ポリドール MR-8097~8
最新歌謡ヒット・ベスト28 漁火恋唄
発売: 1973年1月
A1 あなたに賭ける (尾崎紀世彦)Ⓐ
A2 漁火恋唄 (小柳ルミ子)Ⓐ
A3 哀愁のページ (南沙織)Ⓒ 🅴
A4 夜汽車 (欧陽菲菲)Ⓓ 🅴
A6 死んでもいい (沢田研二)Ⓒ
A7 旅の宿 (吉田拓郎)Ⓓ 🅳
B1 せんせい (森昌子)Ⓐ 🅱
B2 じんじんさせて (山本リンダ)Ⓐ
B3 恋の衝撃 (朱里エイコ)Ⓒ
B4 めぐり逢う青春 (野口五郎)Ⓓ 🅱
B5 花は流れて (藤圭子)Ⓐ 🅱
B6 勲章なんかほしくない (青い三角定規)Ⓒ
B7 さよならをするために (ビリー・バンバン)Ⓓ 🅱
C1 虹をわたって (天地真理)Ⓒ 🅳
C2 雨に消えた恋 (野口五郎)Ⓐ 🅱
C3 夜汽車の女 (五木ひろし)Ⓒ 🅳
C5 傷あと (美樹克彦)Ⓓ
C6 結婚しようよ (吉田拓郎)Ⓔ 🅴
D1 京のにわか雨 (小柳ルミ子)Ⓓ 🅶
D2 ひとりじゃないの (天地真理)Ⓐ 🅸
D3 旅路のはてに (森進一)Ⓓ 🅲
D4 男の子女の子 (郷ひろみ)Ⓒ 🅱
D5 風の日のバラード (渚ゆう子)Ⓓ 🅲
D7 許されない愛 (沢田研二)Ⓑ 🅳
演奏: 原田寛治(ドラムス) オールスターズⒶⒷ
伊部晴美(ギター) オールスターズⒸ
秋本薫(テナー・サックス) オールスターズⒹ
小川隆(ギター) オールスターズⒺ
定価: 2,000円
国民的愛唱歌「サザエさん」の作詞者・林春生氏を地味に讃える回。1曲だけというのが勿体ない気がするけど、生憎そんな日なんです…
「漁火恋唄」におよそ不釣り合いなジャケットですが、ポリドールものにしてはおとなしめでかえって触手が引っ込みがちになる人もちらほらいそう…いずれにせよ、名物3種盛りに加え2曲だけ、小川隆のギターが異色のムードを送り込む恒例の2枚組。どの曲をとっても、頻繁に取り上げられてるので新鮮味は期待できないけど、やはり他社ものにない異次元の感触はあるわけで、それが原田寛治のドラムに集約されているのがもはや「安定のポリドール路線」なんですよ。1曲目「あなたに賭ける」から、メインのイントロに入る前に炸裂しまくるドラムソロ。曲に入っても4小節毎に同じ拍数、ドラムソロを挟むという徹底ぶり。続く「漁火恋唄」もまさしくそんな感じ。おしとやかにピアノとオルガンで始まったと思ったら、隙間なくドラムが流れ込んでくる。他社のドラムヴァージョンには、完全に自虐モードに入っている演奏もあるこの曲だけど、ここではそんなのお構いなし、「ハァー」の部分でも爆裂しまくってる。「せんせい」なんて、曲の隙間を埋めているのか、強引に弾け空間を作ってるのか判らないくらい、曲のイメージをひん曲げてしまってるし。「ひとりじゃないの」のフィルの入れ方も自我貫きの極みだ。具体的説明をしてもしょうがない位、安定の原田ワールドだけど、どっちかというと前田憲男アレンジ曲でのプレイの方が守りに入っているような気がする。「瀬戸の花嫁」なんて、アレンジ的には大胆ではあるけれど。
以下、いつものように余裕綽綽の伊部ギターに秋本テナー。これらでも当然、ビートを刻むのは原田寛治なのだが、堅実なムードメイカーに留まっており、全体の流れを突散らかさない役割に徹している。「恋の衝撃」なんて、ここまでメロウにしなくてもと思うし、「夜汽車の女」もサウンド全体を抑え気味にしているため、相当毒が抜かれてる印象。「男の子女の子」も若々しさに包まれて居心地悪そう。むしろ「狂わせたいの」に秘めたる狂気を感じてしまう。小川隆はさすがに名人ではあるけれど、このファミリー的な流れに交わるとかえって浮いてる感も。最後の最後、「許されない愛」でフランジャー使用に走ったのは、自社曲故の特権だろう。もっとも、歌無歌謡で同種の効果が実践された例は、実はこれ以前にもあったのだが。さて、誰がやったのでしょう?答えはまたの機会に…なんと69年ですよ…