黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

歌謡フリー火曜日その45: 夜、オールディーズ愛好者の夜

ハーベスト YC-6015

思い出のポピュラー・ヒット/かわいいベイビー

発売: 1971年2月

ジャケット

A1 ハロー・メリー・ルウ (リッキー・ネルソン)

A2 かわいいベイビー (コニー・フランシス)☆

A3 ドミニク (シンギング・ナン)☆

A4 カレンダー・ガール (ニール・セダカ)☆

A5 クレイジー・ラブ (ポール・アンカ)☆

A6 恋の売り込み (エディ・ホッジス)

B1 悲しき雨音 (ザ・カスケーズ)

B2 スピーディー・ゴンザレス (パット・ブーン)

B3 恋の一番列車 (ニール・セダカ)

B4 アイ・ウィル・フォロー・ヒム (ペギー・マーチ)

B5 悲しきカンガルー (ロルフ・ハリス)☆

B6 大人になりたい (コニー・フランシス)☆

 

演奏: 宮間利之とニューハード

編曲: 高見弘、山木幸三郎(☆)

定価: 1,700円

 

1971年初頭と言えば、ロックンロール・リバイバルにはまだ遠い時期。「ハロー・メリー・ルー」CCRが問題作『マルディ・グラ』で取り上げ、再度脚光を浴びるのはもう少し先の話だし。でもやはり、ほんの10年程度前の曲に郷愁を感じる風潮はわずかにあったに違いない。今から想像できないけれど、ビートルズ以前というだけでとんでもない昔の話だったのだ。自分はこの時期の曲、74年を過ぎてからラジオを聴いて学習したし、有名な(汗)「ビー・マイ・ベイビー」みたいに昔から家にレコードがあったケースにも恵まれたので、どの曲も自然に耳に馴染み、血肉となっている。

このアルバムは、そんな古き良きポップスに焦点を当て、名門ニューハードが70年代型の解釈で臨む意欲作。単にノスタルジアを求めて買った人にもアピールする、根本的な部分での力強さがある。特にグルーヴィなビートを強化したところに、コンテンポラリー感が出ているし。そんな中、気の抜けたコーラスを「可愛いベイビー」に入れてみたり(ミュージシャンクレジットは羽鳥幸次氏以外載せられていないが、約1名女性の声も聴こえる)、「恋の一番列車」でオカリナをフィーチャーしてみたり(間奏のフルートソロの後ろでこっそり悶えてるような響きがいい。ということは、フルート奏者の演奏ではないな)と、妙な余裕も見せているのがやはりプロ集団だなと。「スピーディ・ゴンザレス」も変な声の部分をどうやってるのかと思ったら、手堅くブラスでくだけてみせているし。ここぞとばかりぶっ壊れちゃ意味がない。

まぁとにかく曲が名曲揃いですからね。ちょっと前、若い歌手が「恋の売り込み」をカバーしてるのに出くわして、ときめいて訊いてみたら「椎名林檎経由でカバーした」といっていたが、きっかけなんて何でもありですからね。アイドル歌謡の一つのスタイルを築いた「アイ・ウィル・フォロー・ヒム」にせよ、何でも辿っていくとこの頃のポップスにたどり着くんですよ。