黄昏みゅうぢっく〜歌のない歌謡曲に愛をこめて〜

昭和40年代の日本大衆文化の重要構成要素、「歌のない歌謡曲」のレコードについて考察します。

紅白歌無TOP40・第24幕

今年のクリスマスを「くちなしの花」と共に過ごすとは誰が予想したか…?

 

16位

くちなしの花

歌: 渡哲也

作曲: 遠藤実

作詞: 水木かおる

編曲: 斉藤恒夫

73年8月21日発売/オリコン最高位4位

 

🅰稲垣次郎/ゴールデン・ポップス (編曲: 山屋清) 21/4/22 

いきなり炸裂するメロトロン!そして場末色濃いサウンドの中に溶け込んでいくサックスの咽び泣き。まじで異次元としか思えないサウンド。これを最初に聴いてしまうと、以下何が襲ってくるか実に不安になってしまう…それにしても、『’74ヒット曲要覧』に収められているメロトロン曲4曲の初出盤の情報が未だ把握できない… 

🅱ユピテル・グランド・オーケストラ (編曲: ?) 21/4/23

同じようなスナックムード濃厚な演奏ではあるが、メロトロンではなくオルガンを使用。サックスも明朗な音色で咽び泣く。

🅲スターライト・オーケストラ (編曲: ?) 21/4/28、21/7/25、22/10/9

「昭和演歌」はまだいいとして、「なつメロ大行進」に昭和20~30年代の曲に混じって収録されているのが異様だよね…軽めの演奏なのだけど、せこさはそこまででもなく、チェレスタの音色が可憐。

🅳村岡実、山内喜美子/ミラクル・サウンズ・オーケストラ (編曲: 福井利雄) 21/5/20 

イントロのフルートにメロトロンを幻聴…する間もなく、琴が高鳴り、尺八が深い闇に誘うジャパネスクヴァージョン。例によってエコーも深く、ちょっとロック色もあってなかなかアシッドだ。

🅴ホット・エキスプレス (編曲: 斎藤恒夫) 21/8/12

普通にリアルタイムのヒット曲として扱ってるのはかえって珍しいかも、というかセルフリアレンジか。エレピやオルガン、アコーディオンなどをブレンドさせて、結果的にメロトロンを幻聴させる(汗)。

🅵T. Jeorge/ニュー・サン・ポップス・オーケストラ (編曲: T. Hanaoka) 21/8/29

国文社第2期の盤なので「ちょい懐メロ」的なタイミング。それっぽくモダンな色も出ているし、やはりサックスが達者だな。

🅶クラウン・オーケストラ (編曲: 湯野カオル) 21/9/18

クラウンとテイチクは「古巣リベンジ」であるが、特に74年以降の前者に複数ヴァージョンがあるのは異例で、それだけ怨みが深かったのか(汗)。これはリアルタイムヴァージョンではなさそうで、達者なギターは誰のプレイなのか、全く読めない。好夫じゃ絶対なさそう。タメ方がちょい違うんだよね。

🅷ブルーナイト・オールスターズ (編曲: 京健輔) 21/10/28、23/6/5

ミノルフォンも遠藤先生のことを考えると「古巣リベンジ」かも。落ち着いた夜の色が濃いアレンジ。

🅸クリスタル・サウンズ (編曲: 池田正城) 21/11/3、21/11/15、23/6/3

ちょっと洗練色を出して、都会の盛場というイメージ。ヤング層でも近寄れる感じを出したかったのだろうか。

🅹吉岡錦正/ブルー・サウンズ・オーケストラ (編曲: 池多孝春) 21/11/10

🅱に比べると遥かにせこいイメージ。イントロ5小節目から大正琴が入っているが、思い切りメロディが違っていて倒れる…まぁ、意図的に変えた可能性もあるけれど、思い切りのいい演奏だとめちゃ気になるのだ…

🅺いとう敏郎と’68オールスターズ (編曲: 福山峯夫) 21/11/28、22/1/28、22/11/2

いとう敏郎時代の最後っ屁。イントロのエフェクト深いギターが不安感を煽るが、曲に入ると例の調子で、68年から続く黄金律を堪能できる。

🅻Dovecot Sounds (編曲: 柳刀太) 22/1/11

ヨーカドーのカラオケ盤なので、再現度は高い。イントロに入るチージーなシンセ音がさすが78年という感じ。曲に入るとガイドメロがフルートだが、Bメロから似たような音のシンセに入れ替わっていて、その魔法に歌ってる人は気付かないだろう。2番はその逆。不思議なアレンジだ。

🅼奥田宗宏とブルースカイ・ダンス・オーケストラ (編曲: 斎藤恒夫) 22/4/29 

イケイケなルンバアレンジ。イントロを半分にするとかえって踊りづらいかも。やはり、🅴と決定的に顔を変えてきている。

🅽ボビー佐野 (編曲: 池多孝春) 22/5/11

🅹のようなイントロのメロ違いがない…やはりアレンジャーのせいではなかったか。かなり軽いノリで、サックスにも色気が希薄。猫ジャケのアルバムにふさわしいサウンド

『ムード・サックス ヒット歌謡ベスト14 』

🅾フローラル・ポップス’74 (編曲: 伊藤辰雄) 22/11/13

ゴージャスなアレンジで格の違いを見せるシンフォニック・サウンド。リズムの方はかなりライトだが。クラウンがこの曲でここまで多面性を見せつけるとは意外。「昔の名前で出ています」は50回ほどリサイクルしたくせして…

 

以上、15ヴァージョン(22枚収録)。ワーナー・ビートニックスが演るこの曲も妄想してみたいもの、というわけでやっぱ🅰の一人勝ち。メロトロン万歳!