東芝 TP-7164
フォーク・ベスト・ヒット
発売: 1967年
A1 想い出の渚 (ザ・ワイルド・ワンズ) 🅶
A2 旅人よ (加山雄三) 🅱
A3 この手のひらに愛を (ザ・サベージ) 🅲
A4 いつまでもいつまでも (ザ・サベージ) 🅵
A5 バラが咲いた (マイク真木) 🅴
A6 バラのためいき (ジョニー・ティロットソン)
B2 青い瞳 (ジャッキー吉川とブルー・コメッツ) 🅱
B3 夕陽が沈む (フォア・ダイムズ)
B4 心の海 (加山雄三)
B5 赤いつるバラ (梓みちよ)
B6 若者たち (ザ・ブロードサイド・フォー) 🅺
演奏: ザ・シングアウターズ
編曲: 川口真
定価: 1,500円
楽しかったアンコール月間も、あっという間…次なる復活に向けてしばし冬眠に入りますが(ええ、命果てるまで永久封印はありません!)、それまでささやかに、フォーク・ムードで乾杯といきましょう。「音楽?それはもちろんエレキ!」って、言っちゃった後ではあるけどまだまだ先のお話!
まだ歌無歌謡の黄金律が確立される前、ここまで育まれた「軽音楽」の方法論でフォーク、和製ポップスを料理してみせた貴重なアルバム。当然、GSという現象勃発まであと一歩ではあったが、結果的にGSに属することになる作品もいくつか取り上げられ、日本ポップスの曙といった作品集に仕上げられている。解説を書いているのが桜井ユタカ氏というのが意外だが(やはり自分内ではソウル専の人という印象…「レコード・マンスリー」のシングル盤評でコンスタントにリンゴ・スターをディスってた人というおまけの印象もあり、案の定このライナーにはビートルズのビの字もない)、当時の和製ポップスを取り巻く事情が的確に説明されており、ブルコメやスパイダース、エミー・ジャクソンは「アメリカン・ポピュラー・ソングの系統」だったとのこと。やがてカップスやモップスが出てきて、この図式が崩壊するわけだが(汗)、一方にワイルド・ワンズ、サベージ等のフォーク・ロックの系統があったとなっている。こちらはフォークルの登場で図式が崩れるまで、約1年を要したわけだ。
それにしてもGSの喧騒がまだまだ遠い未来のような、長閑な音に溢れたアルバム。そこまでギターの音が強調されているわけではなく、「想い出の渚」を聴くと、静かに刻まれるギターとウッドベースに、鍵ハモ、ヴァイブ、フルート、オルガン、鉄琴といった親しみやすい楽器が絡んでいく。控えめに鳴っている割にブレスが顕なフルートに、快活なお嬢さんの姿が見え隠れ。「旅人よ」は主旋律がクラリネット、オーボエで奏でられ、高貴なイメージ。それらに鍵ハモやオルガンで重厚にハモリが加えられ、得体の知れない響きを醸し出す。素朴ながらなかなか斬新なアレンジ。ストリングスやけたたましい楽器を使用するのは避けて、あなたにも演奏に加われますよと優しく諭す感じだ。それこそが、音楽を楽しむ基本。喫茶店に集まってレコードを聴きながらおしゃべりを楽しんだら、楽器を持って広い草原にひた走り。そんな青春が欲しかった。切ない。さすがに「青い瞳」「夕陽が沈む」には派手にドラムを入れるのは避けられなかったが、素朴な音の組み立てと妙なコントラストを描いていて面白い。やはりこの辺になると、ギターも相当強い演奏をしているし、バスクラがファズベース的な響きをもたらしているのも異色。「赤いつるバラ」にはリヴァーブ成分の強い声を入れて、まるでメロトロン的な効果をあげている。やはり大団円は「若者たち」。この曲がラストに配されたアルバムはこれで4枚目だ(12枚中)。意外に少ないけど、当ブログ内では単独トップではないか。この世界が、2年後には『フォーク・ルネッサンス』(昨年5月27日)へと転生するのだから恐ろしい。
というわけで、次なる浮上はいつになるかまだ読めないですが、一応年末にはそれらしい企画を携えて復活を予定していますのでお楽しみに…