黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

紅白歌無TOP40・第6幕

純潔さを様々な形で変容しているヴァージョンの戦い!

 

31位 (タイ)

純潔

歌: 南沙織

作曲/編曲: 筒美京平

作詞: 有馬三恵子

72年5月21日発売/オリコン最高位3位

🅰山下洋治とハワイアン・オールスターズ (編曲: 山下洋治) 21/4/17

ちょっとテンポを落としてハワイアンサウンド。鋭角的なスチールの音が乙女心をずっしり。ウクレレもグルーヴィに刻まれる。

🅱ゴールデン・サウンズ (編曲: 荒木圭男) 21/4/19

ゴールデン・サウンズらしく無難なのだけど、思わず踊り出したくなる。

🅲ツゥイン・ギターズ/ワーナー・ビートニックス (編曲: 原田良一) 21/4/25

ツゥイン・ギターズらしさが全開。これもダンサブルなのだけど、所々に重いディストーションたっぷりの音が潜んでいてちょっぴり邪心。

🅳栗林稔/ワーナー・ビートニックス (編曲: 竜崎孝路) 21/4/30

かなりテンポアップ。ドゥ・イット・アゲイン系のノリで一気に駆け抜ける。

🅴ミラクル・サウンズ・オーケストラ (編曲: ?) 21/5/8

まだ福井利雄クレジットが出る前のミラクサウンド。顔が見えない無難なサウンドだけど、乗れるのは乗れる。

🅵佐野正彦/エマノンストリングス楽団 (編曲: ピーター・ギブス) 21/6/12

ピーター・ギブスらしくちょっと手触りが違う。リズムセクションの響きがかなり尖っているけど、歌の部分に入るとドラムが相当引っ込む。2番のフルートが純情な響き。 

🅶山内喜美子とオーケストラ・プラッツ (編曲: 山路進一) 21/7/23

サイケで実験的な一人琴アンサンブル。さりげない味付けが他と一線を隠していて、かつ純情たっぷり。おしろいの香りが漂ってくる。

🅷奥田宗宏とブルースカイ・ダンス・オーケストラ (編曲: 岩井直溥) 21/9/11

「今宵踊らん」モードに則ってロック色を排除しているのに、全然違和感がない。根本的なグルーヴがどのヴァージョンをも貫通しているな。2番に行くあたりでなかなかヤバい展開をしている。

🅸かなり良悟/ダイアモンズ (編曲: 荒木圭男) 21/12/15

ギターが全面に出ている分、ゴールデン・サウンズに比べると守りに入っている感じ。

🅹大野雄三/ワーナー・ビートニックス (編曲: 小谷充) 22/3/19

ハーモニカが純情たっぷり。バス・ハーモニカもふんだんに入っていて萌えるし、さりげなく隠れるファズ・サウンドも効果的。「恋は大事ね~」の直後のコードに危険さを感じる。最後の方もヤバい展開だ。

🅺市原明彦/ワーナー・ビートニックス (編曲: 原田良一) 22/3/31

ワーナーが4ヴァージョンあるけど(口笛とサックスも入れると6種類!)、やはりこれが一番過激な展開。その分純情度が弱いので説得力が薄れている感じ。

🅻原田寛治とオールスターズ (編曲: 川上義彦) 22/4/10

例によってドラム以外自然に聴こえなくなるヴァージョン。それ故にダンサブルな感じが希薄になっている。

🅼コロムビア・ニュー・ビート (編曲: 荒川康男) 22/5/1  

最も過激なヴァージョンはこれ!ゴリゴリしたベースが先導する戦慄のアフロビート。ホーン・セクションもテープフランジで重厚に強化。隙のないアレンジで凝固しながら、かつダンサブル。市原盤や寛治盤さえをも、グルーヴの強さで圧倒している。

『'72ヒット曲要覧』

🅽いとう敏郎と’68オールスターズ (編曲: 福山峯夫) 22/11/5

最も場末色濃いサウンドでありつつ、グルーヴも保持されている。これは曲の強さ故でしょう…2番で転調してさらに危ない展開に及ぶ。

 

以上、14ヴァージョン (14枚収録)。🅼が最強なのは言うまでもないけど、レベルの高いバトルでした…シンシアの最初の4曲の段階でクリスタル・サウンズが発足していなかったのは惜しい。こうして考えると、クリスタルとはソニーのアイドル強化路線に則ったプロジェクトだったなって思います。