黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

今日は「お見合い記念日」だそうですが

ビクター SJV-247

Folk Best 12 魅惑のフォーク・ストリングス

発売: 1967年1月

ジャケット

A1 バラが咲いた (マイク真木)Ⓐ 🅵

A2 空に星があるように (荒木一郎)Ⓑ 🅴

A3 君といつまでも (加山雄三)Ⓒ 🅵

A4 若者たち (ザ・ブロードサイド・フォー)Ⓓ 🅻

A5 バラのため息 (ジョニー・ティロットソン)Ⓓ 🅱

A6 勇気あるもの (吉永小百合・トニーズ)Ⓑ

B1 いつまでもいつまでも (ザ・サベージ)Ⓐ 🅶

B2 夕陽が泣いている (ザ・スパイダース)Ⓓ 🅴

B3 星に祈りを (ザ・ブロードサイド・フォー)Ⓑ 🅵

B4 今夜は踊ろう (荒木一郎)Ⓒ

B5 黄色いレモン (望月浩、他)Ⓓ 🅱

B6 青い瞳 (ジャッキー吉川とブルー・コメッツ)Ⓑ 🅲

 

演奏: ストリングス・エコー

編曲: 小野崎幸輔Ⓐ、近藤進Ⓑ、原田良一Ⓒ、竹村次郎Ⓓ

定価: 1,500円

 

フォーク・ブームが「ガチフォーク・ブーム」に転ずる前に残された貴重なインスト盤の1枚。若者の嗜みとして急速に注目を集めるのに乗じるように、各社こぞってこの種のレコードを地味に送り出したけれど、どの辺りの層が反応したのか気になる。この盤はそれほど「同好会」的カラーが出ていなくて(東芝の「フォーク・ベスト・ヒット」と対照的)、ストリングスの高貴な響きを前面に出しているので、どちらかというと「大学生の語らいのBGM」的ニュアンスが強いかも。それがまたビクターのレーベルカラーらしいというか。この頃の主流歌無歌謡アルバムは、まだまだ「自社ネタ」だけで埋められてましたからね。

66年の曲というのに、もう既にこのブログだけでも12ヴァージョン目の登場となる「若者たち」一つとってみても、高貴なオーケストレーションでええとこのおぼっちゃま学校の卒業式的雰囲気を漂わせているし、エンディングのトランペットがまた「門出」に相応しく、聴く者の背中を押してくれるのである。でも、この曲を最後に持ってこないところが、まだまだコンセプト重視の段階に来ていないという時代性を匂わせ、微妙だなと思ってしまうのだ。それにしても、竹村次郎の編曲術は心憎い。歌入り仕事だけじゃ計り知れないなと思う。ビクターらしい選曲なのは「勇気あるもの」だ。決して地味なヒット曲じゃないけれど、吉田メロディー故他社は恐れ多く手を出しづらかったんじゃないか。エレキをフィーチャーしているところにかえって普遍的な乙女っぽさが出ていて、いいアクセントになっている。「恋の歓び」あたりも攻めに攻めたインストヴァージョンで聴きたかったところ。

GSに微妙に被って来ているところも抜け目なく押さえているし、筒美京平の(隠れ)初作曲作「黄色いレモン」もテイチク盤に続く登場で貴重。ラストは「青い瞳」でロックとストリングスを融合させ、サイケ前夜の熱い息吹を予感させる。この1967年、ビクターは浅川マキのプレデビュー曲をこっそり送り出し、フォークルを獲り逃した悔しさを高石友也にぶつけることになるのだ…