黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

鈴木邦彦さんの誕生日は3月1日

東芝 TP-7598 

虹をわたって

発売: 1972年9月

ジャケット

A1 虹をわたって (天地真理) 🅺

A2 夜汽車 (欧陽菲菲) 🅽

A3 京のにわか雨 (小柳ルミ子) 🅿︎

A4 初恋のメロディー (小林麻美) 🅲

A5 風の日のバラード (渚ゆう子) 🅷

A6 心の痛み (朱里エイコ) 🅴

A7 旅の宿 (吉田拓郎) 🆀

B1 哀愁のページ (南沙織) 🅻

B2 芽ばえ (麻丘めぐみ) 🅸

B3 まるで飛べない小鳥のように (いしだあゆみ) 🅴

B4 陽のあたる場所 (奥村チヨ) 🅲

B5 どうにもとまらない (山本リンダ) 🅴

B6 ベイビー (平田隆夫とセルスターズ) 🅷

B7 陽はまた昇る (伊東ゆかり) 🅶

 

演奏: ゴールデン・サウンズ

編曲: 荒木圭男

定価: 1,500円

 

昨日取り上げたヤバすぎるコロムビア盤『’72ヒット曲要覧』と実に6曲が重なっている、これも72年ヒット歌謡の層の分厚さを証明する1枚だけど、比較するとおとなしすぎるのはしょうがないし、ゴールデン・サウンズのブランドイメージから見ても清純すぎるという感があるのだけど、雰囲気ものとしてはなかなか上出来。やっぱり曲がいいから安心なんだろうし、筒美京平作品が半数を占めるので、歌無歌謡入門編としてもいける。オーケストレーションの色合いも単調に終わってなくて、時間をかけてじわじわくる、そんな感じだ。

「虹をわたって」、イントロのドラムはどのヴァージョンもそんなに大差ないのだけど、それに続くメインのイントロはこの盤だと一瞬ずっこけそう。昨日のコロムビア盤や、ワーナー・ビートニックス盤、まさかのクラウン盤のアタックの強さに慣れてしまうと余計そう感じるけれど、分厚く敷き詰められたストリングスは雨あがりの晴れ間のようだ。「夜汽車」はさすが本家だけあって、軽快に駆け抜けている。極端にLFO変化をつけたワウギターが癖になりそう。続く「京のにわか雨」では、「もうこの曲100回はやってますよー」なんて言いながら余裕綽綽で京琴を撫でる山内さんの姿が想像できるが、その隙間にオーボエファゴットを入れているところが新鮮。「初恋のメロディー」も御本家らしくラブリーでいいのだけど、こればかりはどうしてもトリオの羽鳥幸次盤の圧勝だ。「哀愁のページ」「芽ばえ」は比較的成功している方だが、もう一押しあればよかったなと。極端にこけてないのは救いだけれど。終盤3曲も、もっとパンチが効いた他社のヴァージョンが恋しくなるけれど、目一杯盛り上げてくれる。

ここでは「心の痛み」1曲しか取り上げられていず、こんな形でクローズアップしなきゃいけないのが悲しい鈴木邦彦先生だけど、手持ちの歌無盤に100曲以上揃っていないのが不思議な位、重要なヒットメイカーである(本来の誕生日に取り上げたクラウン盤にも、「夏の誘惑」しか入ってないのが惜しかった)。特に71~72年は「隠れ名曲」の類に入る曲にいい曲が多すぎ、その辺は歌無盤で聴きたいというより、本来の姿を再評価すべきという思いが強いのだ。リストアップするとキリがないのでしませんけれど…