黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

伊藤咲子さんの誕生日は4月2日

クラウン GW-3057~8

ビッグ・ヒット歌謡ベスト36 白い部屋/湖の決心

発売: 1975年3月

ジャケット

 

A1 あかいサルビア (梓みちよ)Ⓐ☆ 🅲

A2 白い部屋 (沢田研二)Ⓐ☆☆☆ 🅴

A3 旅愁 (西崎みどり)Ⓑ 🅵

A4 わたし祈ってます (敏いとうとハッピー&ブルー)Ⓑ 🅶

A5 おんなの運命 (殿さまキングス)Ⓐ☆ 🅷

A6 くちなしの花 (渡哲也)Ⓒ☆☆ 🅺→21/11/28

A7 さらばハイセイコー (増沢末夫)Ⓐ☆☆ 

A8 二人でお酒を (梓みちよ)Ⓑ 🅹

A9 襟裳岬 (森進一)Ⓑ☆ 🆁

B1 湖の決心 (山口百恵)Ⓓ 🅶

B2 水色のページ (麻丘めぐみ)Ⓐ☆☆ 🅱

B3 雨だれ (太田裕美)Ⓓ 🅱

B4 愛の迷い子 (アグネス・チャン)Ⓑ 🅱

B5 うそ (中条きよし)Ⓐ☆ 🅷→1/2

B6 哀恋記 (五木ひろし)Ⓑ 🅳

B7 なみだの操 (殿さまキングス)Ⓒ☆☆ 🅾

B8 あなたにあげる (西川峰子)Ⓐ☆ 🅷

B9 淋しがりや (梓みちよ)Ⓐ☆ 🅲

C1 22才の別れ (風)Ⓑ 🅷

C2 雪が降っています (あのねのね)Ⓐ☆☆☆

C3 私鉄沿線 (野口五郎)Ⓕ 🅴

C4 冬の色 (山口百恵)Ⓐ☆ 🅲

C5 火遊び (中条きよし)Ⓑ 🅳

C6 他人じゃないの (敏いとうとハッピー&ブルー)Ⓐ☆☆ 🅱

C7 あじさいの雨 (渡哲也)Ⓐ☆ 🅶

C8 冬の駅 (小柳ルミ子)Ⓑ 🅴

C9 初めてのひと (西川峰子)Ⓑ 🅲

D1 黄昏の街 (小柳ルミ子)Ⓓ 🅴

D2 はじめての出来事 (桜田淳子)Ⓓ 🅳

D3 はまなすの旅 (西崎みどり)Ⓓ 🅲

D4 木枯しの二人 (伊藤咲子) 🅱

D5 湯けむりの町 (森進一)Ⓔ 🅴

D6 理由 (中条きよし)Ⓔ☆☆☆☆ 🅶

D7 女のちかい (ぴんから兄弟)Ⓐ☆

D8 夫婦鏡 (殿さまキングス)Ⓐ☆ 🅺

D9 おんなの夢 (八代亜紀)Ⓑ 🅴

 

演奏: クラウン・オーケストラ

まぶち・ゆうじろう’74オールスターズ☆

いとう敏郎と’68オールスターズ☆☆

ストリングス’75☆☆☆

水谷公生&トライブ☆☆☆☆

編曲: 若草恵Ⓐ、小杉仁三Ⓑ、福山峯夫Ⓒ、高見弘Ⓓ、原田良一Ⓔ

定価: 3,000円

 

昨日も微妙な関係曲が2曲(えっ!?)入ったアルバムを取り上げ、名前を出したところだけど、自分の大好きな歌手の一人である伊藤咲子さんの誕生日を、7ヶ月遅れて祝います。今年の4月2日にこれを取り上げれば良かったのだけど、いろんな思惑があり、クラウンというだけで後回しにされてしまったので(汗)。当然昨年4月2日には、『雲にのりたい/魅惑のギター二重奏』以外のアルバムを取り上げるわけに行かなかったし(瀧汗)。

昨年何度か箱買いをした際、コンディションが落ちるとはいえ、クラウンの盤がかなりの枚数転がり込んできて、細かいチェックを怠りつつ後回しにしちゃいましたが、このアンコール月間で何とか、ダブりの少ないものをいくつか拾い上げることにしました。この2枚組は、よくよくチェックしたら過去に取り上げた盤と重なっていたのは2曲のみ!コンセプトを練る際は、クラウンってだけで萎えるのですが、奥へと踏み込んでみたら色々と深い。何せいい感じでバックグラウンドになるし。歌無歌謡を集め始めた頃は、「冬の色」「はじめての出来事」がなかなか手元に来ないなと嘆いていたのですが、それもそのはず、この時期のクラウン盤を持ってなかったからなのです(汗)。

