黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

紅白歌無TOP40・第22幕

アイドルの部ではこの曲が堂々のトップ…でいいのだろうか…(汗)

 

18位 (タイ)

ちいさな恋 

歌: 天地真理

作曲: 浜口庫之助

作詞: 安井かずみ

編曲: 馬飼野俊一

72年2月1日発売/オリコン最高位1位 (4週)

 

🅰市原明彦/ワーナー・ビートニックス (編曲: 穂口雄右) 21/5/28、22/10/18

大胆なドラムから始まるが曲そのものはおとなしい…と思わせといて、やっぱり走る。アウト・キャスト~アダムス人脈の意地が感じられる。

🅱北村英治/ビクター・オーケストラ (編曲: 近藤進) 21/6/13、22/4/22

ガチクラリネット奏者がまさかのこの曲で本領を見せつける…スインギーなハイテンポで1コーラス吹ききったと思ったら、怒涛のアドリブ大会に突入。ピアノとヴァイブも応酬し、完璧なガチジャズへ。僅か3分10秒にここまでの激しい展開を閉じこめるとは天晴。

🅲山内喜美子/ビクター・オーケストラ (編曲: 舩木謙一) 21/6/16

テイチク盤「ひとりじゃないの」のモロアイドル展開が嘘のような、完璧なジャパネスク仕立て。所々入れる和風なオブリガートがキュートだし、Bメロの篠笛やオルガンもお嬢様度が高く、雅ではあるが演歌テイスト皆無な幻惑の世界に連れて行ってくれる。

『惚れた/琴のささやき』北村英治盤のジャケは「訳あり」が大きすぎて自粛します…(汗)

🅳三笠輝彦/ブリリアント・ポップス77 (編曲: 青木望) 21/8/22

イントロの不思議なビート感に導かれてまったりと聴かせる。このサックスのアダルトな感じはちょっといけない部分を音場化したみたい。Bメロのバックでフルートが怯えたようなニュアンスを出している。ビートニックスでは異例の3分半超え。

🅴奥田宗宏とブルースカイ・ダンス・オーケストラ (編曲: 岩井直溥) 21/9/11

チャチャチャで踊らせるブルースカイサウンド。とても純白のドレスなど着れない、淑女のたしなみを滲ませるイメージ。最後の方、倍速になるかと思ったらそのまま終わる。

🅵MCAサウンド・オーケストラ (編曲: ?) 22/1/10

イントロのくすぐり感はこのヴァージョンが最高だろう。フルートの純情な音が全体をひっぱり、エレガントな空気にキュートな音が溶けてゆく。72年までのアイドルの歌無化は、これでよかったのだ…

🅶小泉幸雄とクインテット (編曲: 小泉幸雄) 22/1/21

イントロにせこいくすぐり感が。かなりテンポアップし、案の定チージーなオルガン音でちょっとだけサイケな空気を演出。地味ながらピアノの暴れ方に嫉妬深い乙女の影を見る。

🅷マーキュリー・スタジオ・オーケストラ (編曲: 無記名) 22/1/25

これまたイントロにせこいくすぐり感が。こちらもテンポを上げているが、音の薄さも含めて焦っているという感じしかしない。「青い空」のところのコードがおかしなことになっている…2番だと直っているのだけど。

🅸ブルーナイト・オールスターズ (編曲: 福井利雄) 22/3/14

これもキュートな音の選択で正しい歌無アイドル解釈。絶妙にコードを伸ばすチェレスタや女性コーラスが鮮やかに支えるが、バスドラが地味に過激さを発揮しているのも聴き逃せない。

🅹前田憲男とそのグループ (編曲: 前田憲男) 22/3/20

🅱とは違った意味で過激なガチジャズアレンジ。小粋なパリジェンヌが一人街に佇むイメージ。知らない人が聴くと、天地真理の曲とは思わないだろう。

🅺原田寛治とオールスターズ (編曲: 前田憲男) 22/4/10

まさか🅹と同じ人がアレンジしたとは…普通に演っているがやはりドラムが全体から浮かび上がっている。控えめながら「ダイヤモンド・ヘッド」の影も。ドラムソロはちょっとだけフランジャーを使用。

🅻コロムビア・ニュー・ビート (編曲: 荒川康男) 22/5/1

ベースがブンブン唸っていて、やはり荒川康男アレンジだろう。他の曲ほどのヤバさは感じないのだが、そこは正しい解釈をしたというところ。エレピにちょっとだけアイドルの粉をまぶしている。

🅼こだまたかし/ワーナー・ビートニックス (編曲: 原田良一) 22/11/16

イントロ聴いて「悪魔を憐れむ歌」を思わず歌い出したくなるほどテンポが落ちている。口笛の調子もどこか怯え気味で、アイドルを前にすると本性が出しづらいといったところか?その代わりにフルートがキュートに響いているが。曲の終盤では口笛をレズリー処理するという大胆な方向へ。

🅽ありたしんたろうとニュービート (編曲: 福山峯夫) 22/11/25

「雨」か「雨のバラード」が始まるのかと錯覚させるイントロ。こちらも全体からドラムが浮かび上がっているけれど、アレンジ全体が大胆なのでそこまでの違和感はない。どう先に進むか読めない過激な展開が、歌無歌謡の枠を超えている。福山峯夫という人は一体何人いたのだ?

🅾ツゥイン・ギターズ/ワーナー・ビートニックス (編曲: 原田良一) 23/6/23

🅼と同じトラックを使い、メインメロをギターに差し替えているのだが、やはり🅼が先にあったためだろうか、ツゥイン・ギターズ・マジック感が希薄。その分、過激なドラムが耳に飛び込みやすくなったりしているが。

 

以上、15ヴァージョン (17枚収録)。やはり🅱の凄さに軍配を上げたいが、意外に強力なヴァージョンが揃ってましたね。