黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

今日は石田ゆりさんの誕生日なので

大映 G-4007

New Hits In Winter 女は恋に生きてゆく

発売: 1971年1月

ジャケット

A1 女は恋に生きてゆく (藤圭子) 🅳

A2 男と女の数え唄 (日吉ミミ) 🅳

A3 美しいものたちよ (ベッツイ&クリス)

A4 悲しみのアリア (石田ゆり)

A5 昭和おんなブルース (青江三奈) 🅴

A6 貴方をひとりじめ (和田アキ子) 🅳

A7 愛のいたずら (内山田洋とクール・ファイブ) 🅲

B1 別れたあとで (ちあきなおみ) 🅳

B2 信じてほしい (野村将希) 🅱

B3 愛があるなら年の差なんて (にしきのあきら) 🅲

B4 好きよ愛して (渥美マリ)

B5 さすらい (伊東ゆかり) 🅲

B6 花喰う蟲のサンバ (森山加代子) 🅱

B7 銀座の女 (森進一) 🅵

 

演奏: 吾妻ひさし/ザ・サウンズ・エース

編曲: 須磨あかし

定価: 1,500円

 

コロムビアに配給先を移しての大映レコード「四季シリーズ」は律儀に4枚発売して完結したが、いずれも頻繁に出会えるものではなく、レーベルカラー故に地味に人気を得ているという感じだろうか。第一弾「Autumn」編は電化サックス/フルートを多用したサウンドの独自性で輝きを放っていたが、それに続く第2作がこれ。ちなみに前作では大映レコードのロゴの横でコロムビアのマークが自己主張していたが、今作ではなくなっている。テイチク時代のイメージを拭い去りたかったゆえだろうか。

前作ほどの実験性はないながら、暖かい音場を構築しぐいぐいと音の世界に引っ張っていくけど、決め手となる曲が見つけ辛い。ヴァージョンカウント的にも、多くて6番目だし。「大ヒットの次の曲」にあたるものがいくつかあるけれど、どうしても派手さに欠けるし、となるとやはりスリーパー的な曲に魅力を探すしかない。というわけで、石田ゆりさんが黄昏に初登場です。いしだあゆみの妹として注目を浴び、デビュー曲「悲しみのアリア」は27位とそれなりに健闘を見せたけれど、歌無歌謡界ではそこまでチヤホヤされなかった。こうして聴くと、やっぱ曲がいいよね…慎重なアレンジながらも、聴かせどころがしっかりあって、流石筒美京平だなと。全体的に地味な流れの中に置かれると、逆に際立つ。ユニークな選曲としては、大映の自社推し、渥美マリ「好きよ愛して」が。小悪魔的ムードがまさに本領発揮の一曲で、そんな個性をこの歌無ヴァージョンは殺していない。

激動の時代の隙間をさりげないサウンドで飾り立てる1枚だけど、なんか憎めないのだな。印象的には半分曲が被っているスイング・ビーバーズの『何があなたをそうさせた』とどっこいどっこいだけど。奇しくもそのアルバムを語ったのは、なかにし礼さんの命日のことでした…翌月の23日…