黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

1975年、今日の1位は「心のこり」(2週目)

UNI UNI-6011

最新演歌 Song of Japanese Heart 「ENKA」

発売: 1975年?

f:id:knowledgetheporcupine:20210803052544j:plain

ジャケット



A1 別れの接吻 (森進一)

A2 なみだ心 (殿さまキングス)

A3 おまえ (ぴんから兄弟)

A4 考えさせてほしいのよ (西川峰子)

A5 千曲川 (五木ひろし) 🅲

A6 心のこり (細川たかし) 🅴

A7 昭和おぼろ月 (さくらと一郎)

B1 生きてるだけの女 (藤圭子)

B2 はぐれ旅 (高倉健)

B3 女のこよみ (敏いとうとハッピー&ブルー)

B4 あいつ (渡哲也)

B5 ともしび (八代亜紀) 🅱

B6 よる (中条きよし)

B7 北ホテル (内山田洋とクール・ファイブ)

 

演奏: グローバル・サウンド・オーケストラ

編曲: 無記名

定価: 1,200円

 

またもや語りづらい訳わからないレーベルから出た演歌のインスト集だ…UNIといっても、当然ストロベリー・アラーム・クロックとかで知られるあのレーベルとは無関係(爆)。裏のクレジットを見るとしっかり、エルムの社名が刻印されており、一体いくつレーベル持ってたのだあの会社は…タイトルに英語をでかでかと打ち出し、レーベルにも「all about famous music」と銘打っているが、特に海外市場を狙ってたわけでもなさそうだし、だとしたら定価1,200円と明記するわけない(笑)。ハワイあたりでは有難がられたかもしれないけど。女優の卵みたいなのを起用したっぽいジャケットには好感が持てる。

75年中期あたりの最新曲を集めたもので、例によって編曲者クレジットなし、謎が多いけど、エルムものを聴いていて時折感じる、意外性のようなクオリティの高さがここにはある。やっぱり「横須賀ストーリー」なんかを演っちゃうと、あらが目立つのはしょうがないけど、ここでのトップ曲「別れの接吻」を聴くと、ジュリーの「白い部屋」や秀樹の「至上の愛」あたりの歌無盤と聴感が全然変わらないのだ。せこい演歌だろうなという先入観を打ち砕くのである。クリスタル・サウンズあたりがこの曲を演るとなると、同じ心構えでは聴けない(汗)。殿キンやぴんからのこの辺の曲になると、どの歌無盤でもこぞって取り上げられるという感じじゃなくなるけど、後者の「おまえ」の8ビートなのに3拍目にスネアを置いた妙なリズム感覚に、妙な高揚感を覚えずにいられない。エルム盤ということで、既に取り上げたJack盤『昭和大演歌』と被っている千曲川「心のこり」が同じテイクなのかが気になりまくったが、Jack盤はギター(前者はCamel盤『昭和演歌』と同テイク…ああややこし)、こちらはサックスをフィーチャーしており、明らかにテイクが違う。但し、ステレオのポジショニングやリズムアレンジが微妙に共通していて、大元になったヴァージョンは同じじゃないかという気がする。深いなぁ…B面ではさらに、藤圭子高倉健といったビッグネームによる、他の歌無盤であまり取り上げられていないレア曲が目を惹く。鈴木邦彦作曲による「はぐれ旅」が予想以上にいい曲で、「夢でいいから」×「襟裳岬」(作詞は岡本おさみ)みたいな感じだ。健さんヴァージョンはオリコンで1週のみ、96位に顔を出しただけで終わった。もったいない。

全編で唸りを上げるサックスは無記名ではあるが、ジェイク氏あたりではないだろうか。ちょちょいな仕事でも情感出しまくりである。