黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

1974年、今日の1位は「恋のダイヤル6700」(2週目)

ユニオン CJP-1161~2 

ビート&ムード歌謡 ヒット全集

発売: 1974年

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ジャケット

A1 恋人たちの港 (天地真理) 🅴

A2 金曜日の朝 (吉田拓郎)

A3 ひとかけらの純情 (南沙織) 🅵

A4 一枚の楽譜 (ガロ) 🅵

A5 恋のダイヤル6700 (フィンガー5) 🅵

A6 モナリザの秘密 (郷ひろみ) 🅳

B1 突然の愛 (あべ静江) 🅴

B2 恋の風車 (チェリッシュ) 🅸

B3 襟裳岬 (森進一) 🅽

B4 きりきり舞い (山本リンダ)

B5 愛の十字架 (西城秀樹) 🅵

B6 魅せられた夜 (沢田研二) 🅷

C1 冬の旅 (森進一) 🅵

C2 やどかり (梶芽衣子) 🅱

C3 忍ぶ雨 (藤正樹) 🅴

C4 出船 (内山田洋とクール・ファイブ) 🅶

C5 女のみち (宮史郎とぴんからトリオ) 🅻

C6 なみだ恋 (八代亜紀) 🅹

D1 くちべに怨歌 (森進一) 🅶

D2 遍歴 (藤圭子)

D3 白樺日記 (森昌子) 🅷

D4 ミカンが実る頃 (藍美代子) 🅲

D5 怨み節 (梶芽衣子) 🅴

D6 女のきず (宮史郎とぴんからトリオ)

 

演奏: 田中清司 (ドラムス)、松浦ヤスノブ (テナー・サックス)、吉岡錦正 (大正琴)/オーケストラ名義無記名

編曲: 無記名

定価: 2,600円

 

テイチクの洋楽レーベルとして62年に発足したユニオンは、66年あたりから国内制作によるポップスのレコードをリリース開始し、アルバム市場にも「歌のない歌謡曲」を含むインスト作品を多数送り込んだが、そっち方面は75年あたりにほぼ沈静。以降、所謂和ジャズを活発に紹介しつつ、主力アーティストとなった高田みづえの引退とタイミングを合わせるように、85年に活動を停止。つい最近復活したが、和田アキ子の移籍により今後の行方はどうなるのだろうか。

そんなユニオン末期にさりげなく残された74年の集大成盤。1枚目では、70年代初期のユニオン盤で大暴れした田中清司のドラムを軸に、弾けるポップス系のセレクション。ワーナー・ビートニックスが活動を終え、競合相手が手薄になったとはいえ、さすがに70年代初期に比べると手加減しており、その分ドラム・サウンドの捉え方はシャープになっている。普通に手堅い演奏の合間に、ちょっと見せ場を挟みましたという感じのアレンジが、1曲目「恋人たちの港」で提示されている。「一枚の楽譜」は、「モーグサウンド・ナウ」の余韻を残すシンセをフィーチャーし、派手さを増しているが、やはりメロトロンを配したニュービート盤に軍配をあげたくなるな。B面前半は派手さは控えめにしているが、「恋の風車」にはさすがに「モアカウベル!」と叫びたくなる(爆)。襟裳岬は敢えて1枚目に持ってこられたのも納得のファニーなアレンジで、シンセが面白サウンドで主導しているものの、やはりユピテル盤のメロトロンに完敗である(爆)。

さて、続く「きりきり舞い」。これは我が70年代歌謡愛に於いてもスウィートスポットとなる1曲で、これが入っている歌無盤を求めてめちゃ困難な旅が続いたが(同じように探索が続いているのが「古い日記」だが、東宝盤の存在は知っているのに未だ入手できていない…)、遂にここで初登場である。めちゃドライブしていていい演奏だし、笛の部分をシンセで演っているのも憎めない。ポルタメントを絶妙に設定していて気持良く乗れる。この曲はいかなるヴァージョンであろうが求めてますので、8トラ情報さえも歓迎しますよ。「愛の十字架」は重厚さを取り払いつつ、ハードに駆け抜ける演奏。

そして盤を2枚目に変えると、ぐっとアダルトに、松浦ヤスノブが咆哮する夜のサウンドになる。「やどかり」はハードボイルド色希薄に、ひたすら場末色を強調しているし、「女のみち」は例の如し、ただ錦英氏がいない分、音の方は薄めになっている。2枚目では最もラブリーさが期待できる「ミカンが実る頃」も、あくまで地味に。この2枚を同等に楽しんでいた人も74年にはまだいたと思われるけど、ギャップが何ともいえないですな。71年盤「歌謡ヒットポップス・ベスト28」(昨年8月11日)では、特に2枚目でこの相反する要素がごちゃ混ぜで展開されていた分、スリルがあってよかったんですけど。