黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

今日は山田パンダさんの誕生日なので

ミノルフォン KC-5003~4

最新ヒット歌謡BEST30

発売: 1975年8月

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ジャケット+盤



A1 人恋しくて (南沙織) 🅱

A2 夕立ちのあとで (野口五郎)

A3 シクラメンのかほり (布施明) 🅴

A4 内気なあいつ (キャンディーズ) 🅱

A5 たんぽぽ (太田裕美)

A6 この愛のときめき (西城秀樹)

A7 哀愁のレイン・レイン (チェリッシュ) 🅱

A8 スモーキン・ブギ (ダウン・タウン・ブギウギ・バンド)

B1 はだしの冒険 (アグネス・チャン) 🅱

B2 巴里にひとり (沢田研二) 🅱

B3 22才の別れ (風) 🅱

B4 ひとり歩き (桜田淳子)

B5 東京 (マイ・ペース)

B6 白い部屋 (沢田研二)

B7 夏ひらく青春 (山口百恵) 🅱

C1 千曲川 (五木ひろし) 🅱

C2 心のこり (細川たかし)

C3 ひと雨くれば (小柳ルミ子) 🅱

C4 湖の決心 (山口百恵)

C5 私鉄沿線 (野口五郎)

C6 我が良き友よ (かまやつひろし) 🅲

C7 黄昏の街 (小柳ルミ子)

C8 夜の訪問者 (小川順子)

D1 昭和枯れすゝき (さくらと一郎) 🅱

D2 面影の君 (森昌子)

D3 哀恋記 (五木ひろし)

D4 いつか街で会ったなら (中村雅俊) 🅱

D5 さよなら友よ (山田パンダ)

D6 浮草の宿 (殿さまキングス)

D7 ともしび (八代亜紀)

 

演奏: ブルーナイト・オールスターズ&ストリングス

編曲: 福井利雄、神保正明、斉藤恒夫、矢野立美 (曲別表記なし)

定価: 2,000円

 

やっと初登場、ミノルフォンブルーナイト・オールスターズ。この名義での初リリースは71年で、遅くとも79年までコンスタントに作品をリリース。強烈な芸風を刻印することなく、いい感じで雰囲気作りに徹するその演奏は、74年以降に限ればクリスタル・サウンズの次にお気に入りである。ジャケット的にも女性のポートレイト一辺倒でなく、風情溢れるイラストを採用したり、文字だけという異例の盤があったり、さらに帯デザインにも個性を出したり…いろんな意味でそそる楽団だ。難を言うと、クラウン程ではないにせよ、買いすぎると同じヴァージョンの重複に悩まされることくらいである(爆)。とはいえ、個々のアルバムに最低1曲はユニークな選曲があり、それがたまらないのであるが。

75年のヒット曲を30曲集めまくったこの2枚組。個別アレンジャークレジットの不在が残念ではあるが、他社の同系統盤で腕をふるった面々が大集合。それでいて、ブルーナイトサウンドの色に染まりまくっていて、安心して聴ける。冒頭の「人恋しくて」の乙女心に満ちたフルート、「夕立ちのあとで」でアンニュイな雰囲気を倍増させる鍵ハモとエフェクティヴなギターから強力に引き込まれる…どの曲もソリッドなリズムが底辺を固め、分離のいい録音で引き締まった音を聴かせる。先に挙げた3つの楽器がこのアルバムのサウンドを特徴づけているのだが、特にフェイザー系エフェクトを多用したギターの存在感は強烈で、「ひとり歩き」「私鉄沿線」のイントロで聴ける過剰なその音は滑稽の域に滑り込みかけているし、22才の別れの泥臭さはこの曲の全ヴァージョン中でも屈指だろう。「夜の訪問者」は自社推し枠のレア選曲だが、アレンジ的にはどうってことない。左右に広がりまくるソリーナや緩やかにオートパンする電気ピアノなど、この時期ならではのサウンドも存分に味わえる。