黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

紅白歌無TOP40・第18幕

69年ならではの絶望感を表した名曲。「こんなにこんなに愛してる」と同日発売でした(瀧汗)。

 

21位 (タイ)

悲しみは駆け足でやってくる

歌/作詞: アン真理子

作曲: 中川克彦

編曲: 寺岡真三

69年7月5日発売/オリコン最高位4位

 

↑オリジナルがないのはしょうがないですね…代わりに、由紀さおりの「歌入り歌無歌謡ヴァージョン」を貼っておきます。このフルートは誰だ…横田年昭じゃないかな。あまり歌無歌謡に関わらなかった人ですが。

 

🅰ゴールデン・サウンズ (編曲: 荒木圭男) 21/5/26

ゴールデン・サウンズらしく無難なのだけど、Bメロに特徴的な好夫ギターが出てきて、どのレーベルの盤を聴いてるのかわからない気分にさせる。そして、ここから先も好夫だらけとなるのだ…

🅱いとう敏郎と’68オールスターズ (編曲: 福山峯夫) 21/8/2

場末感の強さをせこいオルガンサウンドが体現する。この手の曲をまとめて聴くには、このいとう敏郎の2枚組が一番無難かも(なんと筒美京平曲が皆無な歌無歌謡盤という特異なセットでもありますが)。

🅲カンノ・トオルとフォークギター・グループ (編曲: 福島正二) 21/8/7

テイチク特有の「例のノイズ」が吹き荒む中、テンポアップしたおかげでなんとなく積極的雰囲気が漂うサウンドに突入。複数のギターが声を合わせる同好会ムード。

🅳ありたしんたろうとニュービート (編曲: 小杉仁三) 21/8/8

まさかのダンサブルビートを配しているが意外にもしっかりはまっている。フルートもノリノリ。ここまでテンポアップすると、ウイングス「ミセス・ヴァンデビルト」との相似性が浮かび上がってくるのだ(汗)。2コーラスは驚きのエーメンブレイク仕様。Bメロで寺川ベースが暴れる。

🅴木村好夫、宮沢昭/レインボー・オーケストラ (編曲: 大柿隆) 21/9/25

幻想的サウンドに導かれてのメランコリックな好夫ギターの調べ。意外にもジャジーな感触でフルートもぴったり寄りそう。

🅵クレイジー・ニュー・サウンズ・オーケストラ (編曲: ?) 21/10/20

これも好夫じゃないのかと思わせるギターでおとなしく始まりながら、次第に狂想の色を帯びてくるクレイジー・パーカッション。ミキシングの魔法でアルバムのコンセプトに合致したサウンドへと溶け込ませている。このギターアレンジは、後のツゥイン・ギターズの先駆け的な面も。しかし、誰の仕業なんだろう。

🅶クイン・ノート (編曲: 道志郎) 22/12/9

クイン・ノート得意の渦巻オルガンが全編吹き荒む、幻想的ながらノリのいいヴァージョン。この頃になると高橋レナは離脱しており、恐らく左右のチャンネルに違うオルガン奏者を配しているのではと思われるが、両者のせめぎ合いが戦慄を呼ぶ。

🅷コロムビア・オーケストラ (編曲: 河村利夫) 22/12/12

山田書院特有の牛歩サウンド。フルートが清涼感を持ち込んでいるのが特異だが、このギターも好夫だろうか?

🅸Joseph Meyer & Midnight Sun Pops (編曲: Y. Maki) 22/3/16

第1期国文社のタッチは山田書院とそれほど変わらないが、このギタリストの素性は読めないなぁ(実は他社にもこのクレジットの盤はある)。口笛がうきうきする感触を持ち込んでいるし、Bメロのリズム展開もちょっと異色。

🅹ザ・フォークセレナーダス・プラス・ストリングス (編曲: 近藤進) 22/3/30

厳かなフルートで始まるが、本編に入ると意外にもリズミックで絶望感が希薄。ビクター自社の解釈にしては思い切りがいい感じ。藤ユキ時代の異色作「もうだめもうだめよ」を手掛けたアレンジャーのリベンジなのだろうか…

🅺ゴールデン・ポップス・オーケストラ (編曲: 森岡賢一郎) 22/5/23

いきなり本編イントロから入ると別の曲(例えば高原ひとみ「7つのしあわせ」とか…汗)を幻聴しそうになる…が、職人らしく手堅い肌触り。

🅻横内章次/ブルー・ドリーマース (編曲: 横内章次) 22/5/29

真のギター職人は違う側面からこの曲にロマンを見出す…ムーディなボサノヴァ風アレンジがなぜか絶望感を感じさせない。Bメロ6小節目など、こう脱構築するかという大胆さ。

🅼稲垣次郎/木村好夫/コロムビア・ストリングス (編曲: 河村利夫) 22/11/12

恐らく🅷のアレンジを再利用したと思われるが、こっちの方が軽快なサウンド。好夫ギターは意外にもかなりの暴走ぶり。

🅽ザ・ビートニックス (編曲: 田辺信一) 23/6/14

浅丘ルリ子を起用したヒップなアルバムにおいては、どちらかというと安堵の場所。ただ、ピアノのアレンジは相当尖っている。これは松岡直也のプレイでいいのだろうか?

『ヒット・スタジオ ベスト=14 愛の化石』

🅾木村好夫とフォーク・サンズ (編曲: 木村好夫) 23/6/18

最後も好夫ギターで、しかも5つ目(山田書院含めて)となるコロムビアヴァージョン。探してみればもっとありそうだ…シンプルな編成でフォーク倶楽部の雰囲気が漂う。キラキラしたオルガンサウンドが異色。

 

以上、15ヴァージョン (15枚収録)。入手までのドラマも含めて、🅳に軍配をあげたい。