黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

今日は12弦ギターの日…なわけない(汗

TAM  AX-4038

石川鷹彦による想い出のクリーン・フォーク

発売: 1975年

ジャケット

A1 星に祈りを (ザ・ブロードサイド・フォー) 🅶

A2 バラが咲いた (マイク真木) 🅶

A3 竹田の子守唄 (赤い鳥) 🅲

A4 誰もいない海 (トワ・エ・モワ) 🅻

A5 いつまでもいつまでも (ザ・サベージ) 🅷

A6 白い色は恋人の色 (ベッツイ&クリス) 🅻

A7 今日の日はさようなら (森山良子) 🅴

B1 あなたのすべてを (佐々木勉) 🅳

B2 小さなスナック (パープル・シャドウズ) 🅶

B3 あなたの心に (中山千夏) 🅸

B4 小さな日記 (フォー・セインツ) 🅸

B5 白いブランコ (ビリー・バンバン) 🆃

B6 若者たち (ザ・ブロードサイド・フォー) 🅼

B7 希望 (ザ・シャデラックス) 🅻

 

演奏: 石川鷹彦/ニュー・ミュージック・オーケストラ

編曲: 大柿隆

定価: 1,500円

 

ガチフォークギタリストの代表的存在、石川鷹彦さんは、通常のフォークインスト作品以外にも「教則レコード」の類も多数手掛けられ、『ギターバイブル アリス篇』(C20H-0012)は谷村新司さんの追悼で引っ張り出しておけばよかった…と言えども、黄昏みゅうぢっくの下世話な部分に絡ませたくないという思いもあるんですよね。何せ御本家のレコードも数多くアレンジしているので、ほぼ公認盤に近いような部分もあるし。蛇足ですがApple Musicでふとタンジェリン・ドリームの「歌有り」問題作『サイクロン』を聴いていて、最もコンパクトな1曲「ライジング・ランナー」に既聴感が…そう、「チャンピオン」はこの曲から持ってきた感がありありで(そしてさらに「君は人のために死ねるか」に及ぶと)。石川鷹彦さんは、その辺までにも目配せしていた仕事人だったと唸らされました。

その4年前には、こんな営業感ありありのアルバムにも関わっていたんですから余計解りません。このアルバムの発売は、かのフォーライフ・レコード設立とほぼ同時期でしたが、その時でさえ歌謡の王道側からすると、フォーク/ニューミュージックは「ダーティ」に見えたのでしょう。確かに、静かにうごめいていたものが一気に表舞台に出た1972年以降の作品はここにはないし。まぁ、そんな見下されていたフォーク側にしてみれば、歌謡界なんて今で言うところの「サグ」な世界でしかなかったんでしょうが。布施明vs吉田拓郎の一件とか、思い出しますね。

そんな拓郎を始めとする一派が台頭してくるまでの、キャンパスライフの明朗な部分だけを切り取ったような選曲を「クリーン」と定義して、そこにヴァーサタイルなギターをちりばめての耳当たりの良いアルバムに仕上げたのが本作。営業と割り切って、素直にギタリストに徹する石川氏のプレイは安心して聴けるし、大柿隆氏のアレンジも奇を衒わず、70年代中期のシャープなサウンドで飾り通している。「ギターの秘密」やそれ以前の作品が持っていたオーラが、単に浄化されただけという感じはあるけれど、青春時代を語り合うBGMには立派になり得たはず。ただ、「クリーン・ハーモニー」とわざわざクレジットされているコーラスが聴かれる曲は一曲もなくて、恐らく企画段階ではアレンジに含まれていたが、どうもしっくりこないのでミックスから外して、ただクレジットを消し忘れたとかいう事情はありそう。4日前の加古城美さんのアレの方が、声が入っている分まだましでしたね。

「若者たち」で締めず最後にとっておいた「希望」に、こっそり「夜明けのスキャット」の要素が入ってるのにはニヤリとしましたが。やっぱ「オビュレント・フォーク・にっぽん」の方に軍配をあげたいですね。