひろし)Ⓐ 🅲→8/20

D3 中の島ブルース (内山田洋とクール・ファイブ)Ⓐ 🅳→21/11/3

D4 面影 (嶋崎由里)Ⓐ 🅲

D5 センチメンタル (岩崎宏美)Ⓑ 🅶

D6 美しい愛のかけら (野口五郎)Ⓑ 🅵

D7 「いちご白書」をもう一度 (バンバン)Ⓑ 🅲→21/5/10

D8 その気にさせないで (キャンディーズ)Ⓐ 🅱

D9 逢えるかもしれない (郷ひろみ)Ⓑ

D10 お前に惚れた (萩原健一)Ⓐ 🅲

 

演奏: クリスタル・サウンズ

編曲: 矢野立美Ⓐ、渡辺博史Ⓑ、横内章次Ⓒ

定価: 2,600円

 

クリスタル・サウンズの魅力にどっぱまりになった『歌謡ワイドワイドスペシャル』シリーズでは3作目でラストになったレコード。例によって1枚ものからの寄せ集めで、既に紹介した盤と重なりまくっているが、ここで初紹介となる曲はどうやら75年8月新譜(SOLU-46)から持ってこられている模様。いや、「センチメンタル」は時期的にあり得ないし、他にも盤がありそうだが。依然「冬の色」や「はじめての出来事」が入っているはずの盤の情報が手許になくて、その辺まで押さえないと気が済まないのだが、『ワイドワイド』2作目(SOLT-45~46)には入っているのかな。カタログ掲載期間が極端に短くて、そのせいで悶々としてる…

何れにせよ、安心のクリスタル節で40曲、無茶突っ込みながら長旅のお供に最適。のっけから名演「湖の決心」が飛び出すし、これが入っている盤は何枚持ってようが平気。誰でも知ってるレベルの曲なのに、ヴァージョン3つ目とは淋しい「年下の男の子」は流石に慎重にこなしており、エレガントなストリングスが響く中、クリスタル名物の初々しいフルートやヴァイブが舞う。ちょっとメロディーこなしに残念な部分があるのが、穂口さん的には減点かも(汗)。「十七の夏」は3日前のコロムビア盤と似たり寄ったりで、やはりフルートが活躍している。「港のヨーコ~」はどう来るかと思いきや、各楽器のアドリブを生かしたそれほど実験的でないアレンジ。このリフのこなし方、他のどのヴァージョンよりもファイヴ・バイ・ファイヴ “Good Connection” との近似性を浮き彫りにしている。一気にアダルト色を増す2枚目では、「湖の決心」に通じるテイストのアレンジが効いた「面影」が耳をとらえる。といっても、メロトロンは使われていない(汗)が、華麗なストリングスでラブサウンド色濃厚だ。この曲はやはり、東宝スキャットヴァージョンに決定盤ととどめを刺したい。「センチメンタル」も地味なアレンジではあるが、ファンシーな音色のあしらい方に安堵感が。これもやっぱ、東芝の琴三味線ヴァージョンに愛着があるのだよね…終盤にもう一発、キャンディーズの必殺曲「その気にさせないで」が。派手なシンセをフィーチャーして、思いっきり場末のディスコモードに入っている。

『ワイドワイド』1作目の「初恋の味」を再現する曲が「哀愁のレイン・レイン」「天使のくちびる」しかないのがちょい淋しいけど。宇崎さんの作曲家としての躍進まで含む次なるトレンドの到来に向けて、桃色サンゴが手を振る様子が見えてくる2枚組だ。

菅原進さん (ビリー・バンバン)の誕生日は9月21日

キング SKK-510

みんな夢の中 ゴーゴー・タンゴVol.5

発売: 1969年5月

ジャケット

A1 みんな夢の中 (高田恭子) 🅻

A2 華麗なる誘惑 (布施明) 🅵

A3 知らなかったの (伊東ゆかり) 🅶

A4 帰り道は遠かった (チコとビーグルス) 🅵

A5 初恋のひと (小川知子) 🅷

A6 雨の赤坂 (ジャッキー吉川とブルー・コメッツ) 🅵

B1 涙の季節 (ピンキーとキラーズ) 🅻

B2 グッド・ナイト・ベイビー (ザ・キング・トーンズ) 🅹

B3 ブルー・ライト・ヨコハマ (いしだあゆみ) 🅽

B4 七色のしあわせ (ピンキーとキラーズ) 🅼

B5 白いブランコ (ビリー・バンバン) 🆂

B6 だけど愛してる (梓みちよ) 🅲

 

演奏: レオン・ポップス

編曲: 石川皓也

定価: 1,500円

 

颯爽と歌無歌謡黄金律、その極みの69年に戻りましょう。名門レオン・ポップスの地味に盛り上がったシリーズ『ゴーゴー・タンゴ』の5作目。どうやらこれで打ち止めとなった模様で、この盤では最早タンゴに拘った感じもなくなり、躍動感に溢れるリズムで当時のヒット曲を料理。「今宵踊らん」に比べるとずっと若者対応の内容になっているし、弟分(?)のグリニッジ・ストリングスに比べるとある程度の場末感もキープしつつ、当時らしい冒険色が余計出ている。キング歌謡の派手な部分に親しみを覚える人にはたまらない音だろう。何せ、この顔ドアップジャケットが魅惑的だし、タイトルのレタリングもポップ。自社ネタなのに。「涙でいいの」みたいにトレースしただけの題字じゃ面白くないよ。

冒頭から3曲が自社曲で、慎重に扱いつついずれにも独自の色を加えているし、特に「知らなかったの」は大胆。オリジナルのアレンジを尊重しながらも、そこここに独自のタッチが効いていて、中でもレズリーをかましたギターが他にはない味わい。グリニッジのレコードで多用された電気アコーディオンや電気サックスも、あちこちで大活躍している。「帰り道は遠かった」のイントロのエスニックなフルートもドキッとする響きだ。「初恋のひと」でやっと、タンゴらしい展開に入る。B面も6曲中4曲が自社ネタで、「涙の季節」はそれこそタンゴとゴーゴーをチャネリングするアレンジ。「グッドナイト・ベイビー」はスローな部分を丸ごとタンゴに改変する大胆なアレンジになっている。「白いブランコ」はどうするのかと思ってたら、普通に8ビート化。アコーディオンがこそばゆい響きだ。カラフルなサウンドで明るい喧騒を表現する、「何過激なこと考えてんのよ、仲良く踊ろうよ」と語りかけてくる1枚だ。