黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

積木の部屋で彼ともう一度激しい恋を

東宝 AX-4016

最新歌謡ヒット!!

発売: 1974年7月

ジャケット

A1 恋のアメリカン・フットボール (フィンガー5) 🅴→3/6

A2 透きとおった哀しみ (あべ静江) 🅲→22-4/18

A3 私は泣いています (りりィ) 🅶→3/6

A4 激しい恋 (西城秀樹) 🅴

A5 もう一度 (小坂明子) 🅵→22-4/18

A6 彼と… (三善英史)

A7 積木の部屋 (布施明) 🅵

A8 ポケットいっぱいの秘密 (アグネス・チャン) 🅴→3/6

B1 君は特別 (郷ひろみ) 🅵→22-4/18

B2 ひとり囃子 (小柳ルミ子) 🅴→22-4/18

B3 処女航海 (優雅)

B4 恋と海とTシャツと (天地真理) 🅳→22-4/18

B5 闇夜の国から (井上陽水) 🅲→23-6/16

B6 夏の感情 (南沙織) 🅳

B7 紅い花 (五木ひろし) 🅳

B8 虹の架け橋 (浅田美代子) 🅴

 

演奏: 木村好夫 (ギター)、市原宏祐 (サックス)、岡山和義 (ドラムス)/ミラクル・サウンズ・オーケストラ

編曲: 福井利雄

定価: 1,800円

 

律儀に番号順語りに戻って、今回もありますミラクル・サウンズの「最新歌謡ヒット」、いや今回に限っては「最新歌謡ヒット!!」なのです。約3年間毎月のようにリリースが繰り返されて、まじで尽きない沼ですが、時々マイナーチェンジがあったりして油断できません。もう正直言って狙っているネタはないんですけどね…例外は「きりきり舞い」が収録されている「ゴールデン・ギター・アルバムVol.6」(AX-2026)なんですけど。こないだ外した箱売りの中に見事に入ってたのですよ(涙)。やはり完全ディスコグラフィーは作っておきたいものです。ただ、東宝社内だけで片付く問題じゃないですんで。ご承知の通り、ユピテルとのテイク重複というやつがあるので(汗)。

この盤も、内容的に見ればそれほど新鮮味はなく、6曲は次の月のリリースに使い回されて、昨年4月18日に取り上げているし、3曲は昨年3月6日に登場したユピテルの博光販売盤『ヒット歌謡ベスト16』と同テイク(「ポケットいっぱいの秘密」は両方に収録されている)。「闇夜の国から」も6月16日の『フォーク歌謡大全集』にて登場しているので、初登場は7曲のみ。まぁ、あまり細かいことを気にしてもしょうがないのだけど、全体の印象としてはミラクルサウンズのカラー全開としか言いようがなく、普段の好夫モードにそれほど徹していないギターがさりげなく引っ張っている。それに加えて、自己主張しまくる岡山和義のドラム。ちょっと前の「こころの叫び」のような破滅的プレイこそないものの、ノリノリでドラムブレイクを随所にかます。特に「激しい恋」は熱い。例の妙なサウンドこそ入っていないものの、それに代わる熱量を持ち込んだ跡がある。既に取り上げた曲も含め、過剰なまでの空間歪み系エフェクターの使用が、従来の歌無歌謡のイメージを突破した世界に連れて行ってくれる。限界突破といえば、時代を先取りしすぎた元祖カミングアウトソング「彼と…」が取り上げられているのも新鮮。東宝の盤は、こういう先駆性があったりするから面白いんですよ。「修羅の花」とか。「処女航海」も滅多に取り上げられない曲で貴重ですな。ただ、手元にある盤、ジャケが美麗なのに盤が飛びすぎ。他の盤に曲が入ってる場合、そっちに救われるからいいのですけどね。