黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

紅白歌無TOP40・第15幕

この歌無TOP100にランクインしたジュリーの曲はなんとこれ1曲のみ!シンガーのパワーのでかさを痛感とはこういうことだ。ちなみに次点には「危険なふたり」「時の過ぎゆくままに」「勝手にしやがれ」という3大名曲が揃い踏みしています。

 

25位 (タイ)

胸いっぱいの悲しみ

歌: 沢田研二

作曲: 加瀬邦彦 

作詞: 安井かずみ

編曲: Harry Robinson

73年8月10日発売/オリコン最高位4位

 

🅰竜崎孝路ブリリアント・ポップス77 (編曲: 竜崎孝路) 21/4/1、22/6/3 

軽いイントロからいきなり滑稽な世界へと引き込むモーグサウンド、薄く包み込むメロトロン。トリオ盤で最初に聴いた時は驚愕したが、同じアプローチで臨んだ「ひとりっ子甘えっ子」の衝撃を前にすると完全に霞んでしまった。そして、ビートニックスの最後っ屁だったことが後でわかってさらに吃驚…

🅱栗林稔と彼のグループ (編曲: 小杉仁三) 21/5/2 

重厚なオリンピック・サウンドに肉薄するオーケストレーションの中を、二重録音でゴージャスに泳ぎまくるピアノの調べ。男のロマンを感じさせる。やがてオリンピックのライバル、トライデントから卓を購入することになるクラウンの意地が炸裂。

🅲木村好夫/テイチク・オーケストラ (編曲: 栗田俊夫) 21/6/17、22/2/15

一気に軽さを増すのだけど、これはテイチクのカラーというよりも、後々アポロと音源共有したことが判明したため露呈した外部音源制作の絡みによるものという線が濃厚かも。元々アポロ盤を🅺と設定していましたが、この事実が判明したため、若干ヴァージョンカウントに変動が起こることをご了承下さい。次にヴァージョンが増える際は🅾になります。

🅳ヒット・サウンド・オーケストラ (編曲: 横内章次) 21/7/2

好夫と一味違うギター職人芸。すべてのギターパートを一人で重ね、その他のパートをシンプルに抑えながらも重厚なサウンド作り。これも「オーケストラ」だ。

🅴クリスタル ・サウンズ (編曲: 土持城夫) 21/7/16、21/10/13、21/12/16

クリスタルらしいこじんまり感があるが、同時に重厚さも感じさせる。2番のためにためるギターが異色の感触。

🅵市原明彦/ワーナー・ビートニックス (編曲: 原田良一) 21/7/31 

ハードなロック色を加えているが、同時にビートニックスとしての行き詰まり感も感じさせてやるせなくなるヴァージョン。トランペットの響きもクリスタル盤と大差ない。2番でギターがリードに回った途端、グルーヴ感が薄れるのがどうもね。

🅶原田寛治とオールスターズ (編曲: 川上義彦) 21/10/1

イントロ、御本家ポリドールなのにこけ気味やん…オリンピック・スタジオほど器でかくなかったのか。工夫がないサウンドの中を盛り上げるコンガが、なんとなくツェッペリンの「胸いっぱいの愛を」の中間部を思い起こさせる響き。タイトルが似てる故に意識したのか…と思っていたら、2番で一気に加速。と言っても、ドラムだけが爆裂する例のイメージは希薄。ジュリー様を前に萎縮したのだろうか。

🅷まぶち・ゆうじろう’68オールスターズ (編曲: 福山峯夫) 21/10/10 

もっともっと場末色が加速するまぶちサウンド。全体的にどの音も枯れたニュアンスを出していて、曲本来の躍動感から程遠い。それもまた別世界でいいのだけど。

🅸ブルーナイト・オールスターズ (編曲: 小谷充) 21/12/13

軽さが加速するブルーナイトサウンド。このリードをとる音は、ピアノに過剰なエフェクトをかけた感じだろうか、奏者が音の妙さに戸惑う様子が所々露呈する珍演だ。的確にレベル調整してあげてもよかったのに。

🅹いとう敏郎と’68オールスターズ (編曲: 福山峯夫) 21/12/29 

同じ福山アレンジながらまぶち盤と違う感触が出ている。🅸に負けない過剰なエフェクト処理をギターに加えて、妙なサウンドを演出。コンガも入り、2コーラスから爆走するアレンジは🅶にインスパイヤされたのだろうか、同じ現象は「怨み節」でも見られたが。トライデントさん早く卓下さいと嘆願するクラウンの恋心が露呈したようなサウンド

🅺森ミドリとレモン・ポップス (編曲: あかのたちお) 01/27

これが不思議とオリジナルに最も近いムードを出している。女の子はみんなジュリー大好きという率直な感情がダイナミックなプレイに現れ、サウンド全体もなかなかロックしている。レズリーをブンブン回し、ビクトロンとは思えない響き。

🅻ゴールデン・ポップス (編曲: 穂口雄右) 21/3/29 

穂口さんらしくロック色全開と思いきや、手堅くまとまったアレンジ。例の「オー!ダーリン」色濃いギターを、ギターだけでなくブラスでもやってしまったところがなかなかの鬼ぶりだ。

🅼ツゥイン・ギターズ/ワーナー・ビートニックス (編曲: 原田良一) 22/4/12

軽めなノリにツゥイン・ギターズ色を全開させたイントロで掴みはOK。曲に入ってからもカラフルなサウンド演出で盛り上げまくる。

🅽ジョージ高野、野口武義、村上三雄/ブルーシャドウズ (編曲: 山口順一郎) 22/5/22

これもなかなか分厚いサウンド作りで、左側に入る過剰なディストーションギターが他にはない手触り。2番ではもう少しおとなしめのディストーションがリードをとり、過激な絡みを見せる。ピーター・ギブスがマキシムにもたらしたもののでかさを思い知る。

『最新ヒット歌謡20』

以上、14ヴァージョン (18枚収録)。優勝はやっぱり🅺に。