黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

1974年、今日の1位は「あなた」

クラウン GW-3001~2

ビッグ・ヒット歌謡ベスト36 あなた/恋人たちの港

発売: 1974年2月

f:id:knowledgetheporcupine:20220127064221j:plain

ジャケット

A1 恋のダイヤル6700 (フィンガー5)Ⓒ 🅶

A2 冬の旅 (森進一)Ⓐ 🅴→12/29

A3 恋の風車 (チェリッシュ)Ⓑ 🅹

A4 夜空 (五木ひろし)Ⓓ 🅵→11/28

A5 恋人たちの港 (天地真理)Ⓑ 🅵

A6 ときめき (麻丘めぐみ)Ⓒ 🅲→11/28

A7 白いギター (チェリッシュ)Ⓑ 🅹

A8 なみだ恋 (八代亜紀)Ⓐ 🅷→11/28

A9 若草の季節 (森昌子)Ⓑ 🅲

B1 赤ちょうちん (かぐや姫)Ⓑ 🅲→11/28

B2 ひとかけらの純情 (南沙織)Ⓐ 🅶

B3 一枚の楽譜 (ガロ)Ⓒ 🅲→6/21

B4 モナリザの秘密 (郷ひろみ)Ⓐ 🅲→12/24

B5 くちなしの花 (渡哲也)Ⓑ 🅺→11/28

B6 金曜日の朝 (吉田拓郎)Ⓒ 🅱

B7 個人授業 (フィンガー5)Ⓓ 🅱

B8 みずいろの手紙 (あべ静江)Ⓑ 🅱→12/29

B9 空いっぱいの幸せ (天地真理)Ⓐ 🅳→12/29

C1 あなた (小坂明子)🅹

C2 小さな恋の物語 (アグネス・チャン)Ⓐ 🅳→12/29

C3 恋は真珠いろ (浅田美代子)Ⓒ 🅲

C4 魅せられた夜 (沢田研二)Ⓐ 🅶→12/24

C5 こころの叫び (野口五郎)Ⓑ 🅱→11/28

C6 恋の雪別れ (小柳ルミ子)Ⓐ 🅵→12/29

C7 なみだの操 (殿さまキングス)Ⓑ 🅻

C8 きりきり舞い (山本リンダ)Ⓒ 🅱

C9 記念樹 (森昌子)Ⓐ 🅵

D1 愛の十字架 (西城秀樹)Ⓒ 🅶

D2 突然の愛 (あべ静江)Ⓑ 🅵

D3 愛さずにいられない (野口五郎)Ⓐ 🅳

D4 心もよう (井上陽水)Ⓒ 🅴→6/21

D5 ひとり酒 (ぴんから兄弟)Ⓑ 🅱→11/28

D6 アルプスの少女 (麻丘めぐみ)Ⓐ 🅳→12/29

D7 神田川 (かぐや姫)Ⓒ 🅳→6/21

D8 愛のくらし (加藤登紀子)Ⓐ 🅰→12/29

D9 想い出が多すぎて (高木麻早)Ⓑ 🅱

 

演奏: まぶち・ゆうじろう’68オールスターズⒶ

いとう敏郎と’68オールスターズⒷ

ありたしんたろうとニュービートⒸ

サム・テイラーと彼のオーケストラⒹ

編曲: 福山峯夫ⒶⒷ、青木望Ⓒ、小杉仁三Ⓓ

定価: 3,000円

 

楽しく毎日毎日黄昏をぶっ飛ばしていると、クラウン2枚組に出くわすことである意味障害物にぶち当たる…確かに、いろんなヴァージョンを聴ける楽しみはあるけれど、このヴァージョンを既にどこで語ったとか、そういうのを意識し始めると萎えモードに入らずにいられないんですよ…

これはクラウンの74年以降の盤にしては異例の、4桁価格を投じて買ってしまった1セット(汗)ですが、ポイントはやはりC面8曲目に「きりきり舞い」が収録されていたこと。既にこの曲が入った東宝の盤を「惜敗」で逃したことがあり、今度ばかりはと意地になっちゃったのかもしれません。そんな焦ることないのにさぁ。それでも、盤は美品だったし帯もきちんとついている。3000番台での新たなスタートを飾るにふさわしい、ファンシーな色合いを強調し、以前のクラウンカラーからの脱却を図っているし。帯の右上部に見える謎のマークは、例のトライデントの卓導入を表すシンボルで、この帯で見たのが初めてである。

内容も、新スタートに相応しく3大スターを集めつつ、控えめにサム・テイラーを2曲投入。初登場は17曲と、ほぼ半数なのでセーフの領域だ。トップの恋のダイヤル6700は若干テンポを落としつつ、グルーヴを強化。ピアノの導入はスライの「エヴリデイ・ピープル」に通じる味だ。「恋の風車」は対してまったりとした演奏に落ち着き、「モアカウベル!」の声にも控えめに応えている(笑)。いや、結構派手に叩いているけど目立たないミックスだ。いとう敏郎名義の曲に、以前のクラウン色の名残が最も覗いていると言えそう。トライデントの卓を導入したことで、サウンド的進化は伺えるけど。サム・テイラーの曲は、次作『妹・ふたりの急行列車』にも流用された「夜空」に加え「個人授業」も選曲。この本場ならではのファンクなノリが、まさにゲット・アップ・アンド・ゴー感満載(爆)。これもオケはベル・スタジオで録られているのだろうか?蛇足ながら、サムのグラモフォン盤(67年)ではパナマ・フランシスをドラマーに起用したクレジットがあったが、どう聴いても原田寛治のドラムにしか聴こえない曲もありましたよ(汗)。

このセットに異彩を持ち込んでいるのはニュービートの曲で、「恋は真珠いろ」は他のヴァージョンに比べるとまったりしたノリが、かえってひょうきんなカラーを加えている。そして問題の「きりきり舞い」、イントロからコーラスが左右に行き交い、エレピも高速パンしまくる過激なサウンド。トライデントの卓を面白がりすぎた結果か、ハイハットのハイを上げすぎてバランスの安定感をかえって損ねているけれど、結果的に曲のカラーを増幅しているし、オリジナル通りリコーダーも大活躍。この曲に間違った解釈はあり得ない。

カラフルなヴァージョンが多いこの時期の歌無歌謡盤だけど、ヴァラエティ感においてはやはりクラウンこそが信頼のブランド、という印象。半年毎に1作くらいのペースで手元に置いておけばちょうどいいかも。 コンプリートとかしたら絶対発狂しそう…