黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

紅白歌無TOP40・第23幕

日本音楽史上2番目に売れたシングル盤の威力は無視できない…けど、やり辛いんだよね…(汗

 

17位

女のみち

歌: 宮史郎とぴんからトリオ

作曲: 並木ひろし

作詞: 宮史郎

編曲: 佐伯亮

72年5月10日発売/オリコン最高位1位 (16週)

 

🅰山内喜美子/ブリリアント・ポップス77 (編曲: 原田良一) 21/4/1、21/11/20

いきなりこの強力ヴァージョンが来ると困ってしまうんだよね…あまりにも通俗的すぎる曲故、大胆すぎる実験の場に変えられてしまっている。リズムの簡素化やコードの変更にさえ、実験色が滲み出てとんでもないことになっているのだ。ワーナー・ビートニックスの最後の最後にここまでやってしまったのも凄いが、トリオ盤で顔を隠されると余計困ってしまう。結果的に『魅力のマーチ・小さな恋の物語 歌謡ヒット・ベスト40』を自分にとっての大開眼盤としてしまった3大要因の一つにしてしまったのだ。恐るべし。女のみちはプログレッシヴ歌無歌謡の道なり。

『魅力のマーチ・小さな恋の物語 歌謡ヒット・ベスト40』

🅱村岡実、山内喜美子/ミラクル・サウンズ・オーケストラ (編曲: 福井利雄) 21/5/20

同じく山内さんをフィーチャーしながら、こちらはあくまでも正攻法。深すぎるエコーにより別の色彩感を持つ幻想が溢れ出す。おしとやかに尺八を支える琴にも、Bメロでトリッキーな処理が加えられ、ちょっとだけサイケ感が。フルートがラブリーな響きで余計色彩感を増している。

🅲ジャパン・シンフォニー・オーケストラ (編曲: ?) 21/5/22

この名義のヴァージョンがくると一気に場末感が増すのだけど、南沙織小柳ルミ子の曲じゃない分そんなに違和感がない(爆)。むしろガチなシンフォニーオケを起用したのかとさえ錯覚させる、生真面目な演奏に徹している。

🅳松浦ヤスノブ、木村好夫/コロムビア・オーケストラ (編曲: 佐伯亮) 21/5/29

オリジナルアレンジャーの仕事なのでそこまで大胆にテイストを変えていないが、二人とも何度この曲を録音したのだろうか。予期せぬモダン色を持ち込んでいるサックス。間奏のオルガンの鄙び感に安堵を覚える。KISSアルバム収録だが、原典がはっきりしていない。

🅴木村好夫/ニュー・サン・ポップス・オーケストラ (編曲: T. Ikeda or T. Misaki) 21/7/11

76年になってからの国文社録音なので、余裕綽々の好夫節だ。サウンドが進化しているとかはむしろ感じさせない、曲自体の我が道を行く度の高さを思い知らされる。

🅵TBSニュー・サウンド・オーケストラ (編曲: ?) 21/9/3

🅲と同じようなマイナー録音を借りたものと思われるが、こちらの方がノリが軽い。好夫っぽいが上手く真似てるだけという感が漂うギター。「TBSノンディストーションサウンド」の恩恵を受けたのかどうかが全然読めない…

🅶はらだたけしとそのグループ (編曲: 小町昭) 21/9/12

単独通販ボックスまで出ているこの名義のレコードは意外にも集まってこない。ありたしんたろうと中の人が同じという話もあるが、確かに独自の色が伝わってくる演奏。肝心のドラムは抑え気味だけど、オルガンのコード付けに独特の感覚があり、若干レゲエ色も。解っている人の仕事という印象だ。

🅷吉岡錦正/ブルー・サウンズ・オーケストラ (編曲: 池多孝春) 21/11/10

一旦レゲエ色を感じるヴァージョンを聴くと、その印象が離れなくなるのはこの曲の罪なところ。ユピテルなのでリアルタイム録音ではないが、軽い印象のサウンド大正琴をさりげなく支える。途中、フルートが苦しそうな音を出しているのを聴き逃さなかったぞ…音大一年生のバイトだろうか…(汗

🅸クリスタル・サウンズ (編曲: 伊藤祐春) 21/11/15

これも恐らくリアルタイム録音ではないと思われるが、イントロから大胆にコード変更してユニークな色を出そうとしている。まだカラオケ前提を意識しての演奏ではなさそう。ギターとサックスの役割分担を把握し切れてないアレンジではある。

🅹ツゥイン・ギターズ/ワーナー・ビートニックス (編曲: 原田良一) 21/12/10、21/12/19、22/2/9

🅰の山内ヴァージョンに比べると遥かにまともな解釈になっているが、ツゥイン・ギターズらしさがなく、ビートニックスの末期色を現出させている。こちらの方がトリオ盤で使われていたら、今の自分は果たしてあっただろうか…

🅺小泉幸雄とクインテット (編曲: 小泉幸雄) 22/1/6

複数のオルガンを重ね合わせて、イントロから重量感溢れるサウンド…というのはこの曲にしては異例。チージーなオルガンも場末感というより、どこかの異星から伝わってくる波長のようだ。2番にはカンノ・トオルらしき演奏もこっそり登場。

🅻吉岡錦正 (編曲: ?) 22/1/14

こちらはユニオン末期盤ということでアレンジャー・伴奏者の顔が見えないが、危うくスカの領域に達する寸前までテンポアップしていて異色。しかも音の方も異様に薄いが、そこに必死でついて行く吉岡御大の意地は大したものだ。

🅼秋本薫 オールスターズ (編曲: 川上義彦) 22/2/23

イントロに重量感を与えるドラムはやはり原田寛治ワールドだ。曲に入ると隠れてしまうが。「怨み節」のような大胆なアレンジに走ることもなく慎重にこなされるサウンド

🅽松浦ヤスノブ、山内喜美子/コロムビア・オーケストラ (編曲: 佐伯亮) 22/4/30

🅳をリミックスして🅰の要素を若干加えたという印象が当然浮かび上がるが、独自の個性も放っており、Bメロのオブリガートはなかなか麗しい。山内女史のアドリブだったりして。オリジナル・アレンジャーなりに進化させた跡が窺える。

🅾ミスター・ドラム・アンド・ヒズ・フレンズとオーケストラ (編曲: 穂口雄右) 23/6/30

この名義故にやばいアレンジを期待してしまうが、そこまで劇的にいじっていない。むしろ牛歩に徹する石松氏のドラムが不気味。オルガンによるレゲエ色はやっぱり狙ってたのか。2コーラスに好夫ギターが予期せず登場。

 

以上、15ヴァージョン (18枚収録)。やはり🅰の優勝。これ以降のぴんからの曲の歌無盤も、レゲエ色が予期せず出たものが多く、結論としてぴんからはレゲエだ(爆)。