黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

紅白歌無TOP40・第10幕

上位30曲に行きます。実質テイチク対コロムビアの戦い!

 

29位(タイ)

愛して愛して

歌: 伊東ゆかり

作詞/作曲: 平尾昌晃 

編曲: 宮川泰 

69年6月1日発売/オリコン最高位17位

 

↑まさかのオリジナル不在!都はるみの「歌入り歌無歌謡ヴァージョン」(アルバム収録12曲中9曲がこのTOP40ランクイン曲!)があったので貼っておきます。つーかオリジナル越えかも。

 

🅰山下三夫/阿部源三郎、テイチク・ニューサウンズ・オーケストラ (編曲: 山倉たかし) 21/4/2

チージーな色彩を放ちつつ、奥行きのあるサウンドが山倉魔術以外のなんでもない。涼川先生がこの曲を歌う光景を妄想できます!

🅱ゴールデン・ポップス・オーケストラ (編曲: 森岡賢一郎) 21/7/9

森賢らしいポップ度を増した、若干走っているヴァージョン。

🅲いとう敏郎と’68オールスターズ (編曲: 福山峯夫) 21/8/2

ドラムのビート感が他のものと一味違う。やはりありたしんたろうか。地方のダンスホールのような場末感。

🅳コロムビア・オーケストラ (編曲: 河村利夫 or 山路進一) 21/11/7

一瞬「ゆりかごの歌」かと思わせるイントロが、上に貼った都はるみ盤と共通するもので、これはコロムビアのカラーか。山田書院らしい牛歩サウンドで聴かせる伝統的ヴァージョン。

🅴荒尾正伸/オールスターズ・レオン (編曲: 大沢保郎) 21/12/18

唯一本家本元のキング盤だが、その割に比較的軽いノリ。トランペットの演奏にたまらないキュートな表情が現れていて、特に2番以降のひょうきんな響きはこの曲にピッタリだ。

『愛して愛して 華麗なるトランペット・ムード Vol.2』

🅵藤田都志/久保茂、上参郷輝美枝/山内喜美子/杵屋定之丞、杵屋定二/テイチク・レコーディング・オーケストラ (編曲: 山田栄一) 22/1/18

集団で押し寄せる和風サウンドがちょっぴりシャーマニックな色を現出させる。フルートのオブリも魔術的カラーを添えていて、異次元の感触。最後に1台残った琴の響きが侘しい。

🅶木村好夫とザ・ビィアーズ/トミー・モート・ストリングス・オーケストラ (編曲: 小谷充) 22/2/18

地味だと思わせといて実は根底的にグルーヴ感を増している。低音に重きを置いてしばらく聴かせたところで、スリリングなストリングスを降らせてくるところなど実に職人芸。

🅷有馬徹とノーチェ・クバーナ (編曲: 小泉宏) 22/3/26、22/11/27

これもまったりした感じで始まるものの、イントロが終わった途端危ない方向に舵を切る。小粋なジャズファンクとエレガンスの出会い。アルバム『恋の奴隷』のヤバい展開の重要ポイントの一つ。

🅸吉岡錦正、吉岡錦英/テイチク・レコーディング・オーケストラ (編曲: 福島正二) 22/3/28

こちらも大正琴が圧倒的音圧で音の壁にぶら下がる、チージーというより最早「聴くくさや」。落ち着く暇を与えません。

🅹益田のぼるとパーフェクト・サウンド・グループ (編曲: 福山峯夫) 22/6/2

チージーなオルガンに耳を縛られるが、どちらかというと手堅い。整頓された場末色が味わえる。

🅺ユニオン・ニュー・ポップス・オーケストラ (編曲: 池田孝) 22/11/4

大編成のブラスでゴージャスな世界に誘われるが、ピアノのリズムにお洒落さと通俗性の両方を感じる。

🅻テディ池谷クインテット (編曲: テディ池谷) 22/11/26

ゴージャスなラテンサウンドに「そっとおやすみ」の影が少々。相当ダメージを受けた盤のせいで、高音のキレが伝わりにくくなってるのが惜しい。

🅼松浦ヤスノブ、テイチク・ニュー・サウンズ・オーケストラ (編曲: 山倉たかし) 23/11/13

🅰に比べるとマジカルさが半端ない王道の山倉サウンド。こちらの方が若々しさがあるけれど、歌声を妄想する余地は希薄。サックスが完璧に持っていってしまってる。

🅽ヒット・キット・アイランダース (編曲: ?) 23/11/29 

テンポ的には最もまったりしているハワイアン・ヴァージョン。トロピカルな世界に持っていかれてしまう。最後にはバッキーが頑なに避ける「アレ」をやって至高へ。

 

以上、14ヴァージョン(15枚収録)。時アリサ「女のときめき」とか宝みつ子「仙女の夜」とかを散々聴いていたのに、この曲からの影響を全然軽視していた自分を悔みたいです(汗)。🅶を筆頭に強力ヴァージョン揃い。団体としてはテイチクの勝ちです。