黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

紅白歌無TOP40・第20幕

自分の運命を決定付けた一曲。堂々の20位。いや低過ぎか?

 

20位

ブルー・ライト・ヨコハマ

歌: いしだあゆみ

作曲/編曲: 筒美京平

作詞: 橋本淳

68年12月25日発売/オリコン最高位1位 (10週)

 

🅰ユニオン・シンギング・オーケストラ (編曲: 中山順一郎、河屋薫) 21/4/16

爆走気味と言っていいくらいテンポアップ。真夜中の湘南を駆け抜けるイメージ。エンジン吹かすような音のホーンが実に効果的だ。こういうアレンジも実にアートだなと感じさせる。

🅱いとう敏郎と’68オールスターズ (編曲: 福山峯夫) 21/5/3

イントロの上ずり気味のフレージングにトホホ、Bメロでオクターブ落ちてそのまま戻らないところに投げやりさを感じる、と思ったら間奏明けで戻ったりして優柔不断。焦点を欠くからこそ安心感もあって、王道の歌無歌謡的解釈。

🅲伊部晴美/ポリドール・オーケストラ (編曲: 伊部晴美) 21/7/8

オリジナルに感触が近い音に安定のギター・プレイで聴かせる。特に2回目のBメロの力の注ぎ具合が聴きもの。所々に原田寛治印全開のドラムフィルも入りニヤリとさせる。間奏は間奏を弾いて欲しかった…

🅳テディー坂口とコロムビア・オーケストラ (編曲: 河村利夫 or 甲斐靖文) 21/9/23

牛歩気味が特徴の山田書院でもここまではしないだろうというエスカレート振り。演奏時間も3分48秒とまじで長くなっている。このレイジーさは戸塚あたりの雰囲気があるか?

🅴横内章次/ブルー・ドリーマース (編曲: 横内章次) 22/1/7

軽量化を図っているがちょっとファンシーな色も窺える。乙女ドライヴァーが孤独に飛ばしているイメージが、特に鍵ハモの軽妙な音に現れている。

🅵木村好夫とザ・ビアーズ (編曲: 木村好夫) 22/2/10

好夫ギターのブルージーな独白で始まり、いきなり発火。シンプルなサウンド作りながら雰囲気は関内あたりのクラブっぽい。鄙びた場末臭さがないけど、漂ってくるのは日本の夜の香りだ。

🅶カンノ・トオル/テイチク・レコーディング・オーケストラ (編曲: 福島正二) 22/3/26、23/6/10

なぜか名ギタリスト達が切り札を提示しまくるバトルの形相を見せ始めてますが、この人も負けちゃいません。小技を効かせながらポップに紡ぐ。チージーなオルガンは律儀に間奏を弾いているし、なかなかの健闘。

🅷ジョージ・ヤング (編曲: ?) 22/4/3

サックスをフィーチャーしながらも軽妙に飛ばす。アレンジャーのクレジットがないが、これは筒美テイストが濃厚な音作り。

🅸トミー・モート・ストリングス・オーケストラとザ・ビィアーズ (編曲: 小谷充) 22/4/20

大胆に解体再構築したイントロからムーディに導かれる。好夫ギターも控えめに顔を見せながら、次第に本性を現してくる。最後まで油断できないヴァージョン。

🅹松本英彦と彼のグループ・ウィズ・ストリングス (編曲: ?) 22/5/18

恐らく元テープの段階で録音状態がよくなかったのではないかと思われる、ダイエー・マイパックによりサルベージされたマイナー録音。かなりガチなプレイが展開されている故に、どこかもったいない。

🅺村岡実とニュー・ヒット・サウンズ (編曲: 池田孝) 22/5/24

軽いバッキングの中を大胆に泳ぎ始める尺八の群。絶妙な分身術で様々なカラーを描いてくれる。ここまでエモい音でありったけの感情をこの曲に注いでくれるなんて。尺八の隠れていた乙女心を見せられる思い。でも、こんな演奏そう簡単にできるもんじゃありませんよ。なお、全然聞こえてこないけどベースは寺川正興(!)。

『尺八 ブルー・ライト・ヨコハマ』

🅻沢井忠夫 (編曲: ?) 22/5/30

尺八に負けじと乙女心を見せつけるお琴。と言えども、沢井氏のプレイは山内さんの純情溢れる音と一味違い、絹のように滑らかでリリカル。この曲の言葉の要素を見事に音に変えてくれるようだ。そして、サイケイメージも若干あり。ノークレジットだがこれも池田氏仕事かも。

🅼バッキー白片とアロハ・ハワイアンズ (編曲: バッキー白片) 22/11/14

バッキーのトレードマークというべきイントロエンディング完全書き換えにより、横浜のイメージさえ希薄になってしまう南国仕様、というか常磐ハワイアンセンターの香りが漂ってくるヴァージョン(汗)。チージーなオルガンがそうさせるのか…

🅽レオン・ポップス (編曲: 石川皓也) 22/11/21

特定の楽器に焦点を置いたアレンジでない分、統一のとれていない部分も所々にあるが、全体的には乗らせることを前提にしたヴァージョン。エレガントなストリングスに持っていかれるが、ドラムの堅実なプレイが全体から見ると浮き気味。

🅾筒美京平とオーケストラ (編曲: 筒美京平) 23/6/29

最後、最も正しい解釈は作者本人により下されるという証明。オリジナルのオケかと錯覚させる程、音場が再現されているが(何せ発売レーベル部署まで一緒だし)、この調子で間奏が始まった途端驚愕の境地へ。「間奏メロ」を弾いてないところに、いしだあゆみへのリスペクトも少々。やはり、筒美京平は絶妙の仕掛け人である。

 

以上、15ヴァージョン (16枚収録)。🅾を優勝にしたい気持ちはさまさまですが、やはり🅺ですよ。生温い解釈がないという点は名曲の証。