黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

今日は彩木雅夫(新居一芳)さんの誕生日なので

ACE NA-021

大正琴でつづる 演歌の心 

発売: 1974年?

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ジャケット的なもの



A1 夫婦鏡 (殿さまキングス) 🅲

A2 うそ (中条きよし) 🅲

A3 愛の執念 (八代亜紀) 🅱

A4 海鳴り (内山田洋とクール・ファイブ)

A5 北航路 (森進一) 

A6 あじさいの雨 (渡哲也) 🅲

A7 あなたにあげる (西川峰子) 🅲

A8 みれん (五木ひろし) 🅲

B1 女のねがい (ぴんから兄弟) 🅲

B2 さらば友よ (森進一) 🅱

B3 理由 (中条きよし) 🅲

B4 おんなの運命 (殿さまキングス) 🅲

B5 なみだの操 (殿さまキングス) 🅴

B6 しのび恋 (八代亜紀) 🅲

B7 襟裳岬 (森進一) 🅵

 

演奏: グランド・シンフォニー・オーケストラ

編曲: 無記名? (正式ジャケット所在不明につき未調査)

定価: 1,800円

 

放送局発ヒットメイカーの鬼にして、現役最年長ボカロPとして今も健在の彩木さんを称える回。懲りずにマイナーレーベル演歌シリーズなのだが、この盤は見つけた段階で既に謎の入れ物に入れられており、これは当然正式なジャケットではない。ライブラリー管理用と思しき手書きのメモが貼り付けられているが、帯やシングルの歌詞カードを蔑ろにする人が多数いるのは辛うじて解るとして、LPジャケットまでそんな風に扱われる事例があったなんて、やっぱこの国は闇に満ちている…ACEというレーベルは例によってエルム傘下で、歌入りパチ歌謡やパチソン、パチ洋楽のリリースが多数確認されている。というわけで3日連続エルム地獄に迷い込んだわけでございます…

恐らく正式なジャケットを見ても、詳しい演奏者情報が記されているとは思わないのだが、方針としては昨日取り上げた『最新演歌』と同じようなもの。但し、フィーチャーされている楽器はタイトル通り大正琴である。そして、サウンド的にも昨日の盤と打って変わって「正しいエルム道」というか、一気にせこさの度合いを増してしまう。大正琴の演奏アルバムとなると、吉岡錦正・錦英の名がクレジットされるのが常であるが、どうやらここでの演奏はこの二人ではないのが確実と思われるのだ。トップの「夫婦鏡」、いきなりマスタリングミスと思しき音揺れから始まり、怪しさ満点のスタート。フルートは微妙な音量ながら1オクターブ下の音がもろ出てるし(場合によっては萌えるのだけど…汗)、ねーちゃん達のコーラスにも職人感がない(それもある意味萌え要素だが…汗)。そんなイントロに導かれて大正琴が奏でられ始めるが、その演奏に安定感がないのである。16分音符勝負のようなBメロが全然こなせてないし、エンディングで盛り上げようとしてるのも空回りでしかない。いずれにせよエルムクオリティとしか言いようがないのだ。水谷公生&トライブのテンション高い同曲と聴き比べると、一気にずっこけるの確実。続く「うそ」もせこい演奏ではあるけど、Bメロの3~4小節目が無茶に洗練感を出したようなコード使いをしているのが不思議。意図的にそうアレンジしたとなれば、凄いとしか言えない。その部分の大正琴の演奏はもたつき気味だけど。「愛の執念」の間奏にも同じような「これでいいのか」な展開が聴かれる。でも、最近のJ-popの「ストリングス」に比べると、この盤の弦の響きさえ栄養満点な感がありますよ(爆)。

「エルム気質」を探してこの調子で聴き続けると、いくらでも特筆すべき点が見つかりそうだけれど、ほどほどにしておかなきゃね。「あなたにあげる」あたりは妙なバランス感に目眩がしそうだけど。結局安住の地襟裳岬に辿り着いておしまい。ちゃんとチューニングはしましょうね。サビメロで1オクターブ下がって興醒めするし、違うキーでアレンジすればよかったのに。別の既存プロジェクトからオケだけ流用したんだろうなぁ。ストリングスが無駄に張り切ってるけど。やっぱユピテル盤のメロトロンには誰も勝てません(爆)。

一旦ここまで書いたところで、「オケ流用疑惑」を意識して「うそ」を聴きなおしてみたら、案の定。7月25日のJack盤『昭和大演歌』と同じオケを使用していた。しかし、バランスやEQが微妙に違うし、Bメロのコード感覚も好夫ギター・ヴァージョンだと全然印象が違う。「洗練感」を覚えさせたのはまじで大正琴マジックだったのか…ああ、やめられません、歌のない歌謡曲の沼。