黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

1977年、今日の1位は「あばよ」

CBSソニー 15AH-180 

ヒット演歌全曲集

発売: 1977年

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ジャケット

 

A1 北の宿から (都はるみ)Ⓐ 🅶→8/27

A2 津軽海峡 冬景色 (石川さゆり)Ⓑ 🅳→8/28

A3 西海ブルース (内山田洋とクール・ファイブ)Ⓑ

A4 昔の名前で出ています (小林旭)Ⓑ 🅲→11/3

A5 おんな港町 (八代亜紀)Ⓑ 🅳

A6 おゆき (内藤国雄)Ⓐ 🅴→11/3

A7 雨の桟橋 (森進一)Ⓑ 🅲

A8 想い出ぼろぼろ (内藤やす子)Ⓐ 🅳

A9 あばよ (研ナオコ) 🅳

A10 ヘッド・ライト (新沼謙治)Ⓑ

B1 中の島ブルース (内山田洋とクール・ファイブ)Ⓐ 🅳→11/3

B2 東京砂漠 (内山田洋とクール・ファイブ)Ⓐ 🅱

B3 心のこり (細川たかし)Ⓒ 🅵→11/3

B4 なみだの操 (殿さまキングス)Ⓓ 🅷→11/3

B5 くちなしの花 (渡哲也)Ⓓ 🅸→11/3

B6 うそ (中条きよし)Ⓓ 🅵→11/3

B7 昭和枯れすゝき (さくらと一郎)Ⓐ 🅷

B8 わたし祈ってます (敏いとうとハッピー&ブルー)Ⓐ 🅳

B9 襟裳岬 (森進一)Ⓔ 🅻

B10 女のみち (宮史郎とぴんからトリオ)Ⓕ 🅸

 

演奏: クリスタル・サウンズ

編曲: 矢野立美Ⓐ、松井忠重Ⓑ、横内章次Ⓒ、池田正城Ⓓ、土持城夫Ⓔ、伊藤祐春Ⓕ

定価: 1,500円

 

12日前にソニーの『ゴールデン・スペシャル1500』の演歌編を紹介したばかりなのに、またかよ…という感じですが、こちらは5月10日の『ニューミュージック・ベスト20』と対を成す77年盤。冒頭の2曲も含め、3日の紹介盤にリピート収録された曲も9曲ありますが、最新曲以外も適度に入れ替え、何も考えずに買う人の気持ちも尊重していると思わせるのが、どっかの老舗(と言ってもソニーとの年齢差は5歳程度…汗)と異なるところ。クリスタル・サウンズを聴き過ぎている耳では、またこのヴァージョンかよと呆れてしまいもするけれど(音質的メリットにしたって、レギュラー盤以上に曲を突っ込んでいるから、期待できるわけがない)。

このヴァージョンの「北の宿から」が登場するのは3回目だけど、オリジナル通りにリコーダーを取り入れてのイントロ(曲本体に入ってからも随時登場し、編みたてのセーターのような手触りを醸し出す)から、大正琴が侘しそうにメロディを奏で始め、マンドリン、さらにチェンバロに導くという、月並みな演歌インストと一線を画すアレンジに鮮やかさを感じる。亜星さんのトリビュート回には、このヴァージョンが入った盤を担ぎ出すべきだったと、今更ながら反省。津軽海峡 冬景色」も、隠れたアーバン色が浮き出たサウンドの中に、連絡船のデッキに佇む孤独な乙女の如き歌声が見え隠れし、改めて曲の魅力を浮き彫りにする。14年前に函館に向かう船の中で抱いた恋心に想いを馳せて、ついつい歌わずにいられなくなる…「西海ブルース」のコーラスも女性陣に任せ、フルートが奏でるメロディでまさかのフレッシュな世界へ。各社、工夫を凝らしてアレンジの妙味を競っている「おんな港町」は、ハードなギターを入れてアーバンな解釈。例の効果音はなぜか4音低いフレーズを奏でている(が、エンディングだけはオリジナル通り)。様々な原風景を見せてくれるのが演歌だなと、改めて思わされる20曲ですが、やはり襟裳岬「女のみち」は他社盤が恋しくなりますな…