黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

今日は佐々木勉さんの誕生日なので

CBSソニー 15AH-177

なつかしのカレッジ・ポップス・ベスト20

発売: 1977年

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ジャケット

A1 君といつまでも (加山雄三) 🅴

A2 海は恋してる (ザ・リガニーズ) 🅳

A3 小さなスナック (パープル・シャドウズ)☆ 🅱

A4 空に星があるように (荒木一郎) 🅲

A5 バラ色の雲 (ヴィレッジ・シンガーズ)☆ 🅱

A6 星に祈りを (ザ・ブロードサイド・フォー) 🅳

A7 白いブランコ (ビリー・バンバン) 🅹

A8 風 (はしだのりひことシューベルツ) 🅽

A9 あの素晴しい愛をもう一度 (加藤和彦北山修) 🅳

A10 希望 (岸洋子) 🅵

B1 想い出の渚 (ザ・ワイルド・ワンズ)☆ 🅳

B2 この広い野原いっぱい (森山良子) 🅶

B3 お嫁においで (加山雄三) 🅳

B4 白いサンゴ礁 (ズー・ニー・ヴー)☆ 🅳

B5 遠い世界に (五つの赤い風船) 🅲

B6 いつまでもいつまでも (ザ・サベージ) 🅳

B7 小さな日記 (フォー・セインツ) 🅴

B8 白い色は恋人の色 (ベッツイ&クリス) 🅶

B9 戦争を知らない子供たち (ジローズ) 🅳

B10 若者たち (ザ・ブロードサイド・フォー) 🅷

 

演奏: クリスタル・サウンズ; with 井上宗孝とシャープ・ファイブ(☆)

編曲: 無記名

定価: 1,500円

 

77年版「ゴールデン・スペシャル1500」に含まれた歌謡関連の盤のうち、『懐メロ大全集』を除く3枚をこれで取り上げたことになりますが、本盤の前身は76年版のシリーズで出た唯一の歌謡関連盤『なつかしのG.S.ビッグ・ヒット20』(15AH-75)で、そこではGS関連曲のみを集め、井上宗孝とシャープ・ファイブを起用して新録音を行っているが、ギターの三根信宏氏も既に離脱していた模様で、あくまでも営業バンドのノリでGS時代の空気を蘇らせている。そこから5曲を流用しつつ、クリスタル・サウンズによる新録音を加え、70年代型歌無歌謡の雰囲気で「青春のメロディー」を集大成した便利なアルバム。ノスタルジアと言っても、ほんの7~11年前の曲ではないですか。当時感涙に咽んでたと思しき世代も、今思えば若い若い。とにかく、この種の選曲のアルバムはもう既に何枚も取り上げているけど、時が経つ毎に表現手段も鮮やかなものになり、落ち着きを感じさせる度が高くなる。リアルタイムのカヴァーが伝える空気感とはまた違った、心の揺さぶりを味わえる。

「君といつまでも」はなぜかクラウンの当時最新の歌無盤に取り上げられるなど、随時盛り返しを経験していたスタンダードだが、コーラスによる色付けがいかにも70年代的なアレンジになっている。「小さなスナック」は今井久コンプレックスから脱したような軽いフットワークで、そこにフルートがお嬢さん色を持ち込んでいる。ちょっとしたクリスタル的要素が、単なるGSノスタルジアから脱した軽妙な風味を醸し出しているのがいいのだが、同時録音だったのだろうか?「あの素晴しい愛をもう一度」では、リアルタイムのヴァージョンの多くでは味わえなかった繊細な演奏が、時代は変わったのだなと心に訴えかける。「想い出の渚」も幾分モダン化に走っているが、こちらは上手く噛み合っていない印象。繊細なサウンドを親しみやすく消化した「遠い世界に」がベストトラックかも。「白い色は恋人の色」だけ、どうやらクリスタル創設前のオーセンティックなヴァージョンのような印象があるのだが、実のところどうなのだろう…ステレオのセパレーション的に、他の曲と異質だし。次の戦争を知らない子供たちに、ディスコ・ビートや妙なシンセが取り入れられている分、余計そう感じるのだけど。最後はやはり、定番曲「若者たち」で締め。