黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

紅白歌無TOP40・第17幕

ここから15ヴァージョンの戦いに突入。この人の強さが実感できるエリアにやってきました…

 

21位(タイ)

雨のエア・ポート

歌: 欧陽菲菲

作曲/編曲: 筒美京平

作詞: 橋本淳

71年12月20日発売/オリコン最高位4位

 

🅰MCAサウンド・オーケストラ (編曲: 土持城夫) 21/4/10

オリジナル・ヴァージョンとさほど変わらない重厚なサウンド作り。ジャケットに卓を持ってきた自信をこの1曲だけでも味わえるけど、全体的には地味な方。

🅱市原明彦/ワーナー・ビートニックス (編曲: 穂口雄右) 21/5/28

めちゃアタックをかましてくるドラム炸裂ヴァージョン。Bメロ後半から暴走度が急速に高まりスリリング。穂口さんにはこのくらいやってもらわないとね。

🅲チコ菊池とイージー・ライダーズ (編曲: 舩木謙一) 21/6/13

最早単独アルバムがメガレア盤と化しているチコ菊池の味を知れる、通称「雨」アルバムに抜粋されたヴァージョン。ベースも爆走していて恐るべきハードグルーヴが展開される。しかし、同じアレンジャーが次のヴァージョンで何をしたかというと…

🅳山内喜美子/ビクター・オーケストラ (編曲: 舩木謙一) 21/6/16

鼓が打ち鳴らされ一気にジャパネスクグルーヴに引き込まれる。『琴のささやき』のおしとやかな側面をわかりやすく体感できるが、ここまで執拗に鼓を鳴らさなくとも(それこそ筒美京平リスペクトなのか?…爆)とも思う。それにしても最後の1音、「逆サザエさん現象」が起こっているのが謎すぎる…

🅴ゴールデン・サウンズ (編曲: 荒木圭男) 21/9/10

これも自社らしく限りなく原曲サウンドに近づけている。オリジナルのスタジオセッティングを意識できたのは利点だったかも。

🅵前川元/堀口博雄とエマンストリングス (編曲: 竜崎孝路) 21/11/22

若干簡素化しているがオリジナルに近いノリ。地味に走っているドラムが聴きもので、サックスも純情が現われた響き。オリジナル通り二重録音の利点を生かした一人アンサンブルになっている。1ヶ所ミスしてるのを聴き逃さなかったぞ…

🅶小泉幸雄とクインテット (編曲: 小泉幸雄) 22/1/21

ちょっとテンポアップしているが、疾走感を増した感じがしない。チージーなオルガンとそれほどチージーでもないオルガンをうまく絡ませ、一人デュエットの部分にもそれを活用。

🅷マーキュリー・スタジオ・オーケストラ (編曲: 無記名) 22/1/25

このマーキュリー盤での筒美曲の解釈はトホホとしか言えない…がんばって走ろうとしているのに、どのパートも微妙にこけそうなニュアンスを露呈しているんだよね。ちゃんと噛み合わせるための時間的余裕がないまま、本番に至っちゃったのでしょうか。

『最新ヒット歌謡曲 京都から博多まで・涙』

🅸いとう敏郎と’68オールスターズ (編曲: 福山峯夫) 22/3/5

クラウン盤はイントロのフレーズの譜割が微妙どころか大胆に違っているのが共通していて、そこだけでもこけそうになる。このヴァージョンはかなりテンポが落ちていて場末色濃厚。他の曲だとかえって風情に聴こえるんだけどね。一人デュエットの部分も一気に弾ききっていて歯切れが良くない。

🅹ブルーナイト・オールスターズ (編曲: 福井利雄) 22/3/14

ものすごく疾走感を増しているのに、イントロのフレーズを奏でるトランペットが歯切れが悪くて(ちょっと郷ひろみの「GOLDFINGER ’99」を予感させる感じがあるが…)、そのまま1コーラス吹き切ってしまうので煮え切らない感がある。一人デュエット部分も一息で吹いているし。逆に、チェンバロの使用に清涼感がある。

🅺北村英治/ビクター・オーケストラ (編曲: 近藤進) 22/4/22

正統派のノリに意外に馴染むガチなクラリネット。アルバム『惚れた/ちいさな恋」の中では地味な部分だけれど、これは新鮮だな。一人デュエット部分を一息で吹いているのにも、不思議と違和感がない。

🅻山内喜美子 (編曲: ?) 22/4/23

顔の見えないオーケストラながら、意外に迫力を出している演奏だが(特にバスドラの響きがすごい)、それにも増して山内さんの気合が入りすぎている。左右のチャンネルに分散してうまくパートを分け合っており、その調和がいい効果をもたらす。『琴のささやき』ヴァージョンに勝ったな。

🅼コロムビア・ニュー・ビート (編曲: 河村利夫 or 土持城夫) 22/5/1

これはスタンダードなアレンジなので荒川康男仕事ではない(汗)。🅰に共通する部分が多いので土持アレンジでしょう。ちょっと琴っぽいギターが他では聴けない響き。

🅽ありたしんたろうとニュービート (編曲: 福山峯夫) 22/11/25

イントロが完全にドラムのみ…と思ったら他のパーカッションも大胆に絡ませ、賑やかなサウンド作り。でも譜割がいとう盤と同じでちょっと興醒め。曲の魅力もしっかり伝えてくれるところは、他の誰かさんと違う…というか聴いてないじゃないですかP社盤を!(汗)

🅾ツゥイン・ギターズ/ワーナー・ビートニックス (編曲: 原田良一) 23/6/23

クラウン盤で譜割を変えられたメインのイントロを完全に端折っているのは、手抜きというよりコンパクト化の賜物。ツゥイン・ギターズらしさ満開で随所に工夫が伺える。

 

以上、15ヴァージョン(15枚収録)。特に傑出したヴァージョンはなし、ということで…