黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

紅白歌無TOP40・第27幕

筒美京平の部、トップは意外にもこの曲でした…「また逢う日まで」や「わたしの彼は左きき」が圏外なのも意外でしたが…

 

13位

夜汽車

歌: 欧陽菲菲

作曲/編曲: 筒美京平

作詞: 橋本淳

72年8月5日発売/オリコン最高位5位

 

🅰ツゥイン・ギターズ/ワーナー・ビートニックス (編曲: 原田良一) 21/4/25、21/12/10

ワイルドなイントロからツゥイン・ギターズ色全開のサウンドに引き込まれる。この位の適度な演出がちょうどいい。Bメロの組み立てに緊張感も。

🅱市原明彦、栗林稔/ワーナー・ビートニックス (編曲: 原田良一) 21/4/30、21/7/1、21/10/18、21/12/4

同じワーナー・ビートニックスながらこちらは相当攻めたサウンド。Bメロのチェイス色濃いブラスも狙ったように効いている。オルガンもドラムも弾けまくっていて熱くなれる。

🅲ヒット・サウンド・オーケストラ (編曲: 馬飼野俊一) 21/6/13、21/8/14

しかしイントロのギターの再現度はこれも高いな。エレガントなストリングスを従えて、行儀良い走りっぷりを見せている。

『ヒット・チャート・ベスト12』

🅳ミラクル・サウンズ・オーケストラ (編曲: 福井利雄) 21/7/1

イントロは簡素化しているが、歌のバックではちゃんとギターがグルーヴの主導権を担っている。ドラムも弾けているけれど、これでも地味な方。ただ、曲が進むにつれてちょっと減速してるような…

🅴秋本薫オールスターズ (編曲: 川上義彦) 21/8/18

テンポは若干早まっているがノリは軽い。あまり自己主張しない寛治ドラムのペースにバンド全体が忠実についていってる感じ。2コーラスの直前、予期せぬところで転調してびっくり。

🅵奥田宗宏とブルースカイ・ダンス・オーケストラ (編曲: 岩井直溥) 21/9/11

「今宵踊らん」らしくタンゴアレンジで料理。このまま「だんご3兄弟」に繋いでも全く違和感なさそう(爆)。

🅶栗林稔と彼のグループ (編曲: 福山峯夫) 21/10/2、22/11/5

ビートを控えめにして、ピアノでお嬢様的タッチを強調しているので、あの調子のギターが完全に浮いて聴こえる。🅱のオルガンと同じ人が弾いているのに、えらい温度差。あと、転調の仕方が🅴と同じでびっくり。あの頃、クラウンとポリドールの間には確実に何ががあったな…(「怨み節」とか「胸いっぱいの悲しみ」にしても)

🅷三笠輝彦/ブリリアント・ポップス77 (編曲: 小谷充) 21/11/25 

ブリリアント・ポップス名義ながら、ビートニックスに匹敵する激しさ。イントロに大胆な処置を加え、一味違うヴァージョン。ビートが控えめで、サックスにより場末ムードを出してはいるが、演奏全体はロック魂を強烈に感じさせる。

🅸はとりこうじとサウンド・エクスプロージョン (編曲: 藤田はじめ) 21/11/29

一味どころか大胆に演出を変えたイントロでダイナミズムを導く。歌い出しのブラスは一歩間違えるとずっこけものだが、そこから「ヴィーナス」風リズムを経由してとんでもない熱い展開に持っていくのがスリリング。鍵盤を滑る指の音もリアルで上等のファンクロックだ。

🅹かなり良悟/ダイアモンズ (編曲: 荒木圭男) 21/12/15

自社らしく忠実にオリジナルを再現した音像。ただ、工夫のなさが面白さを削ぐのはしょうがないんだよね…

🅺小泉幸雄とクインテット (編曲: 小泉幸雄) 22/1/6

テンポを上げているが、素直なコードプレイにワウをかましただけのギターがかえって場末色を醸し出している。そこに乗る例のチージーなオルガン。夜汽車の行く先は、当然鄙びた温泉街だろう。

🅻ブルーナイト・オールスターズ (編曲: 土持城夫) 22/3/14

こちらもオリジナルに忠実なサウンドだが、相当ぶっ飛ばしているベースに耳が行く。変なアレンジをしないと素直についていけるんだな。

🅼稲垣次郎コロムビア・ニュー・ビート (編曲: 荒川康男) 22/5/1  

アフロファンク色は増しているものの、そこまで破壊的なニュアンスがない。この夜汽車が鉄橋を渡ると当然地獄がはじまるのだな。

🅽ゴールデン・サウンズ (編曲: 荒木圭男) 22/5/2

🅹の別ミックス的ニュアンスを漂わせながら、ストリングスできらびやかな世界に誘う。フルートの綺麗な音もこの曲の世界観と異質ながら、非常に魅力的。あと、ワウの高音部を異常に高く設定しているのも地味に面白い。

🅾キャニオン・ポップ・サウンズ (編曲: 小杉仁三) 22/5/19

ちょっと深い霧の中に消えていきそうなタッチが窺えるサウンドで、その割にテンポが相当速い。ドラムが結構慌ててそうだ。

🅿︎松浦ヤスノブ/オーケストラ・プラッツ (編曲: 柳ヶ瀬太郎) 23/11/15

この名義故に相当危険なサウンドを期待したらちょっと肩透かしを喰らう。つまり、普通によくできている。所々テンションが不安定になる展開もあるけれど、これでいいのだ。

 

以上、16ヴァージョン (22枚収録)。決定的に勝ちと言えるヴァージョンは思いつかないな…