相変わらず、曲の配列的には全然何も考えてないなという印象で、「あかいサルビア「二人でお酒を」の次作ということで、過剰に期待した故のトップ抜擢でしょうか。久々にストリングスを打ち出しての「白い部屋」も、印象としてはそこまで高貴ではないし、3曲目に早々と旅愁が来るのも違和感しかない。この曲や「面影」は、ラストに持ってくるのが当然でしょう。最初に「あれっ」と思わせるのは、ジャジーでムーディな解釈を加えた「わたし祈ってます」だ。77年以降は「昔の名前で出ています」の印象しかない(!)小杉仁三氏がいい仕事をしている。例によって、クラウン・オーケストラ名義と、74年までに使われたクラウン歌無歌謡黄金期の名義が混在しているが、場末感に多少の差はあるといえ(やはり後者の方が強い)、そんなに違和感なく流れていく。A面のアダルティな流れが、ジャケットのポップ感に不釣り合いではあるけれど。そんな中、さらばハイセイコーというリアリティの極致のような曲が現れ、当時の世相へとタイムスリップさせてくれる。現役ジョッキーが一線を退く愛馬への惜別を歌った、あの時だからこそ意味を持つ貴重な曲。それさえも、歌を剥ぎ取られ雰囲気作りの一環に徹している。肝心の「二人でお酒を」がまた、意表を突いたジャジーな解釈で、サックスの暴れ具合はまぶち流と一味違う。帰結点は襟裳岬だけど、こればかりはやはりメロトロンが恋しくなるな(汗)。

B面トップの「湖の決心」も、クリスタル・サウンズの決定版を前にするとどうしても負ける印象だけど、このこじんまりとしたまとまりも悪くない。せこめのシンセの音に純情を感じる。「水色のページ」は、いとう敏郎名義にしてはかなり走った演奏だけど、この頃になるともう名義などどうでも良くなりつつあったのかも。ヤングポップス路線は、B面以降の前半にちょっとずつという感じで固められていて、やはり全体に散らされた方がよかったかも。22才の別れは、後のクラウン盤に頻出する山下洋治ヴァージョンではなく、エレピをフィーチャーしたよりスタンダードなアレンジの方。この曲は『かぐや姫ソングス・フォー』(GW-7076)に収められている公式インスト・ヴァージョン(?)の方が好きなんだよね…そのアルバムに、歌無歌謡盤で吹きまくっている旭孝氏と共にクレジットされているフルート奏者の柴田美知子さんって、どんな方だったのだろうか。意外に歌無歌謡にも多く参加してたりして。続く「雪が降っています」は、あのねのねがパブリック・イメージを粉砕してみせたロマンチックな曲を取り上げた貴重なヴァージョン。あっという間に終わる(笑)。こういう曲の後、「私鉄沿線」のイントロが何の変哲もないギター音で奏でられるから、歌無歌謡はスリリングだなーって思います。

色んな意味で期待を抱かせるヤングポップス系の選曲も、大きな山に恵まれず通り過ぎ(「はじめての出来事」の細かい気配りが伺えるアレンジは好印象だけど)、主題の「木枯しの二人」へ。やはりいい曲だ。「もっと」だけストリングスで前置きして、「強く~」からギターが受け継ぐ構成が、なんか意味不明感あるけれど、バラライカ(?)なんかも入って新鮮なアレンジ。ピアノの音もダルシマーを思わせるし。ここまで聴いたところで、安堵感が「湯けむりの街」に。森進一の曲にリコーダーとは珍しい(これ、まさか柴田美知子さんのプレイじゃ!?)が、アルバム『湯けむりの街』に収録されている「結婚するって本当ですか」では、森さんの歌声にラブリーな笛の音が見事に寄り添っており、意外な発見。サブスクで聴いておやっと思い、京都のハードオフで買い求めました(汗)。続く「理由」は、水谷公生&トライブの2作目からの抜粋だが、ここまで来るとトライブである必然性を感じない演奏(ぉぃ)。「夫婦鏡」こそそっちで入れて欲しかったところだが。結局、避けたと言いつつもグダグダ書いてしまうわけですよ。クラウンだから~(「女だから~」のふしで)。

 

追記: こうちゃんさんからの情報提供に基づき、「淋しがりや」の演奏者/編曲者表記とヴァージョンカウント、「夫婦鏡」の演奏者表記に変更を加えました。詳細な情報をどうもありがとうございます。