黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

今日はバート・バカラックの誕生日なので

国文社 SKS-102

ギター・ムード

発売: 1976年

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ジャケット



A1 ジャンバラヤ (カーペンターズ)

A2 レイン・レイン (サイモン・バタフライ)

A3 コンドルは飛んでゆく (サイモン&ガーファンクル) 🅲

A4 イエスタデイ・ワンス・モア (カーペンターズ)

A5 雨にぬれても (B.J.トーマス) 🅲

A6 あまい囁き (アラン・ドロン&ダリダ)

B1 シクラメンのかほり (布施明) 🅳

B2 ひと夏の経験 (山口百恵)

B3 哀愁のレイン・レイン (チェリッシュ)

B4 挽歌 (由紀さおり)

B5 二人でお酒を (梓みちよ) 🅱

B6 よこはま・たそがれ (五木ひろし)

 

演奏: ニュー・サン・ポップス・オーケストラ

編曲: Y. Okada (A)、M. Sumi (B)

定価: 2,200円

 

国文社の第2回発売分のうち数枚は、片面洋楽もう片面歌謡曲のカヴァーという方針で制作されたが、それじゃ無茶すぎと悟ったのか、シリーズ完結後内容を組み替え再発売されたケースが4枚あり、今作のA面は『サックス・ムード』のA面と組み合わされ『ゴッドファーザー(愛のテーマ)』(SKS-121)として、B面は同様にB面同士組み合わされて『シクラメンのかほり』(SKS-119)として、それぞれ再発売されている。いずれも、実物を見たことはありません…ということで、当ブログではそれぞれのオリジナル盤を取り上げます。

16チャンネル最新録音超立体音響の効果を生かすべく、タイトなサウンドが終始展開。ギターを主役に据えつつ、カラフルに多彩な音色が盛り上げる。ジャンバラヤは当然カーペンターズ盤が元になったアレンジだが、多重録音のギターに加え、フルートが張り切りまくる。「コンドルは飛んで行く」の冒頭で奏でられる笛はケーナではなさそう。その後、アルトフルート、通常のフルートが絡み、一丸となって爽やかに襲いかかる。どの曲でも、決して出しゃばらず、主題をさりげなくアピールする、ムードメーカーとしてのギターが聴ける。

歌謡サイドではより守りに入った演奏に徹しているが(A面に「レイン・レイン」を、B面に「哀愁のレイン・レイン」をそれぞれ入れたのは確信犯的で笑えるが、この曲はクリスタル・サウンズ盤の圧勝すぎ)、ラストを飾るよこはま・たそがれが鮮やかすぎる。国文社第2回の中でも屈指の名演。

イントロを飾る不思議な音は、アルトフルートとアルトリコーダーのそれぞれの低い音を1オクターブずらして重ねたもの。Bメロではそのまま主旋律を奏で、ますます魅惑的世界へと誘ってくれる。特にリコーダーの録られ方が素晴らしい。このアイディアはもっと実行されてよかった…いくらギターががんばろうが、この曲では完全に脇役。ミノルフォンの「ふるさと」と並ぶ、「歌無五木」の真髄としか言いようがない。