黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

石原裕次郎さんの誕生日は12月28日

テイチク SL-1264

バッキー白片の 愛に散りたい

発売: 1969年2月

ジャケット

A1 愛に散りたい (鶴岡雅義と東京ロマンチカ)

A2 恋の季節 (ピンキーとキラーズ) 🅲

A3 知りすぎたのね (ロス・インディオス) 🅵

A4 年上の女 (森進一) 🅸

A5 朝のくちづけ (伊東ゆかり) 🅴

A6 夕月 (黛ジュン) 🅶

B1 今は幸せかい (佐川満男) 🅵

B2 霧にむせぶ夜 (黒木憲) 🅳

B3 愛の香り (布施明) 🅳

B4 釧路の夜 (美川憲一) 🅳

B5 あなたのブルース (矢吹健) 🅳

B6 忘れるものか (石原裕次郎) 🅳

 

演奏: バッキー白片とアロハ・ハワイアンズ

編曲: バッキー白片

定価: 1,500円

 

二日連続で炸裂するバッキー弾丸!ゲットクラッキンゲットゲットクラッキン!と、颯爽と書き出しましたが…昨日紹介した、新たなるポップス歌謡への夜明けへとアプローチした2年後のアルバムに比べると、こちらはまだまだ素朴。デパート屋上のビアガーデンで流れるとさまになりそうな、ドメスティック歌謡メロディのオンパレード。リズム的にも、ラテン的要素の枠からはみ出ることなく、ひたすら営業色濃い演奏。でありながら、憎めない要素がこれでもかと押し寄せてくる。自分にとって、南国のイメージというのはこれなのだ。

68年末から69年初頭にかけての曲を中心に取り上げているが、GS色の濃いものはなし。あくまでも別世界だったのだろう。こういう南国情緒を感じさせる曲がGSに皆無だったというと嘘になるけど。で、恋の季節(大大大ヒットしたのに、これが3ヴァージョン目!この時期の盤が全体的に希少なのを物語る)はどうかというと、全然その予感を感じさせないイントロがくっついていて、曲名を見ずに聴くと歌い出しでハッとさせる。それでいいじゃないか。合いの手のコーラスの代わりに、それと全くカラーが異なるメロディーがオルガンで奏でられ、左のチャンネルから絶妙の音量コントロールで忍び寄ってくる。ゴーゴーダンサーの代わりに、グラススカートを履いた娘たちが舞い踊る様が想像できるのだ。何が騎士道だ、全編こんな感じで誘惑する音世界。「ダメーよーダメダメ」でおなじみ「年上の女」も、タンゴ風に豹変。南国情緒の中でも意外に違和感を感じさせない。ここまでウェット色を逆方向に引っ張った「夕月」も珍しい。B面に行くと、何事かと思わせるヘヴィなイントロから始まる「あなたのブルース」が控える。あの藤本ワールドの粘着力を多少浄化しながら、トロピカル世界へと再生。「う・た・う・わ~」のところがスムーズに演奏されているのが重量度めちゃマイナスとはいえ、なかなかの名演だ。ハワイアンの無邪気さを求める人にはおすすめできないけど、これもまたバッキーの真髄。