黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

今日は千賀かほるさんの誕生日なので

デノン CD-4011

ギター/フルート歌謡ベスト20曲

発売: 1970年1月

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ジャケット



A1 白い色は恋人の色 (ベッツイ&クリス) 🅲

A2 花と涙 (森進一) 🅳

A3 あなたの心に (中山千夏) 🅲

A4 恋泥棒 (奥村チヨ) 🅳

A5 真夜中のギター (千賀かほる)

A6 まごころ (森山良子) 🅲

A7 おんな (森進一)

A8 長崎は今日も雨だった (内山田洋とクール・ファイブ) 🅸

A9 悲しみは駆け足でやってくる (アン真理子) 🅴

A10 愛の化石 (浅丘ルリ子) 🅱

B1 黒ネコのタンゴ (皆川おさむ) 🅱

B2 枯葉の街 (由紀さおり)

B3 いいじゃないの幸せならば (佐良直美) 🅳

B4 人形の家 (弘田三枝子) 🅴

B5 或る日突然 (トワ・エ・モア) 🅴

B6 君は心の妻だから (鶴岡雅義と東京ロマンチカ) 🅷

B7 禁じられた恋 (森山良子) 🅵

B8 風 (はしだのりひことシューベルツ) 🅶

B9 夜明けのスキャット (由紀さおり) 🅶

B10 時には母のない子のように (カルメン・マキ) 🅷

 

演奏: 木村好夫 (ギター)、宮沢昭 (フルート)/レインボー・オーケストラ

編曲: 大柿隆

定価: 1,500円

 

王道の好夫ギターとフレッシュなフルートの響きでお送りする、69年の大ヒット曲集。ギターといえば木村好夫だけど、フルートと言えば誰という質問にふさわしい人が、歌無歌謡盤を考えた場合即答し辛いのは確かで、大概サックス・プレイヤーが兼ねてるケースしか思い当たらない。美味しい演奏してるなと思っても、顔が見えなきゃ始まらないし。それで、名前がクレジットされてる盤となると、本盤の宮沢昭さんとか、稲垣次郎さんとか。メインがサックスの人に限られてしまうのですよ。フレッシュとかヤングとか形容詞が付いたアルバムにフィーチャーされる場合が多いだけに、せめて専任スター・プレイヤーがいればもっと盛り上がったのにと思わされます。それこそ、高橋レナさんみたいに、自らジャケットに出てこられる人とか(汗)。鍵盤とフルートをこなす達人、アンパンこと沢村和子さんが演奏のアルバムをやったら、それこそ理想的なものになったかもよ。それを思うと、女優の神崎愛さんがフルートの達人であることに着目したディレクターは偉いなと思います。70年代末の話ですけど。

このアルバムのジャケ、美女が口元を花で隠すという構図は、4年後の『さわやかなヒット・メロディー』で再現されてますが、縦と横の違いはあるとはいえ、笛に対して抱かれるイメージはまさにそれなのかも。サックスや、クラリネットにさえ、こういう構図は似合わないですね。そういえば『さわやかな…』にフィーチャーされているリコーダーは本職フルートの人達の演奏だし。彼らがフルート奏者として歌無歌謡レコードの「顔」になった例はなくて、時代は変わったんだなとしみじみ。

そんな風に、聴いていると色々複雑な思いに駆られてしまう1枚ですが、いずみたく一派の大柿隆氏をアレンジャーに迎え、落ち着いた音作りで統一。決して攻撃的方向に進まない、フルートのさわやかさが引き立つ演奏で、好夫ギターに対する寄り添い方も絶妙。好夫シグネチャー曲と化している「おんな」も余裕綽々、引き摺るフレージングが炸裂する名演。「あなたの心に」はセルフリアレンジ故、気を衒わずまっすぐに聴かせる。「黒ネコのタンゴ」の戯れぶりも堂々としてるし。この位開かれた演奏をしてみたいな、という気分にさせられる1枚。

 

ところで、神崎愛さんの名前を出したところで思い出した、7月19日のエントリ(蛇足ですが、『オリコン・ベスト・ヒット』はVol.2の存在も確認されました)で切望した柴本幸さんのリコーダー演奏盤ですけど…まさかの配信デビューが既に実現してました!米国のレーベルから、バラで4曲。うち1曲はカーミットの「レインボー・コネクション」のカヴァーで、これが一番理想的な演奏。まさに、歌うような笛。このフットワークの軽さは、歌無歌謡耳にはいい清涼剤になりますよ。(カテゴリーの最後はおまけということで…)