黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

野路由紀子さんの誕生日は10月20日

キャニオン  C-1087

大正琴 叙情演歌

発売: 1974年1月

ジャケット

A1 恋やつれ (藤正樹) 🅱

A2 夜空 (五木ひろし)☆ 🅸

A3 木曽の女 (北島三郎)

A4 ふるさと (五木ひろし) 🅸

A5 北の恋唄 (殿さまキングス)

A6 嫁入り舟 (野路由紀子)

A7 十五夜の君 (小柳ルミ子) 🅺

B1 京都から博多まで (藤圭子) 🅶

B2 放浪船 (森進一) 🅷

B3 雨 (三善英史) 🅵

B4 瀬戸の花嫁 (小柳ルミ子) 🆃

B5 よこはま・たそがれ (五木ひろし) 🅽

B6 望郷 (森進一) 🅸

B7 知床旅情 (加藤登紀子) 🅻

 

演奏: 吉岡錦正、錦英(☆) (大正琴)

編曲: 竹村次郎

定価: 1,500円

 

73年にNAVレーベルを立ち上げ、一気にフレッシュ路線を加速するキャニオンだが、歌無歌謡界ではそのあたりを境に、むしろ保守路線に寝返ってしまった印象。石油ショックの打撃を受け、若い世代こそが頼れる相手と開き直った結果かもしれないけれど、今じゃ考えられない。それだけ、「団塊の世代」の消費パワーが魅力的だったんでしょうかね。

昨日紹介した盤と打って変わって、こちらは「地方の名産品ショップ」のBGMに相応しいまったりとしたサウンドで聴かせる大正琴演歌集。と言えども、今のイメージでさえ「ど演歌」に属するとは思えない曲まで入っていて、当時の認識的には「非ポップス」という意味あいだったのでしょうか。歌もの界では結構鋭いアレンジを聴かせることもある竹村次郎氏(何せ、北沢まり「DuBiDuBi東京」のアレンジを手掛けていたこともあり、レコード選びでこの人の名を見つける度、飛び上がってた時期もありました)は、ここでは手堅い仕事ぶりで、曲によっては薄味すぎるという調理だ。「夜空」みたいに、オリジナルそのものが洗練されすぎている曲もあるから、そう感じるのもしょうがないけど、歌無界に強力ヴァージョンが多すぎる「ふるさと」なんかは特にがっかりぶりが目立つ。イントロのコードは変えないで欲しかったな…。そして、やはり大正琴と言えば、ビクターの超強力ヴァージョンと比較せずにいられなくなる「雨」だが、案の定まったりしすぎ…ただ、サイドにフルートを入れたアレンジが、この曲ってこんなにラブリーだったっけ、みたいなイメージを逆説的に抱かせて、竹村次郎でよかったんだとここで思うのだ。「DuBiDuBi東京」も、強烈すぎる歌に隠れて目立たないが、よく聴くとフルートがナイスな味付けをしていたのを思い出してニヤリとする。瀬戸の花嫁は、コード的に簡素化しているのが残念だが、一部メロディをハモっている箇所があり新鮮だ。楽曲的には、「木曽節」を大胆にサンプリングした「木曽の女」のユニークさに再開眼。最後が知床旅情というのも思わせぶりだが、もし3ヶ月ほど発売が遅ければ、そこには「襟裳岬」がそびえていたことだろう…そしてメロトロンを幻聴するのだ…(汗