黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

1972年、今日の1位は「太陽がくれた季節」

東宝 AR-1009

最新歌謡ヒット

発売: 1972年6月

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ジャケット



A1 瀬戸の花嫁 (小柳ルミ子) 🅲

A2 ふたりは若かった (尾崎紀世彦) 🅲

A3 純潔 (南沙織) 🅴

A4 浮雲 (坂本スミ子)

A5 結婚しようよ (吉田拓郎) 🅱

A6 お別れしましょう (朝丘雪路)

A7 許されない愛 (沢田研二)

B1 待っている女 (五木ひろし)

B2 恋の追跡 (欧陽菲菲) 🅲

B3 別離の讃美歌 (奥村チヨ) 🅲

B4 太陽がくれた季節 (青い三角定規) 🅲

B5 あの鐘を鳴らすのはあなた (和田アキ子) 

B6 今日からひとり (渚ゆう子) 🅲

B7 愛の泉 (久保義明)

 

演奏: ミラクル・サウンズ・オーケストラ

編曲: 無記名

備考: RM方式4チャンネル・レコード

定価: 1,500円

 

活動期間の短さの割に相当点数のレコードを残し、それなりに好き者の薬指をそそりまくる東宝ラクル・サウンズ・オーケストラ。タイトルも『最新歌謡ヒット』に統一され(プッシュ曲名は帯に大々的に表記されるが)、盤の特徴を定義しづらいのが難ではあるが、ものによってはとんでもない演奏を聴かせてくれたりするし、要注意楽団である。これはAX品番で本格スタートする前のプレデビュー的リリース。大々的に打ち出されていないものの、内ジャケットには4チャンネル録音であることがこっそり明記されており、売り方に迷いがあったことが窺える。1曲目瀬戸の花嫁に針を落とすと、確かに立体的に組み上げられたサウンドの左奥の隅に、例のコンガを撫でる「ムー」という音がどでかく構えており(昨今のアレンジャーにこの音の正体を把握している者がどの位いるのだろうか?)、4chデコードするとよりはっきり聞こえてくるはず。例のカモメ音は、ついでながら入っていない。

編曲者クレジットがないところもまた、売り方に対する迷いを感じさせるけれど、このアルバムで最も呆れるのはA面の曲順に尽きる。浮雲は除くとしても、曲タイトルをこの順番で並べて、果たしていいのだろうか?それを抜きにすると、なかなか聴かせどころを得たアルバムである。「瀬戸の花嫁」や「別離の讃美歌」でリードをとる鍵盤ハーモニカは、この楽器を舐めてもらったら困るよという感情に包まれたナイスな音色。後者なんてブレスも露わだ。「ふたりは若かった」の女性コーラス、「結婚しようよ」アコーディオンなど、さわやかな自己主張がシャープな録音で光り輝く。「待っている女」の間奏はヴァイブで奏でられ、このヘヴィな曲に安堵の色をもたらしているが、エンディングが興醒め。最終曲には自社推し枠を持ってきているが、トワ・エ・モアの同名曲を前に惨敗。いい曲ではあるが。

太陽がくれた季節の最強ヴァージョンが入ったレコードを今日語れなかったのが残念ですが、その辺はスケジュール采配の都合ですからしょうがない。いつか語ります、お楽しみに。