東芝 TP-60304~5
今宵踊らん ベスト・ヒット’78~’79
発売: 1978年
A1 モンスター (ピンク・レディー)Ⓐ 🅲
A2 ヤマトより愛をこめて (沢田研二)Ⓑ 🅱
A4 東京ららばい (中原理恵)Ⓒ 🅲
A5 キラキラ星あげる (大場久美子)Ⓑ
A7 プレイバックPart 2 (山口百恵)Ⓑ 🅲
B1 ステイン・アライヴ (ビー・ジーズ)Ⓐ
B2 恋のナイト・フィーバー (ビー・ジーズ)Ⓐ
B3 愛はきらめきの中に (ビー・ジーズ)Ⓐ
B4 宇宙のファンタジー (アース・ウィンド&ファイアー)Ⓐ
B6 ハロー・ミスター・モンキー (アラベスク)Ⓐ
C1 ダーリング (沢田研二)Ⓐ 🅲
C2 君のひとみは10000ボルト (堀内孝雄)Ⓑ 🅲
C3 Mr. サマータイム (サーカス)Ⓑ 🅳
C4 宿無し (ツイスト)Ⓒ 🅳
C5 時間よ止まれ (矢沢永吉)Ⓑ 🅳
C6 入江の午後3時 (松任谷由実)Ⓒ
D1 透明人間 (ピンク・レディー)Ⓒ 🅱
D2 恋するデビー (デビー・ブーン)Ⓐ
D3 パープル・シャドウ (高田みづえ)Ⓑ
D5 ジョニーの子守唄 (アリス)Ⓒ
D6 泣き上手 (野口五郎)Ⓑ 🅱
D7 炎 (西城秀樹)Ⓑ
演奏: 奥田宗宏とブルースカイ・ダンス・オーケストラ
編曲: 高野志津夫Ⓐ、五十嵐謙二Ⓑ、山本有信Ⓒ
定価: 4,000円
あまりに密すぎて、こんな時世じゃ非現実的としか思えないジャケット…「さあ踊りましょう」で万事安泰な『今宵踊らん』シリーズであるけど、今作の対象時期は1978年。富山敬といえば「古代進」な時代にして、B面に並ぶ洋楽の曲名を見れば一目瞭然、日本全国が「ディスコでフィーバー」したあの年。イケイケ世代特有の風俗から脱し、ボトムの強いサウンドで踊ることが一般的嗜好として認められた感がある。故に、社交ダンスは一気に時代遅れな、ひとつ前の世代の嗜みとして後退りするしかなくなった。今思えばそれでも、当時の年金受給世代がこんな音楽で体を揺らす光景なんて絶対想像できなかったはずだ。
全体的選曲を見れば、若々しさ以外の何をも感じない。古風なポピュラー音楽で長閑に踊る感覚で、当時の最新ヒットを楽しめるわけだ。「モンスター」はノリのいいリズムでまだまだ理解できる範疇にあるが、「ヤマトより愛をこめて」はムーディなブルースになっちゃって、宇宙に哀愁を募らせてる場合じゃないし、ここまで気の抜けた「かもめが翔んだ日」には体が動くどころじゃない。「東京ららばい」はタンゴだけど、これは本質を突いていてありな解釈。そして、やっぱこれは東芝の企画だからこそできたとしか思えない、他社の歌無歌謡班じゃ絶対タッチできないと思われる(爆)大場久美子の「キラキラ星あげる」。「九重祐三子のコメットさん」世代にも優しいスローグルーヴ化している。
笑って済ませるしかないと思われたB面だが、冒頭の2曲にはちゃんとディスコ対応のリズムセクションも完備しており、世代を超えて仲良く踊れそうだ。長閑にスウィングする「宇宙のファンタジー」は別として。寧ろタンゴ化した「宿無し」や「時間よ止まれ」の方にネタ的快感を感じるしかない。特に後者は咄嗟の時に効力を発揮しそう(ガチな成り上がり集会とかで流したら暴動が起きかねないな…)。「入江の午後3時」なんて一般的には渋めの曲まで、まさかの別世界に陥れられている。唯一残念なのは「スター・ウォーズ」が収録されてないこと(許可されなかったのだろうか?)
ソリーナの使用など、この時代でなきゃ考えられない音的演出もあるけど、断固たるポリシーの元に組み上げられたいつものサウンドで、無心に体を揺らすしか術がなくなる2枚組。今、「炎」(鬼滅の方)をこんなアレンジで踊ることはできるのか? まだまだ「問題作」が待っているぞ…